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「鉄条網の世界史」石 弘之 石 紀美子

(2019年6月25日)|本のソムリエ メルマガ登録
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鉄条網の世界史 (角川ソフィア文庫)

【私の評価】★★★★☆(80点)


■鉄条網の技術的な歴史かと思って
 手にしましたが、
 鉄条網を切り口にした
 人間の分断と争いの歴史でした。


 アメリカで農牧場を囲うために
 発明された鉄条網は農業だけでなく
 戦場や収容所で使われるようになります。


 アメリカの鉄条網で囲われた農牧場は、
 機械化された農業とともに
 アメリカの土壌を破壊していることを
 警告しています。


・アリゾナ州・・ドライブすると、約10キロごとに「砂塵に注意。速度を落とせ」という道路標識が立っている・・・「農民が1ブッシェルのトウモロコシを 収穫するたびに、2ブッシェルの表土を失っていく」といわれるほどの激しい流出がつづく(p66)


■西欧の近代史における躍進は、
 先住民の虐殺と植民地による経済支配が
 源であったことがわかります。


 力のあるものが弱いものを
 支配してきました。
 アメリカでのインディアン虐殺。
 オーストラリアでの、先住民同化政策。
 各国の強制収容所。


 タスマニアの先住民は、収容所や
 離島に強制移住させられ、
 19世紀に絶滅しています。


・タスマニア島では1804年以降、先住民と欧州人の衝突が激しくなり、先住民は一方的に虐殺され懸賞金がかけられ捕まえられて、危険な獣のように収容所に閉じ込められた・・フリンダーズ諸島に移住させられた・・・1876年には最後の女性が息を引き取ってタスマニア島の先住民は根絶された(p255)


■世界はどんどん進歩していますが、
 いまだ地域紛争もあり、
 中国のウイグル自治区のような
 強制収容所もあります。


 力を持つものが支配するという
 ルールは変わりませんが、
 よりよい世界になってほしいものですね。


 石さん、
 良い本をありがとうございました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・鉄条網で分断され自由な放牧は成り立たなくなって、カウボーイは消えていくしかなかった(p37)


・牧場主からは、草食獣のバイソンは、放牧された牛の草を奪うという理由で目の敵にされ、さらには牧場にするために草原が鉄条網で囲われたため、生息地は狭められていく。他方、入植者や鉄道建設労働者の食用にするためにも大量に殺された(p227)


・塹壕・鉄条網・機関銃の防衛技術の三点セットが確立(p87)


・1776年の米国独立宣言には、「すべての人間は生まれながらにして平等である」と謳われているものの、「すべての人間」には、先住民やアフリカ系は含まれていなかった。先住民に市民権が付与されるのは、1924年まで待たねばならなかった(p222)


・英国はブラジルへの依存度を下げるために、1907年以降ケニアでコーヒー栽培を奨励・・ケニアの地元民人口は、1902年の400万人から1921年には250万人にまで減り、1920年代の終わりごろには、白人の一人当たりの平均年収はアフリカ人の200倍になった(p247)


・戦争の最大の負の遺産は地雷原である・・・地雷原は、ドクロマークがついた黄色いテープや鉄条網で囲ってあった。だが、両方ともひんぱんに盗まれた・・自分の身を自分で守らなければならなくなった老人や一人暮らしの女性たちは、盗んできたドクロマークのテープや鉄条網を敷地に張りめぐらして自衛したのだ(p181)


・囲い込まれたパレスチナ人は土地は生活の手段を失い、移動の自由を奪われ、「難民状態」に置かれている・・・ナチ占領下のワルシャワで、ユダヤ人居住地域を鉄条網で隔離したナチスドイツを同じではないかという批判も強い(p201)


・メキシコの検察当局の発表によれば、2017年には麻薬絡みで殺害された人は約2万5339人・・麻薬カルテルに反対する議員や立候補者が112人も殺害された(p207)


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【私の評価】★★★★☆(80点)


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■目次

第1章 西部開拓の主役
第2章 土壌破壊と黄塵
第3章 塹壕戦の主役
第4章 「人種の罪」と憎悪のフェンス
第5章 民族対立が生んだ強制収容所
第6章 国境を分断する鉄条網
第7章 追いつめられる先住民
第8章 よみがえった自然



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