【書評】「続・失敗百選―リコールと事故を防ぐ60のポイント」中尾 政之
2011/06/22公開 更新

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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
「失敗百選」の第2弾です。前作と同じように、「へー、あの事故の真相はこうだったんだ」「あのニュースの実態はこうだったのか」と、事件の真相番組を見ているような気分になりました。60に分類された190の事例が図表付きでわかりやすく秀逸です。技術者としても、失敗パターンが見えるような気がして、どんどん見入ってしまいました。
この本を読んでわかることは、同じ原因で事故はくり返すということです。そして、経営者、管理者は、責任者としてこうした歴史・データ・事例を頭に入れて、事故の危険性を事前に減らすことが求められているということです。そういった意味でこの本は 最高のテキストになるはずです。こうした事例集を教科書として、失敗パターンを若い人に伝えていくことが大切であり、トラブルを未然に防ぐための必須の学習なのです。
・事故の当事者のエンジニアは、事故後のインタビューでは、まず「この事故は想定外でした」と答える・・・このデータからもわかることだが、未知はほとんどない。すなわち、工学分野の失敗は既知だらけであり、似たような失敗はくり返すのである(p17)
電車の中で、この本をあまりに集中して読んでいたために、降りる駅を一つ降り過ごしてしまいました。技術者向けの本ですので、設備を管理している方には必携でしょう。中尾さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・現在、パソコンにコーヒーをこぼしてダウンすれば製品不良であり、誤使用とみなされないが・・石油ファンヒータの・・灯油の代わりにガソリンを入れて揮発性ガスに引火して火事になることは誤使用とみなされる(p166)
・ホテルや飲み屋に入ったら非常口確認は鉄則であるが、多くの人は、「まさか火事は起きないでしょう」と信じて確認をサボる。しかし、現在の火事の半分は放火である。まさかが本当になる(p210)
・他人に絶対に起動されないようにするには、運転スイッチに蓋をして自分の鍵をかけるべきである・・トヨタの工場では、作業員が自分の身を自分で守るために、装置を止めて入るたびに、起動スイッチに蓋をかけて鍵を締めている。(p232)
・よく調べると初心者よりもベテランが事故原因になっている(p239)
・安全装置取り付け前で、内装職人が大挙して作業する時期がもっとも危ない。安全規則の設定理由を皆に理解させるような仕組みを作っておかないと、この配線穴のように規則自体が死文化する(p239)
・日本人は潜水で毎年、20人は亡くなっているから、結構な危険作業である。それなのに、J氏を安全要員として雇わず、バディシステム(2人1組で行動する)を取らず、保険には入らず、資格は取らず(これは明らかな労働安全衛生法違反)、ジャケットは更新せず(これが技術的原因、高分子材料の経年劣化)、責任者に連絡せず(p248)
・筆者もときどき、福祉施設を見学するが、いまだに多くの施設ではリフトを使わずに、"ヨッコラショ"が主流である。・・・製造業では20kg以上のものを持ち上げると、腰痛になると怒られる(p280)
・安全神話の出現・・・タイタニックの沈没までの過去40年間で、欧米間の北大西洋航路における事故死者数は、たったの4名だった(p341)
・当時のイギリスでは、1万トン以上の船に対して・・・962人の緊急時収容能力が義務だった・・・タイタニックは合わせて1178人分の救命ボートの席があったから、とりあえず合法であった。しかし、乗客の最大収容数2435人と、乗組員総数892人とを合わせた3127人と比べると、1178人は38%に過ぎない。合法でも安全とは限らない(p343)
森北出版
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【私の評価】★★★★★(94点)
目次
第1部 「失敗百選」のその後と、「続・失敗百選」での新たな展開
第2部 失敗事例を学ぼう
著者略歴
中尾政之(なかお まさゆき)・・・1983年、東京大学大学院工学系研究科を修了。卒業後は日立金属株式会社に入社し、開発・設計・生産まで幅広く従事。1992年より東京大学に戻り、研究活動に注力。ナノ・マイクロ加工等の研究を手がけ、現在に至る。2002年に畑村洋太郎氏とともにNPO法人「失敗学会」を立ち上げ、企業の生産活動に伴う事故・失敗の原因を解明する「失敗学」を研究。
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