「10代に語る平成史」後藤 謙次
2019/06/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(63点)
要約と感想レビュー
テレビ朝日の報道ステーションのコメンテーターである後藤 謙次氏は、どんな本を書いているのかと手にした一冊です。後藤氏は、あの共同通信社の編集局長を歴任し、さらにあの悪名高きTBSのNEWS23コメンテーターをしていたこともあります。この本は、白鴎大学の特任教授として「特講・平成政治史」の内容を元に書いたものだとのこと。
テレビでのコメントのように偏向しているのかと思ったら、そうでもありませんでした。逆に言えば、当たり前の事実を書いているだけで、日中歴史問題など微妙な問題は、もっともらしいことを書きながら、何も意見を書いていません。テレビでは偏向してもよいが大学では偏向してはまずいのか、それともテレビでは偏向を強制されているとでもいうのでしょうか。
・日本国内で実施した各種世論調査では、台頭する中国への好感度は芳しくありません。中国が共産党一党支配体制で、言論統制を強めている国家である現状を考えると、やむを得ない部分もあります。しかし、日本と中国は隣国同士です。どんな摩擦があろうとも、日本列島ごと引っ越すわけにはいきません。中国も大国とはいえ、国を構成するのは、私たちと同じく、一人ひとりの個人です。この地域と平和と安定のため、互いにどう友好を深め、知恵を出していくのか、日中の垣根を越え、みんなで考えていきたい課題だと思います(p183)
後藤さんの考え方の基盤となっている「韓国は日本の植民地だった」「日中戦争は侵略だった」「慰安婦の強制連行に日本の官憲が関係していた」というところは記載しているものの、断定を避け、表面的な歴史の羅列であり、後藤氏自らの意見もなく、社会の裏側を教えるところもなく期待した分だけがっかりしました。
慰安婦問題については、河野談話で強制連行によって慰安婦の人たちが集められたことを明確に認めたかのように記載した上で、「官憲等が直接これに加担した」として河野長官は公式に謝罪していますとも書いています。一方、これに対して日本国内では「強制」の事実が確認できておらず、「河野談話によって日本は不名誉を負っている」など河野談話の見直しを求める声が今も根強くありますなどと併記していました。
テレビの後藤さんが本質なのか、それともこの本の後藤さんが本質なのか、もう少し調べてみたいと思います。後藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・安倍首相は「アベノミクス」を名付けたスローガンを掲げ、景気回復を最優先する考えを持っており、法律通り消費税率を8%に引き上げることに極めて慎重でした・・・15年10月からの10%への引き上げについては「判断時期を含め適切に判断」として結論を先送りしたのです・・「社会保障と税の一体改革」の精神はずいぶん変質することになりました。安倍首相の"一体改革離れ"はまだまだ終わりません。16年の参院選前に再び10%への引き上げを19年10月まで2年半延期することを表明します・・「公約違反」の批判が渦巻きました(p39)
・財政赤字は1000兆円を超える巨額なものになっています。かつての政治家たちは「子や孫の時代には借金を残さない」と必死に税制改革に取り組んできました。たしかにそのことによって七つの内閣が崩壊したのも事実です。平成元年に生まれた日本の経済と社会に大きな影響を及ぼしてきた消費税問題は、依然として日本の政治が解決しなければならない最重要課題の一つなのです(p41)
・天皇訪中は戦争責任問題について日本政府が積極的に動くターニングポイントになりました。宮沢内閣は・・内閣総辞職の直前に元従軍慰安婦に関する河野洋平官房長官談話(河野談話)が発表されます・・さらに宮沢首相に代わって就任した細川護熙首相は最初の記者会見で太平洋戦争についての認識を明らかにしました・・そして社会党委員長だった村山富市首相になって戦後50年の節目の年に発表されたのがいわゆる「村山談話」です(p170)
・中国の江沢民国家主席が「愛国主義教育実施要領」を制定して「反日教育」を徹底したのです・・98年の江沢民氏の来日・・共同宣言で日本側は「過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した」として、日中の外交文書の中で初めて「侵略」の事実を認めました(p172)
・日韓関係は平成の時代だけを切り取ってみても、「友好と緊張」を繰り返してきました・・最大の要因は戦前の日本による35年間の朝鮮半島の植民地支配と、1950年に米ソ冷戦下で起きた朝鮮戦争の結果、分断国家が生まれたという「過去の歴史」が複雑に絡み合っているためです(p187)
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【私の評価】★★☆☆☆(63点)
目次
序 すべては平成元年から始まった
1 平成政治の主役は消費税
2 政治を激変させた選挙制度
3 バブル経済の終焉と失われた20年
4 今も続く沖縄の苦難
5 9・11が変えた日本外交
6 近くて遙かな北方領土
7 平成は自然災害の時代
8 中国の台頭と日中関係
9 振幅激しい日韓関係
10 ゴールの見えない日朝関係
著者経歴
後藤謙次(ごとう けんじ)・・・1949年生まれ。1973年早稲田大学法学部卒業。同年共同通信社入社。自民党クラブキャップ、首相官邸クラブキャップ、政治部長、論説副委員長、編集局長を歴任。現在はフリーの政治ジャーナリストとして活躍。共同通信社客員論説委員、白鴎大学特任教授、テレビ朝日「報道ステーション」コメンテーター
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