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「その後のリストラなう!: 割増退職金危機一髪」瀬尾 健

2019/09/13公開 更新
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その後のリストラなう!: 割増退職金危機一髪 (出版人ライブラリ)


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 45歳で出版社を早期退職し、4400万円を手にした著者は、セミリタイヤ生活に入ったのです。そしてどうなったのか。まず、とにかく暇だという。耐えがたいほど退屈だという。ただ、時間が過ぎていくのです。


 自分が行くところといえば、コンビニや図書館くらいで、平日、暇な友人もおらず、どこにも所属しておらず、人に会うこともなく話すこともない。ただ、茫然としてそこにいるのです。


・自分と向き合う、ということがそもそもしんどいのだ。そして何より、"どこにも属していない"という宙ぶらりん状態が、耐えがたい(p14)


 そしてお金の問題です。5000万円という持ちなれないお金を持った著者は、それを運用しなければと考えました。相談しようと外資系銀行に行くと、ブラジル債の投資信託を薦められ、著者な薦められるままに購入してしまいます。するとブラジル債は、あっけなく下落していくのです。


 次に銀行に行ってみると担当者が変わっていて、言うことも違う。また著者は言われるままに、下落しているブラジル債を売却して、ロシア企業の投資信託と金鉱会社の投資信託を買ってしまうのです。するとロシアの投資信託は、あっけなく下落していくのです。


 すべてを解約したときには、元の投資額5000万円が3000万円にまで目減りしていました。投資とはお金を使ってお金を稼ぐこと。一つの事業、職業といえるわけで簡単に考えるべきものではないようです。


・客観的にいうと、退職金を投資した商品が値下がりしている、利殖にちょっと失敗しかけている、という、事実はタダそれだけなのだが、その失敗の重量感がただならぬ重さなのだ(p110)


 最終的に著者は座禅教室に通うことで、心の平安を取り戻しました。そしてお金は金(金地金)に変え、あまりお金のことを考えないようにして、仕事をすることで退屈を忘れようとしたというのです。お金が現金で手元にあると、どうしても使ったり投資したくなるので、金地金に変えたのです。仕事をしている間は、余計なことを考えないので平静にしていられるのだというのですから不思議です。


 退職後というのは、お金の問題にしても生活にしても一人で自立できないとだめなのだと実感しました。瀬尾さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・失業保険をもらっていた・・・月額20万円というのは絶妙な金額だ・・・微妙、ともいえる・・・一所懸命に就職活動をすると、交通費だけで月額3万円くらい使ってしまう。生活費や求職活動費が足らなくなって、よんどころなくアルバイトなどで臨時に収入を得ると、申告義務が生じる。当然支給額は減らされるだろう。手にする金額は変わらない・・(p23)


・落とし穴が、失業給付にはあった。つまり、「今働かずに20万円貰っているんだから、就職するとしたらそれ以上の給料でないと」と思ってしまうのだ。これが再就職希望者たちの潜在意識を縛りつけてしまう・・ハロワで検索してみるとわかるけど、一番多いのは、基本給20万円未満の求人だ(p24)


・外資系銀行の銀座支店・・・彼はしばしば「富裕層の方々は」と口にした。この言葉は、最初の頃は"お前は私の客だが、けっして富裕層ではない。私の客の末端に加えてやったのだ"という、傲岸なメッセージに聞こえた(p55)


・座禅をしてはっきりわかったのは、「心」は、気の持ちよう一つでいくらでも状態が変わる、という単純な事実だ・・・私は、私自身の「心」の平安を第一にすべきだったのだ・・・まず先に私自身が幸せにならないと(p134)


・若隠居してわかったのは、健康、というか身体と精神の状態は常にアップダウンしてうまく制御できない。すごく良い時があると、必ずその後不調が訪れる、ということだ(p215)


・資産は多すぎても、少なすぎても、ストレスになる。少ないと「他人と比べて自分の人生はこんなに価値が低かったのか」という錯覚に陥ってしまうし、多すぎると「まだ足りない。少しでも減るのが怖い」「みんなが俺の財産を掠め取ろうとしている」なんて妄想を抱いてしまう(p237)


・元気で豊かな高齢者を、街中や観光地で、デモの画面で見ると、イラッとする・・・そしてハッと我に返る。私も、今現役の若者から見れば、彼ら(高齢者)と同じ側にいるんだよナ、と(p247)


その後のリストラなう!: 割増退職金危機一髪 (出版人ライブラリ)
瀬尾 健
出版人
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【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

1 起義の章―カネが減っていくのは恐怖です
2 承順の章―これは再生の途上なのだと思いましょう
3 展転の章―人の死を見て己が生を知りましょう
4 結風の章―やがて人生の目的が見えてきます


著者経歴

 瀬尾健(せお たけし)・・・たぬきち。1965年広島県生まれ。岡山大学文学部哲学科心理学社会心理学教室卒。1989年株式会社光文社入社。書籍編集部、宣伝部、販売部を経験。2010年希望退職に応募し退社。退職の顛末をブログ「たぬきちのリストラなう日記」に公開し、出版業界で話題に。ブログは『リストラなう!』として書籍化


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