【私の評価】★★★★★(96点)
■ついに失敗百選が、
東京電力福島第一原子力発電所の
事故を掘り下げて
第三弾として帰ってきました。
著者には、福島第一が爆発していく様子は、
ミッドウェイ海戦で日本の空母が
撃沈されている姿と重なったとのこと。
東電にとっても
日本海軍にとっても、
その状況は「想定外」だったのです。
・福島第一原発の事故が起きた・・
ミッドウェイ海戦で、日本海軍の4隻の空母が
次々に撃沈されていく、という悪夢を
再生しているようであった・・
大津波も原発事故も「想定外」だったのだろうか。
米軍は日本海軍の暗号を解読しており、
米軍の空母は日本の空母を待ち伏せしていた・・
暗号を読まれていることは日本海軍にとって
想定外(p15)
■驚いたのは、震災前に
アメリカ同時多発テロの対策として
航空機の衝突や外部電源喪失の対策が
アメリカでは実施されていたこと。
日本はその情報を知りながら、
対応していなかった。
もし仮にそうした対応が
実行されていれば、
津波への耐性が高まっていた
可能性があったのです。
・米国は同時多発テロの後に、飛行機自爆、大火災、
電源喪失が起きたときの減災方法を検討して
B.5.bとよぶ行政命令を作成し、
米国の原発104基に対策を実行させた。
日本の保安院にも密かに2回、
B.5.bの内容を説明したが、
保安院は電力会社に伝えることなく隠匿した。
福島原発事故の電源喪失後に
B.5.bを適用していれば減災できたことを、
事故後に米国から指摘された(p128)
■この世の中は、
"まさか"と"想定外"
ばかりなのでしょうか。
後悔、先に立たずですね。
次はテロ対策で、
しっかり対応して
いきたいものです。
中尾さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・書類作成による組織疲労・・
中国電力の島根原発の点検不備問題・・
原発の安全には直接・速急的に影響しない
機器ばかりだったが、自主基準遵守違反に
対しても保安院の攻撃は容赦なく、
必要な提出書類の厚さが数十cmと厚くなった。
調査中に部長が自殺し、担当者が
疲れきっていたことを思い出す(p43)
・舶来品依存症になると、
自分でそれを改造するのが怖くなる・・
想定外の副作用が怖いのである・・
後継機の高圧系冷却装置はFail As Is
(制御電源が喪失してもそのままに動く)の
インターロックを採用していたのに、
1号機だけはFail Close
(制御電源が喪失したらすぐに止まる)
を採用していた(p50)
・海抜をさらに10m高くすると、
現在の設計では機械損失は約1%大きくなる。
事故直後は、「津波を避けるために、あと10m
高いところに設置すればよかったのに」と嘆かれたが、
仮に50年前に東電の社長が「熱効率が29%になっても
いいから、あと10m上げなさい」と命令していたら、
いまのような悲劇は起きなかったであろう(p62)
・モータだけならば完全水密構造にして、
エンジンがあるならば水密構造に加えて
潜水艦のようにシュノーケルを作って
高さ15mから吸排気すればよい。
実際、米国西海外の原発では津波・高波・洪水に
備えてシュノーケルを付けていた(p65)
・福島第一原発事故とシナリオが類似する原発事故が、
それ以前に起きていた・・
福島第一原発のエンジニアが
ル・ブレイユ原発のこの事故報告書を読んだとき、
どのように思っただろうか・・
前述したように東電のエンジニアは、防波堤設置、
電池室止水、予備電源準備を役員に
提案したかったが、大津波の科学的根拠がつかめず、
画餅に終わった(p138)
・笹子トンネルの天井板落下はボストンでも過去に発生・・
事故の6年前にも、同様なボルトが抜け・天井板落下の
事故がボストンで起きていたが、日本では施行・検査の
見直しはなされなかった(p144)
・日本の10万人あたりの悪性新生物(ガン)病死者数は
272.3人である。1000人の職場で10年働くと、
仲間が27人、ガンで病死する。・・
日本の10万にあたりの窃盗犯事件数は1020件である。
1000人の職場で10年働くと、盗みが102件起きるから・・
"またかア"になる(p76)
森北出版
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【私の評価】★★★★★(96点)
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■目次
第1部 「失敗百選」,「 続・失敗百選」から「 続々・失敗百選」 への展開
I 「続々・失敗百選」を要約する
II "つい,うっかり"から"まさか"の失敗へ注目が移る
III "まさか"の失敗の典型例─福島第一原発の事故─を学ぶ
IV "まさか"の事故の特徴は何か,どうやって防ぐか
V 違和感を拾いながら失敗を防ぎ,新しい創造を始めよう
第2 部 失敗事例を学ぼう
VI 福島第一原発は事故に先立って何が問題だったのか
VII 福島第一原発は事故処理中や事故後に何が問題になったのか
VIII "まさか"の事故から多くの問題が学べる