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「地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 」横山 祐典

2019/02/06公開 更新
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地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

 東京大学で地球の過去の気候を調べている著者に、地球の気候変動を教えてもらいます。地球の気温は、地球の公転軌道の変化により「ミランコビッチサイクル」と呼ばれる2万年、4万年、10万年周期で変動してきたことがわかっています。そして現在、私たちは氷期の間に10万年サイクルで現れる約1万年続く温暖な間氷期にいるのです。


 現在の間氷期が始まったのが1万1700年前であり、そろそろ氷期(氷河期)に移行してもおかしくない時期なのです。そのタイミングで、現在は地球温暖化ガスで地球が温暖化しているのではないか、という意見が主流となっているわけです。


・地球では、少なくとも過去280万年にわたって、地球の公転軌道変化に対応して、氷期と間氷期が4万年や10万年周期で交互に繰り返す気候変動「ミランコビッチサイクル」が続いてきた(p252)


 この本を読んでわかるのは、私たちが分かるのは過去の気温の変化だけということです。学者が研究しているのはそうした過去の実績から地球の仕組みを推測しているだけであり、それは学問として確立されているものではありません。


 過去のデータ分析の結果「ミランコビッチサイクル」は明確な事実と考えられていますが、それ以外の地球温暖化説は、仮説を検証しているにすぎないのです。つまり、間氷期が終わる可能性もあるし、二酸化炭素の増加で温暖化が進むかもしれない。未来の気温は、推測でしかないのです。


・そのまま寒冷化に移行し、氷期に突入するのではという危惧もあるが、それを否定する考えもある・・熱塩循環の弱化がすでに起きているにもかかわらず、地球は寒冷化どころか温暖化が進行しているのは不可解にもみえる(p318)


 氷床や化石から過去の地球の気温や氷床の量を推定しようとする科学者の取組みが、おもしろく感じました。そして、現在は二酸化炭素濃度が上昇し、温暖化しているように見えますが、一寸先には氷河期が待っているかもしれないと感じました。


 そうした不明確な状況で温暖化防止を議論しているという不思議な状況を、冷静に観察し、理解しなくてはならないのでしょう。横山さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・南極の氷床コアから得られたデータ・・・地球は約10万年周期で氷期と間氷期を5回以上繰り返してきたことがわかる。現在は間氷期と呼ばれる温暖な時代で、南極とグリーンランドにだけ巨大な氷(氷床)が存在するが、氷期には北米や北欧、南米などにも氷床が存在していた(p42)


・27憶年前に噴火した火山によりたまった火山灰の上に降った雨の痕跡を調べた・・その形状が液滴の地面へ到着した速度によって決まるという結果を得るに至り、その手法を用いて、雨の痕跡のサイズから当時の大気の密度、つまり大気圧を復元した・・当時の大気圧は現在の2倍ほどかそれ以下であった可能性をネイチャーで指摘した(p97)


・恐竜が闊歩した中生代は・・・当時の地球の平均気温は22℃。現在の地球の平均気温は約15℃だから、今より7℃も高かったことになる(p130)


・白亜紀の温暖な気候を決定づけたのは、温室効果ガスである二酸化炭素の濃度だった。植物化石の気孔の多さ(密度)などから推測される当時の大気中の二酸化炭素能動は1000~2400ppm。現在は400ppm(p130)


・ヤンガードライアスやハインリッヒイベントなどの過去の急激な気候変動は、この「熱塩循環の弱化」がきっかけで発生した・・グリーンランドの氷床コアから復元された古気温の記録では、数年から数十年単位で10℃近く変化したことがわかっている(p316)


地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)
横山 祐典
講談社
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【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

気候変動のからくり
太古の気温を復元する
暗い太陽のパラドックス
「地球酸化イベント」のミステリー
「恐竜大繁栄の時代」温室地球はなぜ生まれたのか
大陸漂流が生み出した地球寒冷化
気候変動のペースメーカー「ミランコビッチサイクル」を証明せよ
消えた巨大氷床はいずこへ
温室効果ガスを深海に隔離する炭素ハイウェイ
地球表層の激しいシーソーゲーム



著者経歴

 横山 祐典(よこやま ゆうすけ)・・・熊本市生まれ。東京大学大気海洋研究所教授。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、海洋研究開発機構招聘上席研究員を兼任。オーストラリア国立大地球科学研究所にて博士取得(PhD)後、アメリカに渡り、カリフォルニア大学バークレー校宇宙科学研究所、アメリカエネルギー省ローレンスリバモア国立研究所研究員を歴任し、2002年より東京大学にて教鞭をとる。American Geological Societyフェロー、文部科学大臣表彰若手科学者賞、アメリカテネシー州名誉市民など受賞。おもな研究分野は、古気候学・同位体地球化学、地球表層システム科学。


気候変動関係書籍

「異常気象の正体」ジョン・D.・コックス
「チェンジング・ブルー気候変動の謎に迫る」大河内直彦
「地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 」横山 祐典


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