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「帳簿の世界史」ジェイコブ・ソール

(2020年4月15日)|本のソムリエ
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【私の評価】★★★★☆(84点)


■複式簿記の発明は、13世紀のイタリア
 であったという。1340年には
 イタリアのジェノヴァ共和国の財政は
 複式簿記で記録されていたのです。


 しかし、16世紀に絶対君主制が
 台頭してくると会計への関心が薄れ、
 スイス、オランダ以外は正確な
 会計システムが維持されなかったという。


 君主が会計に興味を持たないため
 欧米では金融危機が何度も起きたのです。
 江戸時代と似ているように感じます。


 16世紀にフランス革命がおきたのは
 破産同然の国家財政を立て直すために
 ルイ16世が財務長官に任命した
 スイスの銀行家・ネッケルが、
 国家財政を公表したことが一因らしい。


・最も早い複式簿記の例は、リニエリ・フィニー兄弟商会の帳簿(1296)か、ファロルフィ商会の帳簿(1299-1300)だとされている(p40)


■興味深いのは、厳密な複式簿記と監査
 による会計システムが、国家・企業の
 繁栄を支えているということでしょう。


 例えば、イタリアのメディチ家は
 正確な会計を基礎とした銀行業で
 巨額の財をなしました。
 メディチ家は、ローマ教皇会計院の
 財務管理者にまでなっています。


 その後、メディチ家が会計文化を
 維持できなくなるのとあわせて、
 メディチ家の没落がはじまるのです。


 正確な会計文化がないところに
 財政的な繁栄はありえない
 ということなのでしょう。


・個人的な栄光を健全な事業運営より優先する王侯貴族は、よき銀行家にはなれないのである。ロレンツォは銀行の資産の大半を失ったが、それでも公金を流用してメディチ家のさまざまな文化的プロジェクトの資金手当てを続けた(p102)


■14世紀にジェノバの国家財政が
 複式簿記だったということに
 衝撃を受けました。


 日本の国家財政は特別会計を含まない
 単式簿記ですので全体を把握しにくいので
 連結したP/L,B/S(バランスシート)を
 広く告知していくべきなのでしょう。


 ソールさん、
 良い本をありがとうございました。


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■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・1427年に定められた法律により、フィレンツェの土地所有者および商人には税務監査を受けるために複式簿記の維持が義務づけられ、監査記録は今日まで保存されている・・賢い商人は必ず帳簿を二冊つけた。自分だけが見る秘密帳簿と、監査用のもっともらしい公式帳簿である(p78)


・スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームは1751年に、政府の債務は「危険」であり「軽率」であると述べ、いずれは国家を破滅させると述べた・・・フランスは到底返済しきれないような債務を背負い込み、財政は赤字続きで、18世紀後半までずっと破産状態だった。そして1789年に革命の嵐に呑み込まれると、古い体制は転覆してしまう(p247)


・アメリカの初期の入植事業が利益目的で組織されていたことを忘れるべきではない。オランダ、フランス、イギリスの東インド会社と同じく、アメリカの入植事業の大半を運営したのは国王から特許状を受けた勅許会社であり、イギリス王室から貿易独占権を与えられていた(p269)


・「権力とは財布を握っていることだ」。アメリカ建国の父たちの一人、ハミルトンはこう喝破した。複式簿記を郵政会計に導入したフランクリン、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソン(p267)


・大恐慌に懲りた議会は1933年にグラス・スティーガル法を可決し、銀行業と証券業の兼業を禁止した。銀行が預金をリスク資産で運用することを防ぐためである(p340)


・社会的地位の高い紳士然とした会計士のイメージも、企業と政府の公平な審判者としての役割も、早くも20世紀後半には壊れ始める・・・独立の立場から監査をすると称しながら、その監査対象企業から巨額のコンサルティング契約を受注していたのだから(p345)


・国際通貨基金(IMF)のティモシー・アーウィンは、政府はバランスシートを公表するとともに50年先までの予算計画も示すべきだと述べたことがある(p361)


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ジェイコブ・ソール、文藝春秋


【私の評価】★★★★☆(84点)


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■目次

序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
第2章 イタリア商人の「富と罰」
第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
第11章 鉄道が生んだ公認会計士
第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている


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