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「イワンの馬鹿 (トルストイの散歩道)」レフ・トルストイ

2018/05/08公開 更新
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イワンの馬鹿 (トルストイの散歩道)


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

なぜイワンだけが馬鹿なのか?

東京の書店「読書のすすめ」の本ソムリエ・清水克衛さんからお薦めで手にした一冊です。イワンには二人の兄がいましたが、なぜイワンだけが馬鹿なのでしょうか?


イワンは兄から金を分けてくれ!と言われれば「いいよ」と言ってお金をくれてやります。イワンは兄から馬をくれ!と言われれば、「いいよ」 と言って馬をくれてやります。イワンにとっては、金も財産も力も名誉も面子も大切なものではないのです。


この本では、賢い人たちはみんな外国に行ってしまい、ただ働く馬鹿だけが残った国がでてきます。お金はないけれど、みんなが働いて自給自足の生活をしているのです。いわゆるこれが社会主義の理想なのかもしれませんが、どうすれば皆が働くのか、そこに仕組みがないことが問題なのでしょう。


・「家内がおまえのにおいがいやだと言うんだがね。入口の間の方で食べてくれないか」「ああ、いいとも。・・(p17)


悪魔は戦争と金を与える

そこで悪魔が出てきます。悪魔は兄弟を不幸にするために、いろいろな仕掛けをします。


上の兄は悪魔にそそのされて、他国に戦争をしかけて敗戦。下の兄は悪魔にそそのかされて金儲けに精を出しますが、インフレでお金の価値がなくなってしまいます。ところが、イワンだけは悪魔が仕事の邪魔をしても、ただただ同じように働き続けるのです。


悪魔が金貨を与えても、イワンは金貨を人に与えて働き続けます。悪魔がそそのかして軍隊が攻めてきても、イワンの馬鹿の国の国民たちはただ泣くばかりなのです。イワンはただ働き、食べ、生きているだけなのです。


・兵士たちはどんどん進軍しましたが、どこにも軍隊が見つかりません。みんなが働いて自分も人も養い、わが身を守ることもしないで、いっしょに暮らそうとすすめるばかりです(p66)


イワンの馬鹿の生き方も個人としてはよい

個人の生き方としては、イワンの馬鹿の生き方もいいのかなと思いました。しかし、民族として、また国家としてはどうなのでしょうか。アメリカやオーストラリアの先住民がどうなったのかを考えれば、現実には民族が消滅することもあるし、奴隷にされることもあるのです。


イワンの馬鹿は、個人としては良い人ですが、それを利用して国民を馬鹿にしたいのが社会主義なのかもしれません。トルストイさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・軍人のセミヨンは二つの国を攻め取り、ほてい腹のタラスは商売でしこたまお金をもうけました(p40)


・イワンは金貨をひとつかみつかんで女衆に投げてやりました(p33)


・怠け者を手で見分けるようになりました・・手にたこのある人はすぐ食卓につかせ、たこのない人には食べ残りをやるようにしました(p74)


イワンの馬鹿 (トルストイの散歩道)
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【私の評価】★★★☆☆(78点)



著者経歴

レフ・ニコラーエヴィッチ・トルストイ・・・ (1828-1910)ロシアの作家。ドストエフスキーと並んで19世紀ロシア文学を代表する文豪。貴族の家に生まれ,裕福に育ったが,終生農民への深い理解と愛情をもちつづけた。『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など,数々の傑作を残した。


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