「江戸を造った男」伊東 潤
2019/06/26公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
世の中には普通の人ができないことをやれる人がいます。河村瑞賢(かわむら ずいけん)は、13歳で江戸に出て、金もないなかで漬物を売ったり、土壁を供給するというアイデア商売で小金を稼ぎました。さらに江戸の大火では子どもを亡くし失望するなかで、江戸復興のための資材不足を予測し、福島の材木を買い占め大きな利益を出します。
著者が、何か新しいことをやろうとすれば、問題が次々と出てくるのは当然のことで、それを地道に片付けていく根気があるかどうかが、成功者と失敗者を分けるというようにアイデアと実行力がすごいのです。
・七兵衛の商いは、何かを売りたい商人に売り子をまとめて貸したり、壁土を加工する職人を養成し、現場に派遣するものに変貌していった(p152)
さらに江戸の大火で遺骸の処理が進まないことを将軍後見役に直訴。本来なら死罪になるところ、逆に300両で遺骸処理を幕府から請け負って成功させています。成果を出した河村は、その後、幕府の依頼により東回り航路・西回り航路を開発します。
後には越後、淀川の治水工事、銀山開発に取り組み成功させました。幕府の金のみならず自己資金まで投入するその姿勢に多くの人が協力をいとわなかったのです。著者は河村瑞賢に、「わいは仕事をする。人が天から与えられた時間には、限りがある。わいは、わいの時間を世のため人のために使う」と言わせているように、金と時間を公共事業に使ったのです。
・「金を吉原で蕩尽するなら、淀川や大和川に投げ入れる」という言葉が大阪商人たちの間に広まり、「川に金捨てる河村屋、代わりに川の泥すくう」という戯れ歌にまでなった(p419)
大きなことをやる人は、大きなアイデアと人を動かす力を持っているのだと思いました。アイデアだけでもだめ。人を動かすだけでもだめ。江戸時代のゼネコンというところでしょうか。すごい日本人がいたものです。伊東さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・仕事は才ある者が行なうべきだ。そなたには日陰を歩いてもらうことになるやもしれぬが、それでもよいか(p107)
・頑固な職人を扱う場合、まず仕事を褒める。続いて競争意識を煽る。さらに「無理だとは思いますが」などと言いつつ、相手の意欲を引き出す(p214)
・酒田や大石田でも、物乞いをしている人々がやけに多いことを七兵衛は思い出していた・・七兵衛の故郷である伊勢であれば、凶作や飢饉になっても、農民たちは物乞いまで身を落とさない。魚介類が豊富なので、食べていくだけなら何とかなるからだ(p200)
朝日新聞出版 (2018-10-05)
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【私の評価】★★★★☆(82点)
著者経歴
伊東潤(いとう じゅん)・・・1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。『国を蹴った男』(講談社)で「第三十四回吉川英治文学新人賞」を、『巨鯨の海』(光文社)で「第四回山田風太郎賞」と「第一回高校生直木賞」を、『峠越え』(講談社)で「第二十回中山義秀文学賞」を、『義烈千秋 天狗党西へ』(新潮社)で「第二回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)」を、『黒南風の海―加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」を受賞
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