「日本人に謝りたい―あるユダヤ人の懺悔」モルデカイ・モーゼ
2019/12/31公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(89点)
要約と感想レビュー
ユダヤ人民族解放のための活動
著者はユダヤ人長老とされていますが、翻訳者の久保田政男がゴーストライターではないかと言われている一冊です。内容としては、フランス革命もマルクスによる共産主義も、ユダヤ人民族解放のための活動の結果であったというものです。つまり、ユダヤ人は民主主義を発明してフランスの君主制を打倒し、マルクス主義を発明してロシアのロマノフ王朝を打倒したというのです。ユダヤ人がフランスでもロシアでも迫害されており、マルクスを含め革命にユダヤ人が関わっていたのです。
そして、戦後の日本においてもGHQに共産主義に共感を持つ者が多かったのは事実です。彼らが天皇制・軍国主義を悪とし、軍備を持たないという憲法を作り、地主から農地を収奪し、組合活動を支援したのです。民族迫害のあった欧州から迫害のない日本に輸入された民主主義と共産主義が、天皇制と組み合わされて現代の日本となったとしています。
つまりユダヤ人が、ロシア帝国を転覆させることを目的としてマルクス主義を発明したのと同じ考え方で、国家破壊の最大の障害物となる軍隊や警察力を削ぐために、戦争反対、平和に名を借りて「軍縮」を唱えているわけです。そのため現在でも、共産主義の思想、つまり権力を敵とした階級闘争により国家転覆を目指す人が存在しているわけです。
フランス革命でフランスの君主制を打倒したのが、われわれの最初の大事業であった。つづいて、ヨーロッパの主な君主制を打倒することが至上任務となるのである・・・マルクス主義というものは・・ユダヤ人が自己の民族的開放事業のための道具としてあみだした虚構理論なのである(p25)
日本共産党の目的は日本の天皇制打倒
また、日本共産党は、コミンテルンの日本出張所として誕生したのですが、コミンテルンの目的の一つには日本の天皇制打倒がありました。これは、天皇機関説とも関係しますが、この「機関」という単語は、階級闘争における「支配者」が「被支配者」を「抑圧」「搾取」する「手段」「道具」という意味で専ら使われていたものなのです。つまり、太平洋戦争は日本の支配階級である「天皇制軍国主義者」の起こしたものであり、日本国民は被害者であり、マルクス主義の階級闘争史観と似ているというわけです。
ただ、著者は日本においては天皇と国民に支配・被支配の関係はなく階級闘争という考え自体に無理があり、当時のGHQの共産主義者であるユダヤ人が日本の現実を知らなかった、無知であったということで謝っているわけです。日本の天皇と国民の間には、対立関係などないのですが、ヨーロッパの君主と国民の対立関係と同じだと誤解していたというわけです。
自由、平等を支配・被支配関係のある国家へ持ち込むことは、特に民族的支配・被支配の関係が宿命的な国家においては建設的なものと考えられる・・しかし、このような考えを直接的に日本へ適用したのは全くもって認識不足の一語に尽きるのである・・・事実、戦後の日本は今日みる如く世界でも最も「和」のない国となってしまった(p101)
日本国憲法はユダヤの理想
日本の敗戦後のアメリカの日本統治に、ユダヤ人的な思想が入っているという考え方は面白いと思いました。その理由は、日本国憲法に「基本的人権」という言葉が入っており、これは長年、差別、迫害されてきたユダヤ人の被害者意識から出発した言葉であるということです。また、「教育を受ける権利」も、日本では教育の機会均等が奪われたためしはないので、日本人には当たり前の権利なのですが、ユダヤ人にとっては、教育の機会均等ということは最大の夢の一つであったというのです。
ユダヤ人という民族は、それぞれが自分の意見を持っている議論好きな民族です。ユダヤ人が組織的に革命を推進したというよりも、個々のユダヤ人が迫害から脱出するために活動していたということなのでしょう。もう少し歴史を調べてみたいと思います。モーゼさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・戦争責任はあげて一握りの支配階級たる天皇制軍国主義者にある、大部分の国民はむしろその被害者であるとする論法は、先ず第一に戦争責任者を国外に求めることを忘れさせる効果を持つ。また、これにより旧敵国がいかにも雅量のあるものわかりのいい寛大な存在に映り、以後の占領政策をやりやすくする効果をもつ。しかもこれらよりも大切なことは、支配階級というものは常に悪玉であるとする思潮が生じることである(p87)
・「民主主義」は人為的なものである。それは宿命ともいえる被圧迫民族としての歴史を歩んできたユダヤ民族が自己の解放、もっと正確にいうならば立場の逆転のために当時の未成熟社会の大多数を占める不満分子を自己の至上目的への協力者として翼下に集めるために創作した言葉と理解した方が早い(p103)
・ロシア革命の本質・・・ユダヤ権力がツアー権力にとって代わったもの・・・それはフランス革命に次ぐユダヤ人の反撃プログラムの第二弾だったのだ(p154)
・日本はなんとか戦争を避けようと、全くの善意から必要以上の譲歩をした。ところが相手は、その譲歩を全く単純に弱さの現れとしか取ることができなかった。この理性的なものの差は、数世紀やそこらで埋まるものではないと私は考える(p43)
【私の評価】★★★★☆(89点)
目次
1.戦前の日本に体現されていたユダヤの理想
2.二元論的思考法 典型的なユダヤ的思考パターン
3.日本人の知らない東京裁判の本質
4.戦後病理の背景 日本国憲法はワイマール憲法の丸写し
5.マルクス主義はユダヤ民族解放の虚偽仮説
6.極左的戦後改革を強行したユダヤの秘密
著者経歴
モルデカイ・モーゼ(Mordecai Moses)・・・1907年、ウクライナのオデッサ生まれ。1941年米国へ亡命、ルーズベルトのプレーントラストとして活躍、1943年頃から対日戦後処理の立案にも参画した。戦後十数回来日、現在は日本研究を楽しみに余生を送っているという。
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