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「京セラ悪の経営術―急成長企業に知られざる秘密」瀧本 忠夫

2014/10/23公開 更新
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京セラ悪の経営術―急成長企業に知られざる秘密


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

 京セラの経営の本質は、収入の最大化、支出の最小化です。事務用品は従業員自腹。機械は中古でいい。もちろん、リコールなどとんでもない。そして、短期間で人件費の支出を最小化しようとすると、どうしてもサービス残業が増えるのでしょう。


 そもそも残業申請しにくいし、採算が悪ければ、残業を少なく調整していたようです。有給を取らせないようにしていたという。著者自身、少なくとも1年以上、毎月実質100時間以上の残業をおこない、残業の申請は30時間以下という状態で仕事をしてきたというのです。現在では、遅い部署でも、深夜11時から午後1時くらいには、職場を離れることができるようになったという。


・もし従業員が土曜日の休日に出勤しようと思った場合、休日出勤の届け出を水曜日の午前8時以前に工場の総務に持っていかなければならない(p124)


 次に、収入を最大化するためには、何でもします。できない仕事でも安値受注。短納期で受注してとにかく考えずに設計するというのです。設計が悪いので壊れるので、また作り直したものがまただめで、また作り直すのです。その代わり設計する時間はやたらと早い。まともな製品ができなくても、発注者が困るので、助けてくれるのです。


 したがって、京セラの不良品返品率は異常に高く、著者が京セラに転職した頃の京セラの不良率は、それまで勤めていた自動車部品会社の不良率より2桁以上高かったという。それでも、国の補助金も利用する。契約がなければ、共同開発品も直売してしまう。最後はなんとかなるのです。


・「京セラはどこよりも安い見積もりを出して受注するのは十八番だ」・・・しかし、納期間近になってもまともなものができない・・いまさら他者への変更もできない・・(p167)


 末端まで、ベンチャー企業のように厳しい経営を強いるアメーバ経営は、どうしてもモラルが低下するようです。そのためにも、社員のフィロソフィー教育が必要であり、それを防止する仕組みが必要なのでしょう。


 上司から必ず言われる言葉が、「目標は高く持て。目標は低く持ったからといって、その目標を達成できるものではない。より高い目標を持ってこそ、そこそこの成果が得られるものだ」ということで、徹底した精神主義であることがわかります。やればできる!ある意味、真実なのでしょう。瀧本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・保険金詐欺をおこなっていてもまったく気にしない小谷野君やそれをおこなうことを強要する手塚氏の神経の図太さを、うらやましくも思った(p76)


・責任を電池メーカーであるユアサ電池に押しつけてしまったのである。・・・稲盛会長は大変素晴らしいことを言っているのに、なんでこんなに汚い人間が出てくるのだろうか(p39)

・瀧本「手塚さん、インバーターの件、役員会でどのように決まりました。リコールするんですか?」手塚「それがなー、採算が悪くなるのでリコールしないことに決まった」(p173)


・手塚氏に、「会長ってどんな人ですか」と尋ねたときのことである。・・・「会長はなー、二枚舌や。いや二枚や三枚やない」と手塚氏が語った(p178)


・京セラでは退職者には異常に冷たい。冷酷といったほうが適しているだろう。まず従業員が退職者に送別会を開くことが禁止されているのだ・・・退職していく奴は「裏切り者」である(p122)


・稲盛名誉会長は責任者クラスが大変困るようなシステムを作り上げ、そのシステムにより、責任者クラスが率先して従業員を奴隷のごとくこき使わざるを得ないような手をよく考えたものだと、ほとほと感心する(p133)


京セラ悪の経営術―急成長企業に知られざる秘密
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滝本 忠夫
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【私の評価】★★★☆☆(72点)


目次

京セラへの転職
ソーラーカー開発の実態
「アメーバー経営」と「時間当たり採算性」の真相
保険金詐欺に加担してしまった!
政府補助金の不正請求
社員に払った給料をいかに回収するか
社員にただ働きさせるノウハウ
「動機善なりや私心なかりしか」の嘘
「技術の京セラ」の呆れた正体
利益は人命に優先するのか
京セラの「プラスマインド」教育
稲盛魔術のたね明かし
不祥事を起こした官僚の天下り
京セラの犯罪をトップは知っているのか



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