【書評】「ザ・ラストマン」川村 隆
2015/03/30公開 更新

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【私の評価】★★★★★(97点)
要約と感想レビュー
カンパニー制の導入
2008年に8000億円もの赤字を出した日立製作所の社長として5年間指揮を取った川村さんの一冊です。
表面的に見てみると川村さんの打ち手は、カンパニー制の導入。グループ会社すべてで役割グレード給に統一。テレビ、HDD、電力事業の三菱重工との統合。非常に大胆な決断をしているだけに大きな障害や葛藤、そして批判があったことでしょう。
ただし、決断にあたっては、リスクベッジとして、「早く、小さく失敗する」ようにしていたという。完璧をめざそうとすれば撤退の判断が遅くなるので、51点であれば及第点との考えで決断するというのです。
社員の尻に火をつけ、健全な競争を生み出す「仕組み」をつくる・・・そのために実行したことの一つが、「社内カンパニー制」だったのです(p46)
少人数で決定すること
印象的だったのは、大人数の会議では何も決まらないと断言されていることです。それをよく知っているのは、異端児と言われた川村さん自身なのでしょう。少人数で決定することで、尖った(驚きの)方針を打ち出せるのです。
実際、改革を実行しようとすると「見通しが甘い」だの「問題を先送りしている」だの「過去の蓄積を無視して厳しすぎる」だの、さまざまな批判が殺到するという。しかし、最後に決定するラストマンとして、孤独の中で決断しなくてはならないのです。
各部門のすべての利益代表が参加する多人数の会議ではうまくいきませんから、「少人数で摺り合わせる」のです(p47)
何のために必要なのか
改革を説得するにあたっては、数字だけではなく、「なぜ必要なのか」「何のために必要なのか」「それを達成すると何が起きるのか」といった背景や将来を語るようにしていたという。
日産の復活を思い出しました。日産には人材がいませんでしたが、日立にはいたのです。シンプルながら大企業に働く人ならば考えさせられる一冊だと思いました。
川村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ラストマンは「情」を理解しつつ、「理」をとることができる人間・・「小事には情、大事には理」(p134)
・結局、自分がやるしかないな・・そんな感覚で、しかし楽観的に、淡々と実行を続けることこそが重要です(p5)
・人は困難な経験をした時ほど成長しますが、「これぐらいでいいだろう」と思った途端に成長が止まり、後退していきます(p91)
・ノートは今では160冊を超えました・・・書くという行為を通して考えるので、頭の中が整理されますし、その内容が記憶に残り、何かの拍子にふと思い出すことがあるのす(p121)
KADOKAWA/角川書店 (2015-03-07)
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【私の評価】★★★★★(97点)
目次
序章 「自分の後ろには、もう誰もいない」―ザ・ラストマン―「この覚悟」を持っていますか
第1章 大事なときに「何を決めるか」「どう決めるか」―リーダーに求められていること
第2章 「きちんと稼ぐ」ための思考習慣―「独りよがり」にならないために
第3章 意思決定から実行までの「シンプルな手順」―自信をもってビジネスをするために
第4章 いつも前向きに「自分を磨く」人―自分を鍛える、部下を鍛える
第5章「慎重に楽観して」行動する9カ条―成果を丁寧に出すための羅針盤
第6章 私たち日本人に必要な「意識」とは何か―グローバル感覚とダイバーシティ
著者経歴
川村 隆(かわむら たかし)・・・日立製作所相談役。1939年、北海道生まれ。1962年東京大学工学部電気工学科を卒業後、日立製作所に入社。電力事業部火力技術本部長、日立工場長を経て、1999年副社長就任。2003年日立ソフトウェアエンジニアリング会長、2007年日立マクセル会長などを務めるが、日立製作所が7,873億円の最終赤字を出した直後の2009年、執行役会長兼社長に就任、同社再生を陣頭指揮する。黒字化の目途を立てた2010年に社長を退任、2014年には取締役会長を退任し、現職。2010~2014年日本経済団体連合会副会長、2014年からみずほフィナンシャルグループ社外取締役、2015年からカルビー株式会社社外取締役も務める
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