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【書評】「貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える」アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ

2013/04/12公開 更新
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貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー


発展途上国はなぜ貧乏なのか

なぜ貧乏人は貧乏なのかという問いに対しては、いろいろな意見があると思います。この本では、発展途上国の貧乏人がなぜ貧乏なのか、実験データにより検証します。


一つの真実は、どんな貧乏人でもふつうの一人の弱い人間だということです。貧乏人は、目先のものにお金を使っています。予防接種よりもテレビがほしい。子供の教育よりも、携帯電話を優先してしまうのです。


水道も下水設備もない小さな家に住んでいる貧乏な家族は、子供に良い教育を受けさせるお金がないと言っていましたが、家にはテレビ、パラボラアンテナ、DVDプレーヤー、そして携帯電話を持っていたという。


つまり人は、負担を先送りし、現在の自分ではなく将来の自分に負担させたがる特性を持っているのです。これは大きい傾向であれば、日本人であっても、同じようなものではないでしょうか。


いま消費しつつ、同時に将来は貯蓄するぞと計画する・・・でも明日になったら、多くの人は誘惑に負けてしまいます(p257)

発展途上国のほうが汚職が多い

こうして発展途上国の貧乏な人を観察してみると、日本人とあまり変わらないように思います。だた、全体の比率でみると、発展途上国のほうが汚職が多く、将来的な投資が少ない、という特徴はあるのでしょう。


例えばインドで、援助食糧の配布をしようとすると、ねずみに食べられてしまう分も含めて、小麦の半分以上、米の3分の1以上が配送中に「失われて」しまうというのです。


こうした特徴が、社会全体として活動していった結果、発展する国家と発展しない国家にわかれるのです。


ウガンダ政府は学校に対し、生徒1人当たりいくらという形で補助金を出し・・・資金のうち学校に届いたのはたった13%。半数以上の学校は一銭も受け取っていません。調べてみると、多くのお金はどうも地区の役人の懐に納まったようでした(p308)

やるべきことをやっていく

貧乏を考察することは、成功への道を考えることだと思いました。成功するためには、貧乏人と反対に、良い未来に向かってやるべきことをやっていくことなのです。


バナジーさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・安価ですむ予防よりも、高くつく治療にお金が使われているのです。(p79)


・開発途上国の貧乏な人々が、おそらくメンツを失いたくないという強迫観念もあって、結婚式、持参金、洗礼式などに大金を使っている(p59)


・人が長期的な見方をできるようになるためには、安定性の感覚が必要なのかもしれないのです。・・・投資を続けられると思わない限り、教育投資を開始するのは、彼らから見れば無意味だと言うことです(p301)


・貧乏な人々は、傑出した才能を示さない限りはお呼びでないと露骨に言われるような学校に通うことになり、つまり「落ちこぼれるまで黙って苦しめ」と要求されるに等しいわけです(p136)


・典型的なマイクロファイナンス契約は、借り手のグループに対して融資を行い、そのグループは仲間のローンにそれぞれ連帯責任を負い、したがって他の人たちにちゃんと返済させる理由があります(p221)


・中国の二つの地域で無作為に選出した貧しい家庭を対象に、主食(一つの地域では小麦麺、もう一つの地域では米)の購入に多額の補助金を与えました・・・米屋小麦に補助金を得た家庭では、主食のコストが低くなったのにその消費量はかえって減り、エビや肉をたくさんたべるようになりました(p44)


貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ
みすず書房
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【私の評価】★★★★☆(85点)


目次


第1章 もう一度考え直そう、もう一度 貧困にとらわれる?
 第1部 個人の暮らし
第2章 10億人が飢えている?
第3章 お手軽に(世界の)健康を増進?
第4章 クラスで一番 需要供給戦争
第5章 スダルノさんの大家族 大家族の何が問題か?
 第2部 制度
第6章 はだしのファンドマネージャ
第7章 カブールから来た男とインドの宦官たち
第8章 レンガひとつずつ貯蓄
第9章 起業家たちは気乗り薄
第10章 政策と政治



著者経歴


アビジット・V・バナジー(Abhijit V. Banerjee)・・・カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。開発経済分析研究所(Bureau for Research and Economic Analysis of Development)元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー、全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェローも歴任。2009年初代インフォシス賞など受賞歴多数で、世界銀行やインド政府など多くの機関の名誉顧問を歴任している。


エステル・デュフロ(Esther Duflo)・・・マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで学び、博士号取得とともにMIT助教となって現在に至る。全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカの経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェローシップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞(Calvo-Armengol International Prize)など受賞歴多数。『エコノミスト』誌により若手経済学者ベスト8のひとりに選ばれ、2008年から4年連続で『フォーリン・ポリシー』誌の影響力の高い思想家100人に選ばれ続け、2010年には『フォーチュン』誌が選ぶ、最も影響力の高いビジネスリーダー「40歳以下の40人」にも選出。


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