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「最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常」二宮 敦人

2017/12/28公開 更新
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最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常


【私の評価】★★★☆☆(77点)


東京藝術大学とは

著者の妻は、東京藝術大学の美術学部出身です。妻から伝わってくる東京藝術大は、変人の集まり。「最後の秘境」と言われる国立大学法人東京芸術大学は、どんな大学なのでしょうか。


東京藝大は、遅刻、服装自由の美術学部と、練習漬けの音楽学部から構成されています。東京藝術大学美術学部の現役合格率は約2割です。平均浪人年数が2.5年なので、受験予備校に通うのが一般的だという。受験予備校でデッサンなどの練習を積むのです。


美校の敷地は、上野動物園とフェンス一つで接している・・ある日、上野動物園でペンギンが一頭死んでしまった。一人の学生が死体を貰い受け、一時的に染織専攻の冷蔵庫に保存した。それを知らない教授が冷蔵庫を開け、大騒ぎになった・・(p29)

遅刻・服装自由の美術学部

東京藝術大学美術学部は、絵だけでなく彫刻、陶芸もあるから、物を作る肉体労働者のような雰囲気だという。工芸科は陶芸、染織、漆芸、鍛金(たんきん)、彫金(ちょうきん)、鋳金(ちゅうきん)という六つ専攻にわかれています。


一方、音楽学部はコンクールを目指して一日中、ひたすら練習する狂人です。一日練習しないと、三日分ヘタになるという。また、音楽学部はお金もかかります。いい楽器を使うと、受験で有利となるらしく、この本ではローンを組んで100万円のホルンを買った学生がでてきます。


器楽科ピアノ専攻三年生の三重野奈緒さんに聞いてみた・・「とにかく練習ですね。授業のない日なら、だいたい9時間くらいは自主練します。休憩を挟んで、3時間を3セットという感じで」(p119)

芸術家の世界

ただし、東京藝術大学卒業後、アーティストとしてやっていけるのは、ほんの一握りだという。そして卒業生の半分くらいは行方不明だというのですから、世の中楽ではないのです。


芸術家というのは、違う世界にいる人なのだな、と感じました。変な人だから認められる世界があるのは、大事だと思いました。二宮さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・巨匠は、まるで息をするようにヴァイオリンを弾くんですよ・・ヴァイオリン奏者って、骨格が歪んでいるんです・・顔の左右が対称でなくなったり、下側の歯並びが悪くなったり、足や腰の左右のバランスが変わっていったりするんです(p122)


・邦楽とは日本の古典音楽であり、その歴史は千年を超える。たとえば、神社での結婚式で流れる音楽などがそうだ。邦楽科を擁するのは日本で唯一、東京藝術大学だけ。三味線音楽、邦楽囃子、日本舞踊、筝曲(そうきょく)、尺八、能楽囃子(のうがくばやし)、雅楽(ががく)といった専攻が設けられている(p212)


・「藝祭はまず、神輿(みこし)パレードから始まるんだよ」・・驚くべきはこの神輿のクオリティ・・怪獣映画が撮れるレベルだと思う・・優秀作は、上野商店街が二十万円ほどで買い取ってくれるという(p256)


最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常
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二宮 敦人
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【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次

1.不思議の国に密入国
2.才能だけでは入れない
3.好きと嫌い
4.天才たちの頭の中
5.時間は平等に流れない
6.音楽で一番大事なこと
7.大仏、ピアス、自由の女神
8.楽器の一部になる
9.人生が作品になる
10.先端と本質
11.古典は生きている
12.「ダメ人間製造大学」?
13.「藝祭」は爆発だ!
14.美と音の化学反応



著者経歴

二宮敦人(にのみや あつと)・・・1985年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。2009年に『! 』(アルファポリス)でデビュー。ユニークな着眼と発想、周到な取材に支えられた数々の小説を送り出し人気を博す。本書が初めてのノンフィクション作品となる。


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