「大空のサムライ」坂井 三郎
2017/12/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
■海軍戦闘機操縦者として、
中国、台湾、フィリピン、硫黄島と
転戦し、戦後まで生き残った
坂井さんの一冊です。
戦闘中に何度か負傷し、
さらに片目を失いましたが、
硫黄島での航空戦に片目で
参加しています。
最後まで生き残れたのは、
ゼロ戦が優秀だったということ、
そして著者の操縦技能と
運が良かったのでしょう。
・当時の日本の飛行機乗りは、誰も落下傘を持っていなかった。とくに戦闘機乗りは、戦闘に絶対に必要なもの以外は、すべて出撃のときに棄てたのだ。すこしでも機を軽くして、空戦性能をよくするようにと、ただそれだけしか考えなかった。そして、もしも適地において被弾したら、ただ自爆するだけさ。そういった、あっさりした観念を、いつのまにか植えつけられていた(p212)
■個別の戦闘の練度では、
日本軍が圧倒的に強かったことが
わかります。
なぜなら、本当の意味で
必死で戦っているからです。
ある意味、命を粗末にしている。
アメリカ側はできるだけ
戦闘員が死なないように
配慮していました。
これは人を大切にしているというより、
熟練戦闘員を育成するのに
時間がかかるからという
合理的な理由からでしょう。
・敵機の搭乗員は、つぎつぎとパラシュートで海上に降下した。そして、私が引きかえしたときには、四人の敵の搭乗員たちは、大きな(長さ3mぐらい)O字型のゴム製の浮舟(ブイ)につかまって泳いでいた(p224)
■初期の日本軍はとても強かった
ということがよくわかりました。
しかし、米国が物量にものを言わせて
合理的な戦略で押し出してきたとき
日本に勝つ見込みはなかったのでしょう。
坂井さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・なにくそ、負けてなるもんかという、ファイトを持つことが勝利への道につながるんだ。はじめから、うまくできる者はひとりもいない。どんなに操縦の名人でも、はじめはみんな素人だよ。ただ一途に教官を信じて、同じ注意をなるべくうけないように努力することだ(p59)
・私は、太平洋戦争に入る前の訓練で、増槽をつけたままの飛行で一時間に67リッターという最低の消費量を出した自信がある(p304)
・横空の幹部たちのいいぶんによれば、横空がまもっているこの硫黄島が、こんなにめちゃくちゃにやられて、しかも一矢も敵に報いるところがないというのでは、日本海軍航空隊の筆頭にすわる横空の名折れだ、伝統ある横空の名誉のために、ここはどんなことがあっても、敵に一矢をむくいなければならないというのである。しかし、もちろん反対論もあった・・むざむざとやられるためにいくようなもので、のこり少ない大切な飛行機と搭乗員を、意味もなく失う無謀きわまる作戦だ、という・・だが、結局は、とうじの横空の指揮官三浦鑑三大佐の命令で、やはり白昼強襲をかけるということになった(p362)
・私たちと同じ人間であるはずの一人の人間が、指揮官という立場に立つと、まるで将棋の駒をうごかすように、他の人間の生命を無造作に死に投げこむことができる・・そういった軍隊の組織の持つ不条理が、慣れきった日常の通念を突きやぶって、いまさらのように心をうずかせる(p376)
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【私の評価】★★★★☆(82点)