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「世界史を変えた13の病」ジェニファー・ライト

2020/02/19公開 更新
本のソムリエ
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【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

■新型コロナウイルスをどう見るのか
 考えるために手にした一冊です。


 人類が疫病に対抗できるようになったのは
 つい最近のことだとわかりました。
 (昔に生まれなくてよかった!)


 ワクチンの一種である牛痘が1796年
 ペニシリンは1929年。


 結核が抗生物質によって
 死病でなくなったのは
 つい最近のことなのです。


・1600年以前は、どんな病気も区別が難しく、急速に広まるエピデミックはすべて単に疫病と呼ばれた(p20)


■普通のインフルエンザの死亡率が
 0.1%以下ですので、
 新型コロナウイルスの死亡率が
 仮に2%程度だとすれば
 インフルエンザよりは悪い。
 スペインかぜよりは軽い。


 新型コロナウイルスは最悪の疫病
 というほどではありませんので、
 できるだけ感染者を減らすことしか
 対策はないのでしょう。


 新型コロナウイルスの拡大で
 手洗い徹底なのど対策が行われ、
 他の伝染病も予防されるプラスの
 効果があるかもしれません。


・インフルエンザの死亡率は、1917年は赤ん坊や60歳以上の人が最も多かった(感染者の約30から35%)それ以外の年齢層で、当時インフルエンザで死亡する割合は10%を切っていた・・・1918年は、インフルエンザで死亡した患者の35%が20代だった(p208)


■最も恐るべきことは、
 実は新型コロナウイルスではなく
 敵性国家が天然痘やペストなどを
 ばら撒くことではないかと感じました。


 アメリカは天然痘のワクチンを
 備蓄しているという。


 現代の技術であれば
 生物兵器を作ることも、
 防御の準備することは容易です。


 問題はどの程度、準備しておくのか
 どうかということなのでしょう。


 ライトさん、
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・腺(せん)ペスト・・・膿や血液を出す卵大の横痃(おうげん)のほかに、発熱、嘔吐、筋肉痛、譫妄(せんもう)・・14世紀に2000万人から5000万人、ヨーロッパの人口のおよそ30%がこの病気で死亡した(p39)


・14世紀から17世紀にかけて、黒死病(腺ペスト)がヨーロッパの国々に及ぼした影響は、歴史のきわめて恐ろしい章のひとつとして記憶されている。だが、ヨーロッパの文明は持ちこたえた・・・シェイクスピアのきょうだいと息子は腺ペストで死病した。シェイクスピアが生きているあいだ、疫病が原因で劇場は閉鎖された(p77)


・天然痘は天然痘ウイルスによって発症するとわかっている。感染すると(40度まで)発熱し、嘔吐を伴うこともある。その後、急速に発疹が出て、透明の液体か膿が詰まった、でこぼこした膿疱に変化する・・一般的に、天然痘患者の致死率は約30%だった。(p82)


・天然痘・・アメリカ政府は・・全国民を守れるくらいの量のワクチンを備蓄している。ワクチンは病気にさらされてから三日以内に接種すれば有効である。最悪、どこかの極悪人が一般の人々に天然痘ウイルスをばらまいても、被害を防ぐ計画がある(p92)


・今日、ワクチン接種を信用しない声高な少数派が存在する。その多くが、ワクチンを信用しないのは、1998年にアンドリュー・ウェイクフィールドという名の胃腸科専門医が、麻疹(ましん:はしか)と流行性耳下腺炎(じかせんえん:おたふくかぜ)、風疹(MMR)のワクチンの接種と自閉症の発症に関連性があると主張する論文を『ランセット』に発表したからである。ウェイクフィールドは詐欺師だった・・・MMRワクチンのメーカーを訴えようとした弁護士から数十万ドルを受け取っていたことが判明した(p98)


・1917年にはユリウス・ワーグナー=ヤウレックが、梅毒患者にマラリアを接種し、高熱を引き起こしたあとキニーネで治療するという新たな治療法を考案した。この研究によってノーベル賞を受賞したが、約15%の患者が死亡した(p114)


・1851年から1910年のあいだに、イングランドとウェールズで、実に400万人もの人が結核で死亡したと考えられていた・・・地中海の温暖な土地を訪れるのは、それが「結核患者の最後の望み」と言われていたからである(p135)


・結核は現在も存在していて伝染性があり、ワクチンを作るのに16セントくらいしかかからないのにもかかわらず、購入単価は3ドル13セントで、いまもなお周辺諸国に被害を与え続けている。毎年、世界じゅうで何百万人もの人が結核で死亡している・・完全に治療できるのに(p143)


・コレラ・・"米のとぎ汁"と呼ばれる白い剥片状の水様性の下痢を引き起こす・・脳が最後まで働くことが多く、そのため患者は最後まで苦痛を知覚する(p149)


・チフス菌に感染すると、糞便、稀に尿に細菌が含まれる。つまり、調理の前によく手を洗わなければ、細菌が食事に付着する可能性がある・・腸チフスに感染して治療せずにいると、約60%が死亡した。現在は抗生物質によって、死亡リスクがほぼゼロまで減少した(p187)


・1918年に、世界じゅうで5000万人がスペインかぜで死亡したが、その原因も治療法も撲滅法も、再来するかどうかも不明である・・スペインかぜはほぼ確実に、カンザス州ハスケル発祥の、アメリカの疫病である(p205)


・第一次世界大戦中に、4万人のアメリカ兵士がスペインかぜで死亡した。比較のために言うと、ベトナム戦争の戦死者数より7000人少ないだけだ(p216)


・スペインかぜは世界じゅうで2500万人から1億人の命を奪ったと推定されている。約67万5000人のアメリカ人が死亡したと考えられている。4年続いた南北戦争の死者数より多い(p227)


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▼引用は下記の書籍からです。

ジェニファー・ライト、原書房


【私の評価】★★★★☆(86点)


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目次

アントニヌスの疫病
腺ペスト
ダンシングマニア
天然痘
梅毒
結核
コレラ
ハンセン病
腸チフス
スペインかぜ
嗜眠性脳炎
ロボトミー
ポリオ


著者経歴

 ジェニファー・ライト・・・ニューヨーク在住の作家。「ヴォーグ」「ニューヨーカー」等の雑誌への寄稿を経て、2015年に初の著書It Ended Badly:Thirteen of the Worst Breakup in History(『史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語』原書房刊)を出版。女性に焦点をあてたエンターテインメント色の強い歴史書を執筆することを目指している。


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