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「BIS国際決済銀行隠された歴史」アダム・レボー

2020/06/09公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 BIS(Bank for International Settlements)国際決済銀行と言えば、各国の中央銀行が出資した中央銀行間の決済を行う組織です。パリ協定では、BISは各種取引実行のエージェント、仲介者に指定されているのです。BISは国際業務を行う銀行の自己資本比率を8%以上と決定したバーゼル銀行監督委員会の上位組織なのです。


 新銀行(BIS)には、各国の中央銀行の保有する金が保管され、各国の中央銀行名義の口座が開かれることになり、世界各国の中央銀行間の取引において、保有する金塊を実際に移動させたり、資金のやり取りと外国為替市場を通じて行ったりする必要がなくなったのです。


 現在のバーゼル銀行監督委員会は、中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループという会議の下部組織に変わり、BISが事務局をしているという。この本では、BISの歴史を振り返り、国家から独立したBISとは何なのか、読み解くものとなっています。


・BISには、バーゼル銀行監督委員会という下部組織がある。ここで、世界各国の民間銀行が国際業務を行うには自己資本率が8%なければならないとする、例の悪名高い「BIS規制」が決定されたのである(p11)


 BISは第一次世界大戦後、ドイツの賠償金支払いのために設立されました。各国の中央銀行が出資し、所在地のスイスから安全と独立が保障されています。その後世界恐慌とナチスの台頭により賠償金の支払いは停止となり、BISは中央銀行間の金や資金の決済業務を行う銀行として残ったのです。


 著者の言いたいことは、BISとは中央銀行総裁が作り上げた世界の銀行を管理・監督する権限を持ち、国家、政治からも独立した秘密クラブのようなものであるということです。


・BISは1930年にバーゼルで創設された。BISは、表向きは、第一次世界大戦後のドイツの賠償金支払いを行うためのヤング案を円滑に運営する目的で立ち上げられた・・・BISは、強力で、独立し、何かと介入したがる政治家たちや詮索好きな記者たちに煩わされない銀行だ(p31)


 著者は、国家から独立して重要な判断をすることができるBISに、警鐘を鳴らしています。


 例えばBISは、ヒトラーの軍事資金を支え、侵略先の資産をドイツの口座に移していました。また1991年にはデフォルトしたアルゼンチンの中央銀行の外貨準備480億ドルがBISにありましたが、投資ファンドの差し押さえを拒否しています。また、死亡したナイジェリア独裁者サニ・アバチャのスイスの資産約5億ドルを、ナイジェリアの口座に移しています。


 BISはこうした歴史を変えるような力を持っているにもかかわらず、単なる官僚である各国の中央銀行総裁がメンバーとなり、国家から独立して判断をしているのです。著者はBISがナチスの資金繰りを支えたことを非難しています。


 なぜならBISは同じように金の力によって世界を支配する国家を選ぶことができるからです。レボーさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・政策協力(もしくは政策協調)・・・世界各国の官僚たちが集まって、政策協力について話し合い、決定する場がBISである(p10)


・ボッド元ハンガリー中央銀行総裁は、・・次のように語っている。「中央銀行の総裁たちの主な話題はワインの味と財務大臣たちの馬鹿さ加減であった。ワインについての知識がなければ会話に入っていけなかった」(p22)


・ドイツ帝国のオーストリア併合に関して、オーストリア中央銀行は解散し、資産と負債をドイツ帝国銀行に移動させることになった」オーストリア中央銀行の資産とは、保有していた金とBISの株式4000株だった。それらの資産のベルリンへの"移動"をBISは承認した(p132)


・ホワイト(米財務次官補)はマッキントリック(BIS総裁)に対してさらに冷淡であった。ホワイトは「アメリカの若者たちがドイツ人たちと血みどろの戦いをしているあいだ、アメリカ人の総裁マッキントリックはドイツ人とビジネスをしていたのだ」と発言した(p239)


▼引用は、この本からです

アダム・レボー、成甲書房


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1部:資本こそすべて
・第1章 バンカーたちの夢の銀行
・第2章 バーゼルに生まれた秘密クラブ
・第3章 各国の国益に翻弄される国際銀行
・第4章 ナチスに利用されるBIS
・第5章 ナチス・ドイツの侵略に加担したBIS
・第6章 ヒトラーのために働くアメリカ人銀行家
・第7章 戦争で儲けるウォール街
・第8章 生き残りを懸けて手を握る
第2部:ドイツ連邦という帝国
・第9章 米国から欧州へ―連帯せよ、さもなくば滅びるのみ
・第10章 何もかも許される
・第11章 ドイツは不死鳥のごとく蘇る
・第12章 机上の殺人者たちの台頭
・第13章 そびえ立つバーゼルの塔
第3部:金融溶解
・第14章 第二の塔
・第15章 全てを見通す目
・第16章 傷ついた要塞



著者経歴

 アダム・レボー(Adam LeBor)・・・イギリス生まれのジャーナリスト。ハンガリーの首都ブタペストを拠点に活動する。フィナンシャル・タイムズ紙、エコノミスト誌、タイム誌、モノクル誌、その他多くの媒体に寄稿。これまでに7冊のノンフィクションの著書を発表。『Hitler's Secret Bankers』(邦訳『ヒトラーの秘密銀行』)はスイスのナチス協力に関する草分け的な書であり、『The Believers:How America Fell for Bernard Madoff's $65 Billion Investment Scam』(邦訳『バーナード・マドフ事件』)では史上最大級の金融詐欺事件の全容を解明するなど、経済マスコミ・金融史学界が尻込みするテーマを果敢に追及している。本書は、主要国の中央銀行のネットワークであるBIS(国際決済銀行)が第2次大戦中も敵味方となく資金決済をしていた事実を暴き、現在も国際金融体制を支配している実態を描きあげている。


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