「人間ドックが「病気」を生む」渡辺 利夫
2014/02/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
■現在70歳の著者は、
60歳くらいから健康診断をやめました。
確かに健康診断による
早期発見・早期治療は延命のために
効果があるのかもしれません。
ただ、検診により精神的苦痛が増えるのです。
「肺に影がありますね」
と言われて、生検の結果が出るまで、
不安な気持ちでいること自体が
不健康ということです。
・がんの早期発見・早期治療が有効だという論拠には、
かなり怪しいものがあります。というより、
根拠のないものであることが次第に分かってきました(p65)
■健康診断は本当に効果があるのだろうか。
肺がん検診、胃がん検診は、
レントゲンにより確実に被ばくします。
それに対し、明確なメリットがあるのでしょうか。
福島の原発事故であれほど放射能を恐れるのに、
病院での放射能に人はあまりにも
無関心であるということでしょう。
・厚生労働省という、国民の健康や福祉の司令塔の
位置にいて、多数の職員と膨大な予算をもつ国家の省庁が、
立証されてもいない早期発見・早期治療を、
こうまで明瞭な戦略としてうたっていいものでしょうか(p41)
■国の医療費は、40兆円になろうとしています。
早期発見・早期治療で医療費は下がるはずですが、
実際に減ることはありません。
70、80歳ともなれば、
だれでも老化という病気を持っています。
老化という病気を
早期発見して治療しようという
考え方にこそ問題がある、
という著者の考えに賛成です。
渡辺さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・現在の大病院は、患者の希望はまったく顧みず、
医師の思い込みだけを押しつけて、
これを拒めば入院も許されない・・・
緩和ケアと在宅療法により、「満足死」と言ってもいいような
死に方をする老人が、意外にも相当数いる(p85)
・日本の医学・医療のレベルは、もう必要以上に
発達してしまい、治療不能な少数の難病を別にすれば、
治る病気のほとんどはもう治すことができるようになっていて、
残るは、もともと治すことが不可能な病気だけ(p183)
・なぜ私は、医師に、母の痛みを取り除いてほしいと訴え、
母には、もっと近くに身を寄り添わせてあげられなかったことか。
母がつらい苦しいと言えば、そうだよね、つらいよね、苦しいよね、
となぜ二人して嘆き悲しむことができなかったのか。
末期の肺がんの母に向って、弱音は吐かないでくれ、
頑張ってくれ、と言ったところで、
母の方には頑張りようもなかったはずです(p211)
【私の評価】★★★☆☆(70点)
■目次
第1章 病気とは「気を病む」ことである
第2章 早期発見は不幸を早める
第3章 医療はすでに限界にきている
第4章 不安を遠ざけることは危険である
第5章 人間の幸福は仕事の中にある
第6章 文学から病と死を考える
第7章 死ねるときに死にたい
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