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「鉄条網の世界史」石 弘之 石 紀美子

2019/06/25公開 更新
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鉄条網の世界史 (角川ソフィア文庫)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 鉄条網の技術的な歴史かと思って手にしましたが、鉄条網を切り口にした人間の分断と争いの歴史でした。アメリカで農牧場を囲うために発明された鉄条網は、農業だけでなく戦場や収容所で使われるようになります。


 アメリカの鉄条網で囲われた農牧場は、分断され自由な放牧は成り立たなくなって、カウボーイは消えていきました。また、機械化された農業はアメリカの土壌を破壊しています。またバイソンは、放牧された牛の草を奪うという理由で目の敵にされ、草原が鉄条網で囲われたため、生息地は狭められていき、食用にするために大量に殺されたのです。


・アリゾナ州・・ドライブすると、約10キロごとに「砂塵に注意。速度を落とせ」という道路標識が立っている・・・「農民が1ブッシェルのトウモロコシを 収穫するたびに、2ブッシェルの表土を失っていく」といわれるほどの激しい流出がつづく(p66)


 西欧の近代史における躍進は、先住民の虐殺と植民地による経済支配が源であったことがわかります。力のあるものが弱いものを支配してきました。アメリカでは先住民インディアンが虐殺されています。1776年の米国独立宣言には、「すべての人間は生まれながらにして平等である」と書いてありますが、「すべての人間」には、先住民やアフリカ系黒人は含まれていなかったのです。先住民に市民権が付与されるのは、1924年からなのです。


 英国はブ1907年以降ケニアでコーヒー栽培を拡大し、ケニアの地元民人口は、1902年の400万人から1921年には250万人にまで減ってしまったという。オーストラリアでも、先住民同化政策によってタスマニアの先住民は、収容所や離島に強制移住させられ、19世紀に絶滅しています。現代のパレスチナ人も土地を失い、移動の自由を奪われて、ユダヤ人居住地域のように隔離されているのです。


・タスマニア島では1804年以降、先住民と欧州人の衝突が激しくなり、先住民は一方的に虐殺され懸賞金がかけられ捕まえられて、危険な獣のように収容所に閉じ込められた・・フリンダーズ諸島に移住させられた・・・1876年には最後の女性が息を引き取ってタスマニア島の先住民は根絶された(p255)


 世界はどんどん進歩していますが、いまだ地域紛争もあり、中国のウイグル自治区のような強制収容所もあります。力を持つものが支配するというルールは変わりませんが、よりよい世界になってほしいものですね。石さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・塹壕・鉄条網・機関銃の防衛技術の三点セットが確立(p87)


・戦争の最大の負の遺産は地雷原である・・・地雷原は、ドクロマークがついた黄色いテープや鉄条網で囲ってあった。だが、両方ともひんぱんに盗まれた(p181)


・メキシコの検察当局の発表によれば、2017年には麻薬絡みで殺害された人は約2万5339人・・麻薬カルテルに反対する議員や立候補者が112人も殺害された(p207)


鉄条網の世界史 (角川ソフィア文庫)
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石 弘之 石 紀美子
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【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 西部開拓の主役
第2章 土壌破壊と黄塵
第3章 塹壕戦の主役
第4章 「人種の罪」と憎悪のフェンス
第5章 民族対立が生んだ強制収容所
第6章 国境を分断する鉄条網
第7章 追いつめられる先住民
第8章 よみがえった自然



著者経歴

 石 弘之(いし ひろゆき)・・・1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)、『地球環境報告』(岩波新書)、『森林破壊を追う』(朝日新聞出版)、『歴史を変えた火山噴火』(刀水書房)など多数。


 石 紀美子(いし きみこ)・・・東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHKに入社。科学番組部、社会情報番組部に所属し、退社。2000年から2003年までボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボの国連機関に勤務し、戦後復興プロジェクトに従事。ボスニアの公共放送局設立のプロジェクトを担当する。帰国後は、フリーでテレビ番組、映画製作、記事執筆。現在はサンフランシスコ在住。


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