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「ガットからWTOへ―貿易摩擦の現代史」池田 美智子

2013/06/22公開 更新
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ガットからWTOへ―貿易摩擦の現代史 (ちくま新書)

【私の評価】★★☆☆☆(69点)


■第二次世界大戦前の日本は、
 先進諸国に追いつこうとする発展途上国でした。


 しかし、1929年の世界大恐慌から
 世界の貿易は三分の一となり、
 各国は自国の経済のために保護主義に走りました。


 そうした中、
 なぜ日本だけが貿易差別を
 受けるようになったのでしょうか。


・同じ敗戦国である西独が、ガット誕生二年後に関税交渉会議に出席を許され、1951年に早くもガット加盟を果たしたこと・・・なぜこれほど扱いに差が生じたかを日本人は考えるべきであろう・・・戦後も日本は、世界の世論に触れられる場で訴えて説得していくだけのパブリシティに乏しかった・・日本は、国際的誤解を解き理解してもらうにはさらなる努力が要る(p80)


■この本で指摘するのは、
 まず、日本が貿易輸出を伸ばし
 先進国に挑戦する唯一の国であったこと。


 また、中国への日本進出に伴う
 反日キャンペーンが広がったこと。


 そして、適正価格であったにもかかわらず、
 不公平なダンピングをしていると誤解されたこと。


 最後に、そうした誤解を解くための
 PRができなかったこと。


 最近まで、こうした貿易差別は、
 存在していたのです。


・中国は、当時の日本の交易にとって輸出入とも25%以上を占める良い市場であった。それが、日本の中国への「21カ条の要求」を、時の中央政府が受諾して以来、日本製品のボイコット-商品の不買運動-が燃えあがった。特に満州事変以後は、この運動は中国全土に広がり、厳しい貿易障壁となった(p24)


■なんだか、現在の経済問題でも、
 地球温暖化の交渉でも同じようなことが
 続いているように感じました。


 それでも日本は、世界の貿易の中で
 生きていくしかありません。


 池田さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────────────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・米国は1949年のガット第二回の総会に、日本に最恵国待遇を与えることを同年の会議の議題にするように正式に交渉したが、またしても拒否された・・・日本は戦前に「不公正競争」をしたから、それをまたするに違いないという諸国の声がまだ大きかった(p65)


・米国は、日本のガット加盟のための提案をした。日本の交易相手のガット加盟諸国と交渉し、それら諸国の米国市場への輸入品に対する規制を、何品目にもわたって関税譲許(引き下げや据え置き)を米国がするという・・・日本のガット加盟交渉に、米国が肩を貸したのである(p75)


・ケネディは生きている・・・1962年1月にケネディ大統領は議会に教書を送り、大統領に関税引き下げの大幅な権限を与える通商拡大法の必要を説いた。同法はただちに成立した・・・翌63年5月半ばに、ガット閣僚会議が開かれた・・・(p105)


・ガットに加盟しても、多くの締結国からガットの一員として扱ってもらえなかったことは、日本にとって頭の痛い懸案であった・・・第三五条の対日適用の撤回のために日本の代々の当事者たちが尽くした苦心と努力、それを支えた日本人以外の人々の行為は、日本人の間にさえあまりにも知られていない(p102)


・貿易に競争はつきものである。転じて、競争があれば摩擦が起こる・・・人は個人の欲を捨て去ることが至難であるように、各国はそれぞれ自国に有利な解決を図り、生きのびようとするので、通商過程に理解の衝突が生じるのは当然である(p199)


ガットからWTOへ―貿易摩擦の現代史 (ちくま新書)
ガットからWTOへ―貿易摩擦の現代史 (ちくま新書)
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池田 美智子
筑摩書房
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)


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■目次

第1章 ガット・WTOの役割
第2章 第二次世界大戦と保護貿易
第3章 ブレトンウッズ体制とガットの生誕
第4章 日本のガット加盟
第5章 差別される日本
第6章 ケネディは生きている
第7章 東京ラウンドと非関税障壁
第8章 ウルグアイ・ラウンドとWTO設立
第9章 WTOと日本


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