「池田屋乱刃」伊東 潤
2016/01/13公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
池田屋乱刃とは、幕末、京都において新撰組が、池田屋に集まった尊王攘夷の志士を襲撃したものです。各藩が一つの国家のように独立性を持っていた当時、日本国として外国にどう対応していくのか。当時の武士は命を懸けて、主導権を取ろうと動いたことがわかります。
例えば、ロシア船は、日常的に津軽海峡や蝦夷地(北海道)に出没しており、蝦夷地では食料や薪炭を補給するだけでなく、略奪に走ることさえあったのです。日本国という統一国家を作らなければ、蝦夷地はロシアに占領される可能性があったのです。
・朱子学は、土佐人独特の武士道概念を融合して南学となり、「士は死なり」という激越な思想を生む(p101)
この本では、五人の視点で、池田屋事件が書かれてあります。スパイもいれば、志士もいれば、藩の重臣もいる。それぞれが、それぞれの立場で、命をかけて行動しているのです。
例えば、吉田松陰は「知行合一」を主張し、井伊とともに志士たちを検挙している老中の間部詮勝の暗殺を企てて、逮捕されています。そうした志士の死が犬死となったこともあるでしょう。しかし、そうした熱さが、日本を外国の植民地とせず、列強に伍していく源となったように感じました。
伊東さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「士は志なり」(p107)
・それが「知行合一」だ。いかに学問を究め、高い志を持とうとも、その実現に向かって第一歩を踏み出さぬ者は、骸と何ら変わらぬ(p164)
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第一章「二心なし」
第二章「士は死なり」
第三章「及ばざる人」
第四章「凜として」
第五章「英雄児」
著者経歴
伊東潤(いとう じゅん)・・・1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。『国を蹴った男』(講談社)で「第三十四回吉川英治文学新人賞」を、『巨鯨の海』(光文社)で「第四回山田風太郎賞」と「第一回高校生直木賞」を、『峠越え』(講談社)で「第二十回中山義秀文学賞」を、『義烈千秋 天狗党西へ』(新潮社)で「第二回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)」を、『黒南風の海―加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」を受賞
読んでいただきありがとうございました!
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