「アラスカ垂直と水平の旅―冬季マッキンリー単独登頂とアラスカ1400キロ徒歩縦断の記録」栗秋 正寿
2019/10/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(89点)
■テレビ番組「あいつ今なにしてる?」で
福岡県立修猷館(しゅうゆうかん)高校の
登山部顧問の先生から化け物と言われていた
栗秋 正寿さんに興味をもって手にした一冊。
栗秋 正寿さんは26歳のとき
冬のマッキンリー単独登頂に成功し、
「植村直己の旅を終わらせた男」と
呼ばれているのです。
中央アラスカ3大峰の冬季単独登頂を
最終目標として、現在は
ハンター登頂を目指しているという。
そして「彼は、まだ生きている」のです。
・「君が植村直己さんの旅をおわらせた(You have completed Naomi's journey.)」マッキンリーから下山した私を、麓の町タルキートナで祝福してくださったバーン・テイハスさんからの言葉だ(p249)
■栗秋さんがすごいところは、
ただ山が好きなこと。
自然を感じるのが好きなのです。
だからなぜ山に登るのか、
家庭は?、収入は?、死んだら?
そんなことも織り込んだうえで
山に登るのです。
そして「彼は、まだ生きている」。
「死」と隣合わせの環境の中で
休憩日を取ったり、下山を決断するなど
常に安全側の判断を行い、
彼はまだ生きているのです。
・私は、山旅を中心に生活していく道を選びます・・大反対されるだろうと覚悟はしていた。実際に皆に会ってみると、両親や周囲のほとんどは私の話を冷静に聞いてくれたものの、誰ひとり私の考えに賛成はしてくれなかった。「この親不孝者が!のぼせるのもいい加減にしろ!」と私に怒鳴った母方の祖父の言葉が、家族の気持ちを代弁するものであったろう(p55)
■さらに驚くべきことは、
マッキンリー単独登頂後に
リヤカーを引っ張りながら
アラスカ1400キロを徒歩で
縦断していることでしょう。
その理由はアラスカの自然を
歩きながら満喫したいから。
根っからの大自然と向き合う人
なんだなあ~と思いました。
栗秋さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・マッキンリーの女神に挨拶する。「一年前の約束どおり、あなたの所に戻ってきました。去年と同じように吹雪とブリザードで私を困らせるでしょうが、どうぞお手柔らかにお願いします(p70)
・1990年6月からマッキンリーの標高5710メートル地点に自動気象観測器・・最低外気温度はマイナス59.4度・・データ補正、高度補正をすると、同時期の頂上ではマイナス70度以下と推定される・・最大風速は、三杯型センサーでは63メートル/秒・・プロペラ型センサーでは82.5メートル/秒(p40)
・クレバスを 踏み抜く刹那 母の顔・・ヒドン・クレパスに片足を奪われ、母の笑顔とこの句が脳裏をよぎる(p119)
・汗や水滴が寝袋内にしみ込み、羽毛の一部が砂利のように凍ってしまっている・・この買値三万円程度の寝袋で冬のマッキンリーに入山した人は、おそらく私くらいだろう(p52)
・高山病を予防するには、例の尺取り虫のような荷上げで登りと下りを繰り返し、少しづつ標高を上げて高所に順応することや、常に水分を充分に摂ることが重要になる(p107)
・1997年冬のマッキンリーでは、チーズや魚肉ソーセージ、水分の多いレーズンなどが凍ってしまい、行動食には不適だとわかったので今回は持参していない(p78)
・デナリ国立公園内の登山では、用便についての規則もしっかり定められている。小便は雪面に穴を掘って行い、その後きちんと雪で穴を埋めること。大便はビニール袋に入れて持ち帰るか、深いクレパスにビニール袋ごと投げ入れることなど。もちろん、わたしもこのルールに従っている(p81)
・極寒地では自動式カメラの撮影は難しく、フィルムも切れやすい。気温がマイナス40度以下になると、手動式カメラでもフィルムが切れやすくなり、連続撮影が難しくなる。体温でカメラをあたためながら、一枚一枚撮らなければならない(p105)
・刻一刻と天候は悪化している。進むべきか、それとも戻るべきか・・?このとき、もうひとりの私との葛藤が始まった。「急げ!山頂はも目と鼻の先だ」頂上を目前にして、高揚している私が叫んでいる。「落ち着け!頂上直下の大雪原で霧に巻かれれば、死のビバークに陥るぞ!」天候悪化を懸念している、もうひとりの醒めた私がいた(p121)
・「冬季登山、単独登山はおおいに反対!」の姿勢であるレンジャーたちから、来年の「冬季単独」登山の目標を提案してもらえた・・今回のマッキンリー登山よりも、むしろレンジャーたちから少しでも認められたことを、私は素直に喜んだ(p142)
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【私の評価】★★★★☆(89点)
■目次
垂直の旅―冬季マッキンリー単独登山
水平の旅―アラスカ徒歩縦断
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