「零戦の真実」坂井 三郎
2006/08/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
●太平洋戦争において撃墜王と呼ばれた
著者が語る「零戦の真実」です。
零戦を通じて、本当の日本海軍の
実態が見えてきます。
●戦争当初、零戦は米兵から
本当に恐れられていました。
これは零戦が基本的に高性能であったこと。
そして零戦の欠点を補う
パイロットの技術があったためです。
(零戦は20ミリ機銃の重装備を誇っていますが、
実際には戦闘には貢献しない装備だったようです。)
・現場のベテランパイロットたちが零戦の開発段階で参加していたら、
20ミリ機銃不要と強調する一二空と同じ意見を具申したことは
間違いない。誰が考えても一機の戦闘機に全く性能の異なる二種類の
固定銃を装備して空戦を行なえというのは不可解である。(p97)
●このように米兵を恐怖におとしいれた零戦も、
乗員を防御する装備がないこと、
機銃の不統一といった欠点が露呈し、
終戦時には米国の弾幕に撃墜されていきます。
この原因としては、兵士を消耗品と考える風潮から、
熟練した兵士が不足し、
それまで技術で補っていた零戦の欠点が
表面化したためです。
・搭乗員は消耗品と称した一時代があった・・・
攻撃隊搭乗員が「落下傘を敵地上空では使用せず」を
心意気とし、「生きて虜囚の辱めを受けず」・・・
を男子の本懐と心得させたことは・・・
どう考えても文明国の軍隊に
採用されるべき思想ではなかった。(P349)
●さらに、熟練パイロットの不足の根本の原因として、
戦略を考えるべき総司令部が、
戦争のやり方、兵器の使い方を知らなかった
ということがあるようです。
海軍では、高速化した攻撃機を低速の戦闘機は
追撃できないとして戦闘機無用論が幅をきかし、
戦闘機のパイロットの養成を一時削減した時期がありました。
・戦闘機乗りは、そう簡単に養成できない。・・・
源田実が提唱し、山本五十六長官が採用した
「戦闘機無用論」は、この二人が
「航空主兵論」を唱えながらも、
実は、戦闘機の使い方を知らなかったことを
露呈したものといえる。(P338)
●このように、軍の上層部が、現場を知らないこと、
現場の意見をきかなかったこと、
装備の改善を行わなかったことなどから、
日本軍は、負けるべくして負けたというのが現実のようです。
それでも零戦とパイロットはよく戦ったのです。
(現場だけが頑張るのは日本的ですね~)
・九割以上の我々が戦闘において
使用する飛行機や兵器の開発に、
発言のチャンスさえ与えられない。・・・
私は残念でならない。
もし、現場の声を汲み取っていたなら、
零戦はもっと素晴らしいものに
なっていただろうと今でも思っている。(P187)
●戦場の第一線で撃墜王と呼ばれた著者の言葉は、
戦争の現実の一端を教えてくれます。★4つとしました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・若い士官には総じて、下士官・兵から見てわけもわからぬことを
口走って相手かまわず威張り散らすのが多く・・・兵学校では
上司上官としての部下統率術といったものをどのように
教えているのかと疑いたくなったものである・・・この上官となら
命を賭けてもよいと思わせる士官も数多く存在した(P174)
・三八式歩兵銃・・・この銃は一度に五発の弾丸を弾倉に納め、
一発ずつ手動で装填して発射する非効率極まる村田銃だ。・・・
太平洋戦争のはじまった昭和十六年まで三七年間、
この銃を使ってきた。・・・これはもう呆れ果てた
国家の怠慢といわなければならない。(P185)
・欧米人の勝負観はボクシングやレスリングに見られるように、
相手をノックアウトするか戦意喪失した時をもって
勝負あったとする。・・・ハワイ真珠湾攻撃・・・
なぜに二次、三次と攻撃を繰り返し、完全に・・・
破壊し尽くさなかったかということである。・・・
司令官の心の底に、一本とれば勝者としての面目は立った
とする日本人的勝負観があり、それが反復攻撃を
させなかったのではないか。(P316)
▼引用は、この本からです。
講談社
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渾身のドキュメンタリー
貴重な書
戦後教育の凄さかも?
腹が減っては戦は出来ぬ
【私の評価】★★★★☆(83点)
■著者経歴・・・坂井 三郎
1916年生まれ。1933年に海軍入隊。砲手を経て、
1937年海軍航空隊操縦訓練生となり、主席で卒業。
戦闘機パイロットとなる。太平洋戦争において200回以上の
空戦で64機を撃墜し、撃墜王と呼ばれる。
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