「失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する」中尾 政之
2009/09/28公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
これまで数多くの失敗学の本を読んできましたが、この本ほど「なーるほど」「え~そうだったの!」と納得させてくれる本はありませんでした。なぜなら、この本には、あなたも知っている有名な100の失敗例が解説してあるからです。(これは素晴らしい)
こうした実際のトラブルを分類分けして整理することで、事故が起こるパターンというか、共通点が見えてくるのです。こうしたパターンを知っていることが、事故を未然に防ぐのです。100個もパターン化すれば、だいたいすべてのトラブルは整理できるのだという。
・頻発するシナリオ共通要素の数は、100個程度あれば十分(p16)
ドイツの高速列車ICEの脱線事故やスーパーカミオカンデの連鎖破壊、韓国サンプン百貨店崩壊など、ニュースでは知っていましたが、原因についてはまったくフォローされていない事故の経緯と原因が分かるのです。著者が言うように、100個の事故を読んでいくうちに頭の中に事故回路のようなものができたような気持ちになりました。
こうした事故回路は一定の型があるので、その型(パターン)を頭に入れておけば、リスクが見えるようになってくるはずなのです。問題はそうしたリスクが見えて、何か対策を打つのかどうか、行動するのかどうかなのでしょう。
・福知山線(尼崎市)で脱線衝突事故が生じた・・・3機の救急ヘリが搬送開始したのは1時間半後と遅く、10名しか運べなかった。ICEの事故では救急ヘリが到着したのは16分後であり、医師は98名駆けつけ、2時間以内に59名搬送した(p102)
もし、あなたが技術者なら即買いでしょう。経営者ならば危機予測能力を上げるために買ったほうが良いと思います。学者先生の本には期待していませんでしたが、予想外の一冊でした。
もし、上・下巻、それぞれ1800円ぐらいで販売すれば、もっと売れると思いました。(商売っ気がないのが学者らしいのですが・・・)内容は文句なく★5つとしました。
この本で私が共感した名言
・大失敗の特徴は
(a)「安全パイでこけた」、
(b)「今度も大丈夫」、
(c)「逃げる暇がない」である。(p45)
・2002年に長崎で建造中の客船ダイヤモンドプリンセスの火災が生じたが、これは仮配線を廊下に転がしていたため、いざ火災になったときに防火扉が閉まらずに延焼した(p53)
・粉塵爆発・・・こまめに掃除をして不要な粉塵を除去することが、最も効果的な防止対策である(p244)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★★★(94点)
目次
第1部「失敗百選」とは何か
第2部「失敗百選」を学ぶ
著者略歴
中尾政之(なかお まさゆき)・・・1983年、東京大学大学院工学系研究科を修了。卒業後は日立金属株式会社に入社し、開発・設計・生産まで幅広く従事。1992年より東京大学に戻り、研究活動に注力。ナノ・マイクロ加工等の研究を手がけ、現在に至る。2002年に畑村洋太郎氏とともにNPO法人「失敗学会」を立ち上げ、企業の生産活動に伴う事故・失敗の原因を解明する「失敗学」を研究。
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