「キッシンジャー超交渉術」ジェームズ・K・セベニウス他

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キッシンジャー超交渉術

【私の評価】★★★★☆(85点)


■キッシンジャーといえば
 アメリカのニクソン、フォード時代に
 大統領補佐官、国務長官を務めました。


 国家安全保障会議(NSC)の
 外交主導体制をつくり上げ、
 ベトナム戦争においては
 中国とソ連との関係改善を改善し、
 北ベトナムへの支援を減らすことに
 成功しています。


 中東においても中東戦争後、
 エジプトとイスラエルの兵力引き離し
 協定を締結させ、ソ連による
 中東への関与を妨害することに成功しています。


・キッシンジャーはそれを解決するために、
 両者の顔を立てることのできる
 優雅で曖昧な表現を案出した。・・・
 「台湾海峡のどちらの側の中国人も、
 中国はただ一つだと主張していることを
 アメリカは認識した。アメリカ政府は、
 この立場に異議を唱えない」(p267)


■この本で驚いたのは、
 キッシンジャーが南部アフリカの
 白人支配を終わらせたことです。


 もちろん白人がアパルトヘイトの
 特権を簡単に手放すはずがありません。


 しかし、キッシンジャーは
 南部アフリカ地域において
 ソ連、キューバに支援された暴動が頻発し、
 このままではソ連の支配地域になって
 しまうという可能性を懸念しました。


 そこで、米国、英国、南アフリカ諸国の
 関係者の利害を調整し、
 黒人多数支配への道筋をつけたのです。


・合意をためらう相手に対しては、「あなたが
 この選択肢を好まないことは知っていますが、
 果たして代替策はあるのでしょうか?」
 と問いかけ、不合意がもたらす悲惨な結果を
 鮮明に描いてみせた(p227)


■キッシンジャーには賛否あるようですが、
 状況把握を徹底していること、
 戦略目標をはっきりさせること、
 事前に打てるだけの手を打つこと、
 など印象的でした。


 日本では歴史を見れば、
 状況把握さえできていないことが多いので、
 大きな差があると思いました。


 この差を認識するところから
 はじまるのでしょう。


 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・スタッフに対して私は常にこう言っている。
 『自分がどこにいて、どこへ行きたいか、
 この国がどこへ向かうべきかを分析し、
 その答えから具体的な解決策を導きなさい』(p109)


・キッシンジャーは常に、交渉が成立した場合と
 しなかった場合の双方への影響を事前に見積もり、
 それを操作しようとした(p123)


・実際は、交渉の前に、自分にとって
 有利になるように状況を固めておくことのほうが
 よっぽど重要である。合意、不合意に応じて
 アメとムチを用意しておくこともできるだろうし、
 注意深く援軍を集める一方、妨害しそうな敵を
 未然に無力化することも可能だ(p6)


・キッシンジャーのことを
 「カメレオン」と呼ぶ人もいた・・・
 同じ地形について、ある人には丘のことばかり語り、
 別の人には、谷のことばかり語るといった具合だ・・・
 このような変貌自在なアプローチは
 リスクを伴う。たとえば、交渉相手が
 キッシンジャーの覚書を読み比べて、
 矛盾を見つけたら、キッシンジャーのことを
 二枚舌だと思うだろう(p258)


・戦術として極端な要求から始めるのではなく、
 初めから自らの目標と関心を正直に相手に伝えることを、
 キッシンジャーは勧める。そうしなければ、
 交渉は効率的に進まないと彼は断言する(p263)


・一般に交渉における一国の立場は、
 提案の論理だけでなく、相手が拒んだ時に、
 いかなるペナルティを課すかによって決まる・・・
 外交と軍事行動の結果は分けられないということだ。
 行動に伴う報酬や代償なしに、
 大学院のセミナーのように外交ができるという
 考えは、幻想にすぎない(p141)


・「勝つための同盟」を構築できるかどうか、
 そして「妨害するための同盟」を防いだり 
 破ったりできるかどうかは、アプローチの
 順番にかかっているとも言ってもいい(p218)


・キッシンジャーの言う「入念な準備」には、
 その問題に精通することだけでなく、自らの関心、
 相手方の心理、目的、懸念、認識、関係、
 政治的文脈、文化をより明確にすることも含まれた(p226)


・メッセージの内容は無情かもしれないが、
 それを柔らかく伝えることは可能だ・・・
 共感を態度で示しながら、
 率直に主張することは可能だ(p82)


・ソ連の戦術は、モスクワの当面の関心事を選び、
 交渉相手を説得するためではなく、
 疲れて降参させるために、延々と同じ主張を
 繰り返すというものだ。
 ソ連の交渉者が頑として、政府の決定事項を
 ひたすら主張し続けるさまは・・・
 高次の政治問題を不毛な値引き交渉のように
 してしまった(p234)


・周は不意に、きわめて攻撃的になることがあります。
 ヘイグ大将と私はどちらも彼から
 すさまじい口撃を受けました・・
 あなたは、それを我慢するべきではなく、
 毅然と、しかし穏やかに対処するべきです。
 もしあなたが引き下がったら、
 周は攻撃的であり続けるでしょう(p239)


・圧力に屈しての譲歩は、
 新たな圧力を招きやすい。
 すぐ折れる、という評判が立てば、
 相手は交渉を長引かせようとするだろう。
 けれども、自発的に譲歩すれば、
 相手もその見返りとして何らかの譲歩を見せる(p256)


・日本の高官には、命令を下す権限もなければ、
 法によって支配する権限もない。基本的に、
 高官という地位に伴うのは、同僚を説得する際に
 主導権を握れるという特権だけだ。
 また、日本の首相は、国民の総意の管理人にすぎず、
 自ら総意を形成するわけではない(p246)


・ビスマルクは「他の列強が、他のどの国とより
 プロシアと近い関係になるよう、
 外交を操作しようとした。
 そうやって他国をそれぞれ孤立させておけば、
 他国がプロシアの協力を求めた時に、
 最高額を入札する国に協力を
 売ることができるからだ」(p204)


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■目次

パート1 キッシンジャーはどのように交渉したか
第1章 交渉戦略を練る
第2章 戦略から実行へ
第3章 南部アフリカ作戦の成果と巧みな交渉に学ぶ

パート2 ズームアウト
第4章 戦略 ―― 広い視野からの交渉
第5章 現実主義 ―― 合意・不合意のバランスを調べる
第6章 ゲームを変える ―― 合意・不合意のバランスを形成する
第7章 多国間交渉の難しさ ―― 複雑な交渉を組み合わせる

パート3 ズームイン
第8章 キッシンジャーの対人アプローチと戦術
第9章 交渉相手の心を読む
第10章 親密さとつながり
第11章 提案、譲歩、建設的曖昧さ
第12章 粘り強さ、勢い、シャトル外交
第13章 秘密主義、集中管理、個人プレー
最終章 ヘンリー・キッシンジャーの交渉術の核心

まとめ 交渉者キッシンジャーからの重要な教訓
解説 キッシンジャーの交渉術から日本人が学ぶべきこと



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