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「勝負論」青木 功

2018/12/18公開 更新
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勝負論 (新潮新書)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 プロゴルファー青木功が2014年8月、72歳で書いた一冊です。超一流と言われる青木プロが、どう考えながらプレーしているのか分かる一冊になっています。


 プロでも納得できるショットは、1日に何回もないという。ほとんどが失敗とも言える。「まあ、いいだろう」と、妥協する。そうした中で平常心を保つために、歩くペースを一定にする、ルーティンを守るようにしているとのことです。また、ミスをしたときは反省はしますが、長くは引きずらないという。打ってしまったものを「ああだ」「こうだ」と考えたってスコアは変わらないのです。「おれはきっぱり忘れるタイプだ」と断言しています。


 でも何度もミスが出ればさすがに落ち込むし、思い通りにならない日が続けばガックリもするのです。しかし、何十年もプレーしているうちに「人にはバイオリズムみたいなものがあって、良い時もあれば悪い時もあるのは当然」と考えられるようになったというのです。そもそも「4日間の72ホールでミスがあるのは当然」なのですから、当たり前のことが腹に落ちれば、小さなミスを引きずらなくなり、次の1打を考えらえるようになるのでしょう。ミスをしても、考えすぎないことが大事なのでしょう。


・意識しているのは歩くペース・・・歩くペースを一定に保ち、なるべく呼吸を乱さないよう心掛けている。次に、打つまでの動きや手順(ルーティン)を変えないよう気をつけている(p57)


 試合中のプレッシャーについては、1プレッシャーを避けていたら成長できない。ぶつかっていくうちに慣れると思って挑戦しているという。そして何十年もプレーしているうちに、プレッシャーに慣れてきたという。逆にプレッシャーがないと力が出ない。調子が悪ければ、良いときも悪いときもあるからいずれ良くなるだろうと考える。スコアが出なければ、俺が出せないのだから他の奴も出せないだろう、と考える。とにかくプラス思考なのです。


 1976年の『東海クラッシック』では予選ギリギリ通過から優勝しましたが、「あきらめなければ何とかなる」と意識が変わり、今では失敗しても「この場面を乗り越えなさいって、ゴルフの神様が試練を与えてくれたんだ」と思っているというのです。プレッシャーや逆境全てを「成長の過程」と捉えられれば、悩むことはなくなるのです。50年もゴルフをやっていると「プレッシャーが自分を強くしてくれる」と思えるようになったというのですから、継続は力なりなのでしょう。


・要は「おれがこれだけやってスコア出ないんだから、他の選手はもっと出ないはず」という考えで戦っているのだ・・仮に70とか自分よりも良いスコアを出している選手がいても、「まぐれだろう」と考えるのだ(p24)


 ゴルフでうまくいかない人は、日本では勝てたのに、海外では予選落ちが続くことで、「何とかアンダーパーをださなきゃいけない」とか、日々の練習でも「〇〇をしなきゃいけない」という気持ちが、マイナス思考のスパイラルに落ち込んでしまうというのです。


 青木さんは、勝たなければならないとか、練習しなければ、とは考えないという。とにかく自分は一番うまいし、もっとうまくなりたい。課題を見つけて、それを練習して克服してきたというのです。実績を出している人は、考え方が違うのだな、と思いました。


・単に自分で課題を見つけて、それを乗り越えて来ただけだからだ・・・傍目には努力のように見えるかもしれないが、彼らは純粋に「上手くなりたい」っていう意識が他人より強いから、どんなに過酷な練習でもその過程を楽しめるのだ(p25)


 青木さんの考える一流とは、当たり前のことを当たり前に継続できる人です。毎日のストレッチやトレーニングを欠かさないとか、必ず睡眠を9時間以上取るとか、ちょっとした取組を自然に続けられるかどうかということなのです。青木さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・健康法というわけでもないけれどおれは1日に最低でも9時間の睡眠を取るようにしている(p95)


・例えば、どこかで「こういうストレッチが効く」と聞けば、まずは試してみる。その上で自分に合わなければやめればいいし、使えそうなら自分流にアレンジしてみる(p143)


・"努力を続ける"って言葉は格好良いかもしれないけど、自分の好きなことを続けるために、いまできることをやればいいんじゃないかな(p239)


・鶴瓶・・日常のおもしろいエピソードとかもずっと書き留めているんですよ・・・僕はこれを40年近く続けています・・・青木・・おれが25歳からトレーニングとストレッチを続けているのと同じだね・・続けることが人生だよね。必要なことを続けていれば、好きなことができるし、好きなことのためにはまた、それを続けていく(p250)


・賞金ランキング60位以内のシード選手でも、経費や税金などを差し引くと年収は400万円くらい・・とても「毎日ゴルフできて楽しい」とは言ってられないのだ(p42)


勝負論 (新潮新書)
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

一流と二流は何がちがうのか
「体・技・心」を整える
「身の立て方」を考える
負けないよ
強くなる
現場で学んだ秘策
逆境を楽しめ
失敗を成果に変える
道具論
稼げるプロの条件
勝負論
幸も不幸も人との縁
チャリティとは何か
「挑戦」はやめられない
楽観主義が運を呼ぶ
反・ゴルフ論
「食」と「酒」へのこだわり
プロとして半世紀生きてきた



著者経歴

 青木功(あおき いさお)・・・1942(昭和17)年、千葉県我孫子市生まれ。プロゴルファー。1964年にプロ入り。1971年関東プロで初優勝。1978年には世界マッチプレー選手権に優勝し、1980年、全米オープンではジャック・ニクラスと伝説の名勝負を繰り広げ2位となる。1983年にはハワイアンオープンで、最終18番ホールでの〝奇跡のチップイン・イーグル"を成し遂げ、日本人初のアメリカPGAツアーでの優勝を果たした。以後、世界4大ツアー(米国、日本、欧州、豪州)を制覇。通算85勝。国内賞金王5回。ゴルフ界での多くの偉業を称えられ、2004年に「世界ゴルフ殿堂」入り。2008年、紫綬褒章を受章。


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