「沈黙」遠藤 周作
2017/01/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
キリスト教を捨てた宣教師
島原の内乱の鎮圧後、幕府はキリスト教が原因としてポルトガル人を追放します。潜伏している宣教師には、キリスト教を捨てるよう拷問し、拒否すれば処刑しました。中には、拷問に耐えられずキリスト教を捨てた宣教師もいたのです。
本当に捨教した宣教師がいるのか確認するために、日本に密かに潜入したポルトガルの宣教師がいました。彼は、隠れキリシタンとともに幕府の捜索の手から逃れようとしますが、ついに密告により拘束されます。奉行は、キリスト教を捨てなければ、隠れキリシタンを一人ずつ殺すと脅しました。
・基督(キリスト)がユダに売られたように、自分もキチジローに売られ、基督と同じように自分も今、地上の権力者から裁かれようとしている(p196)
神とは何なのか
慈悲深い神を広めるために、日本に来たのに、そのために日本人のキリスト教徒が殺されていく。自分の信じる神は何もしてくれない。慈悲深い神はどこにいるのか。彼は神とは何なのかわからなくなってしまいました。そして、捨教した宣教師と出会い、彼もキリスト教を捨てたのです。
神はいないのか。いや、神は自分と一緒に苦しんでいたのだ。彼はそう考えるしかなかったのです。
・彼は人々のために死のうとしてこの国に来たのだが、事実は日本人の信徒たちが自分のために次々と死んでいった(p208)
宗教の仕組み
神の存在という自らの考える正義を、宣教師たちに信じさせ、組織として広げようとする宗教の仕組み。そして、神の存在を正当化し、組織として人を動かす仕組みを知りました。
そして、神はいないのではないか。神がいるとすれば、人間の中にいるのではないか。私には、そう思えました。遠藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「汝等、全世界に往きて、凡ての被造物に福音を宣べよ。信じ、洗せらるる人々は救われ、信ぜざる人は罪に定められん」(p30)
・この国では領主たちは宣教師に、今まで使っていた邸や寺々をそのまま教会として使うように命じたのです。ために百姓たちの中には、我々の宗教を仏教と同じ教えだと混同してくる者さえかなりあったようです(p108)
・パライソ(天国)に行けば、ほんて永劫、安楽があると石田さまは常々、申されとりました。あそこじゃ、年貢のきびしいとり立てもなかとね(p128)
・正というものは、我々の考えでは、普遍なのです・・ポルトガルで正しい教えはまた、日本国にも正しいのでなければ正とは申せません(p171)
【私の評価】★★★★☆(83点)
著者経歴
遠藤 周作(えんどう しゅうさく)・・・(1923-1996)東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。
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