「騙されてたまるか 調査報道の裏側」清水 潔
2015/10/23|

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【私の評価】★★★★☆(81点)
■雑誌「FOCUS」編集部から
日本テレビ報道局記者となった
清水さんの一冊。
事件を追う清水さんは、
これまでに桶川ストーカー殺人事件、
冤罪が確定した足利事件など
警察の捜査の先を行っています。
それは雑誌記者時代に学んだ
徹底した調査に基づいて
記事を書いてきたからなのでしょう。
・雑誌記者時代に、先輩からこんな言葉を
伝授されたことがある。
「100取材して10を書け。
10しかわからなければ1しか書くな」(p251)
■現場を取材していると、
何かおかしいと
感じるものがある。
司法や警察が
機能していないこともある。
そうしたことを
丁寧に裏取り取材をすることで、
真実が浮かび上がるのです。
そして、それを報道することで、
社会を動かし、
司法・政府を動かすことがあるのです。
・謎を解く 北朝鮮拉致事件・・
富山県では、誘拐される寸前に逃げ出した男女が
いたのだ。二人は、外国語を話す数名の男たちに
突然襲われて拘束されたという。・・
だが、たまたま近くにいた犬が吠えた。・・
現場に残されたのは日本国内では見かけない
手錠やゴム製の口かせなどだ(p178)
■報道というものの
良い面を知ることができました。
そして、自ら調査せず、
警察や行政の情報をそのまま報道している
業界の雰囲気もわかりました。
清水さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・余談だが、以前、クラブに加盟している
新聞記者からこんな話を聞いたことがある・・
「僕らは事件記者じゃないんです。
警察に詰める警察記者なんですよ」
なるほど、と私は腑に落ちた。
私は事件を追う。記者クラブ員は官庁を追う。
その違いは大きい(p135)
・県庁に出向いた。広報課を訪ねると、・・・
「会見は記者クラブ員だけになります。」・・
「後ろから写真を撮るだけだから問題ないでしょう」
と言いながら、私は名刺を渡した・・
驚くことにそれは通信社の名刺だったのである。
彼は県庁職員ではなく時事通信の記者で、
たまたま幹事をしていたのだ。
「クラブで決めたことなんで」(p133)
・2009年、日本テレビで誤報が起きた・・・
翌日の朝日新聞には、厳しい見出しが躍った。
〈ずさん取材、誤報生む〉〈証言頼み、甘い裏取り〉・・
(「朝日新聞:2009年3月17日)・・
それから五年後の2014年、朝日新聞の
「従軍慰安婦」記事問題が勃発・・
その核を成していた男の証言が「事実でなかった」
ことを朝日新聞は認めざるを得なくなった(p162)
・「菅家、おまえ子供を殺したな」と
刑事はいきなり怒鳴った。・・
机の下で足の脛を蹴飛ばされ、
髪の毛を後ろに引っ張られ顔を上げられた。
十時間以上も続く厳しい追及。・・
"真実"を話せば怒鳴られ、
"嘘"をつけば優しくされた(p89)
・警報199条の「殺人罪」は、確定的殺意または未必的な
殺意を証明できなければ成立しない。だが裁判所は
「被告人の行為で死亡した疑いが強い」と認定している。
ならは205条の「傷害致死」では裁けないのか。
ところがこちらの時効は七年なのだ。・・・
「被告は何らかの方法で秀徳君を殺したが、
殺意の有無がわからないので結局は時効です」(p198)
・日本とブラジルとの間に犯罪人引き渡し条約はない
(取材当時日本はアメリカと韓国の二ヶ国のみと
条約を結んでいた)仮に条約を締結していても、
ブラジルの憲法は自国民の海外引き渡しを
禁止している(p16)
・パトリシアとその父親は日本から一緒に
逃亡している・・父親が私に放った台詞は、
<地獄へ落ちろ!>だった(p26)
新潮社
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【私の評価】★★★★☆(81点)
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■目次
騙されてたまるか―強殺犯ブラジル追跡
歪められた真実―桶川ストーカー殺人事件
調査報道というスタイル
おかしいものは、おかしい―冤罪・足利事件
調査報道はなぜ必要か
現場は思考を超越する―函館ハイジャック事件
「小さな声」を聞け―群馬パソコンデータ消失事件
"裏取り"が生命線―"三億円事件犯"取材
謎を解く―北朝鮮拉致事件
誰がために時効はあるのか―野に放たれる殺人犯
直当たり―北海道図書館職員殺人事件
命すら奪った発表報道―太平洋戦争