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「金環蝕」石川 達三

2017/08/04公開 更新
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金環蝕 (1966年)

【私の評価】★★★☆☆(74点)

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■私が生まれた頃の実話を基にした
 政治小説です。


 当時、電源開発が計画した
 福井県の九頭竜ダム建設で
 競争入札が行われました。


 結果は5社中最高額を入札した
 鹿島建設が落札。
 他4社は最低落札価格を超えず
 失格という異例の結果でした。


 この工事にからみ
 当時の池田勇人首相へ政治献金が
 鹿島建設から渡ったのではないかと
 国会で追及されたのです。


・大きな事件をひとつつかまえれば、
 それを材料にして国会で政府を追及するのだ。
 これは神谷代議士のような男にとっては
 自己宣伝のためのまたと無い機会であった・・
 次の総選挙に立候補したときの点数かせぎにも
 つながって行く筈だった(p119)


■この本が注目されているのは、
 電源開発への圧力として
 首相夫人の名刺が
 使われていることでしょう。


 なぜ首相夫人が出てくるのか
 この本でも分かりませんでしたが、
 首相夫人というだけで
 役人や電源開発には
 圧力になるのです。


 今回の森友学園問題では、
 首相夫人を名誉校長にすることで
 役所への圧力としてうまく使った
 ということなのでしょう。


・「総理の女房が名刺を出した・・
 つまり今度のダム工事の入札には、
 総理の女房がじかに関係しておる。
 何であの女房が土木工事の入札に関係するか・・
 ねえ西尾さん、面白いじゃないか(p157)


■当時の事件では、首相秘書官と
 問題を追及していたジャーナリストが
 不自然な形で死亡しています。


 今回は死人が出ないだけ、
 平和な国になったということなのか、
 それとも死人を出すだけの、
 秘密がなかったということでしょうか。


 石川さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・真実はしばしば、その当人を社会的に
 葬り去るさけの力をもっている。
 他人の真実を握ったものが世間の勝者となり、
 自分の真実を他人に握られた者は
 敗者となる(p90)


・かねで話がつけば一番おだやかなんですよ。
 かねというものは、向うも
 とにかく納得するんですからね。
 恨みが残らないし、それに秘密が保てる。
 やっぱりかねですなあ(p110)


・あの人はきっと政治家としては、
 やり過ぎて失敗することが有るに違いない。
 そして彼がやり過ぎて失敗した場合には、
 かなり多くの被害者が出るだろう(p23)


・副総裁にとっては夜こそ
 最も大切な活動の時間であった。
 日中は会社のために働く。 
 そして夜は自分のために働くのだ(p26)


・大臣や代議士や高級官吏たちは、
 組織の力や団体の力に支えられ、
 その力に頼って威張ってはいるが、
 そういう人たちには共通の甘さ、
 他力で支えられて良い気になっている
 甘さというようなものが有る(p10)


・即答はしない。
 即答して得をすることは滅多にないのだ。
 返事を保留している間は、
 総裁の方に主導権があった(p122)


・官僚相手の交渉では、ほとんどすべて
 民衆の泣き寝入りに終わる。
 官僚に勝てるのは、渡り鳥のような
 無法者だけだった。
 正直者はみな、
 (気の毒だけど、こっちとしては扱い良い)
 としか思われていないのだった(p102)


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