【書評】「中国は腹の底で日本をどう思っているのか」富坂 聰
2018/01/27公開 更新
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)
要約と感想レビュー
アジア外交の現実を直視する
中国・朝鮮半島・日本の三者関係を軸に、東アジアの国際情勢を読み解こうとした一冊です。北京大学への留学経験を持ち、長年にわたって中国取材を続けてきたフリージャーナリストの著者が、日本人には見えにくい各国の「本音」を分析しています。
アジア諸国のなかで対日感情が強いのは、中国と朝鮮だけです。これらの国といかに外交を進めるかは、日本にとって長年の難題です。そのためにまず必要なのは、現実を正確に把握することでしょう。相手は何を意図し、どう動いているのか。どこに対立の火種があり、どこに協調の余地があるのか、ということです。
日中間の摩擦の根底には、経済大国となった中国の「正当な承認欲求」と、それを脅威と見なす日本側の認識のズレがあります。相互不信の構造を理解することなしに、関係改善の処方箋は描けません。
中国は獲得した経済力に見合った扱いとポジションを国際社会で求めるようになり、日本側はそれを無原則な拡大だと警戒した(p88)
中国が仕掛ける「歴史の戦争」
本書が鮮明に描き出すのが、中国による歴史認識を軸にした対日戦略です。
「抗日戦争勝利70周年」の記念行事を見れば、中国が日本とファシズムを意図的に結びつけようとしていることがわかります。靖国神社参拝をめぐる議論においても、中国と韓国が同調する姿勢を見せており、歴史問題が外交カードとしていることが分かります。
最悪のシナリオは核を持つ朝鮮半島
本書が「最悪の事態」として想定するのが、朝鮮半島に核保有国が誕生するシナリオです。日本と中国の間に、核兵器を持ち、韓国並みの経済力を備えた国家が出現することになります。
著者の見立てでは、北朝鮮はすでに核武装を事実上完了しており、相手国に攻撃を思いとどまらせるだけの抑止力を手にしているという。さらに北朝鮮が中国の敵対勢力と同盟関係を結ぶ可能性も排除できず、中国自身も北朝鮮の核兵器を深刻な懸念として注視していると分析しています。
アメリカの一極支配の終わり
本書ではロシアによるクリミア半島編入に対して、アメリカが実質的な対抗措置をとれなかった事実を、著者は「アメリカの一極支配が終わった」ことを象徴する出来事として位置づけます。
原油価格の急落についても、ロシアは「アメリカとサウジアラビアが結託してロシアを財政破綻に追い込もうとしている」と主張しました。しかし著者はこれとは異なる見方をとっており、サウジアラビアはアメリカのシェールガスを潰すために増産に踏み切ったと分析しています。
ロシアとイランの国家財政が原油価格に大きく左右される構造を理解することで、エネルギーと地政学が不可分に絡み合う国際情勢の実態が見えてきました。富坂さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・従来300kmに制限されていた韓国軍のミサイルの射程を800kmまで延長することで米軍と韓国軍が合意した・・中国国防大学戦略研究所の・・金所長はミサイル射程延長には、「暗に剣を日本に突きつける」という意味が含まれているとはっきりと指摘している(p210)
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)
目次
第1章 「イスラム国」を介して中国の視点を学ぶ
第2章 なぜ日中関係の改善へと舵を切ったのか
第3章 「脱露入米」の裏にある真意を読み解く
第4章 日本人が知らない「中朝関係」のリアル
第5章 日本の北朝鮮外交がうまくいかない理由
終章 「価値観」ではなく「利害」に目を向けよ
著者経歴
富坂聰(とみさか さとし)・・・1964年愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てフリージャーナリストに。94年『「龍の伝人」たち』(小学館)で21世紀国際ノンフィクション大賞(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞を受賞。新聞・雑誌への執筆、テレビコメンテーターとしても活躍。2014年4月より、拓殖大学海外事情研究所教授に就任
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