「落花は枝に還らずとも(上・下)」中村 彰彦
2013/06/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)
■会津藩の「日本一の学生」といわれた
秋月悌次郎を通して、幕末の戊辰戦争を
見ていく一冊です。
会津藩といえば、「まじめ」「至誠」。
武士の本分は、天皇、幕府に忠誠を尽くすこと。
薩長がいかに強かろうが、
ならぬことはならぬのです。
・策略などというものは、正道にあらず。
公武一和のために御奉公するには、至誠をもって
事にあたらねばならぬのだ。(松平容保)(上p201)
■明治維新は、日本統一という意味もありますが、
別の見方では薩長によるクーデターでもあった。
薩長は軍隊を上京させ、
軍事的挑発を行っています。
会津藩から言わせれば、
薩長は中国のような虚言(うそ)も謀略もいとわない
悪の帝国と映ったことでしょう。
・薩摩の西郷吉之助は、かねてから息のかかった尊攘激派浪士
およそ五百を江戸に下らせ、無謀な御用金の調達、江戸市中
取締りにあたっている庄内藩お預かりの新徴組に対する
発砲事件などを起こさせていた。
旧幕府側から開戦させ、受けて立つという美名の下に
一挙にことを決するための挑発である(下p125)
■そういう意味では、当時の会津藩はまじめすぎた。
そして、まじめをサポートする軍事力がなかった。
今の「専守防衛」「非核三原則」「平和憲法」の
日本とそっくりです。
正しく美しい。
ただ、落花は枝に還ることはできないのです。
中村さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・理屈っぽい、怒りっぽい、ひがみっぽい。
これが『水戸の三ぽい』でござる(上p20)
・武家に生まれた者は食事中に会話をしないのが作法・・・
職人は、なにげなく目をやった廊下の先の一室で
藩士とその家族が箸音ひとつ立てず通夜の夜のように
食事をしているのに気づき、びっくり仰天した-(上p29)
・ゆくゆく国家の用をなすべき才気あり、かつ
品行悪しからざる者は選抜して江戸に遊学を命ず。
この場合の「国家」とは、藩のことである。(上p48)
・女郎買いよりも阿片吸引の方が安価に楽しめる―
この表現から悌次郎は、もう18年も前、清国がイギリスとの
戦争に敗れた理由を初めて膚に感じたような気がした(上p91)
・一度枝を離れた落花は、その枝に還って咲くことは
二度とできない。しかし、来年咲く花の種になることはできる・・・
斗南藩領には旧会津藩士とその家族約一万七千名が移住する・・(下p296)
・「お前たちが学業が成った末に立身して大臣宰相となったならば、
地下に眠るわしの石塔が喜んで動くだろう」とも
(秋月)胤永(かずひさ)は語った。(下p300)
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)
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■目次
上巻
第 一章 奇人たち
第 二章 日本一の学生
第 三章 京都まで
第 四章 三本木屋敷
第 五章 若き京都守護職
第 六章 言路洞開
第 七章 八月十八日の政変
第 八章 流離
下巻
第 九章 斜里の羆
第 十章 瓦解の時
第十一章 汚名
第十二章 使命ふたたび
第十三章 越後の雨
第十四章 開城の使者
第十五章 北越潜行の詩
第十六章 神のような人
読んでいただきありがとうございました!
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