「戦後史の正体 (「戦後再発見)」孫崎 享
2012/11/22公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
反米政権はつぶされる
元外務省・国際情報局長が書いた「米国の圧力」についてまとめた一冊です。端的にいうと、親米政権は長期政権となり、反米政権は短命に終わるということです。
反米政権は、必ずスキャンダルでつぶされるというのは、歴史的事実だと思います。それだけ米国との関係が強い勢力があるということなのでしょう。
米国とのあいだに問題をかかえていた日本の政治家(首相クラス)が、汚職関連の事件を摘発され、失脚したケースは次のとおりです・・
○田中角栄 逮捕 ロッキード事件(米国に先がけて中国との国交回復)
○竹下登 内閣総辞職 リクルート事件・・
○橋本龍太郎 派閥会長を辞任 日歯連事件・・
○小沢一郎 強制起訴 西松建設事件、陸山会事件(p84)
官僚の作法
面白いのは、「官僚は本当のことを言ってはいけない」ということをイラン大使の例で説明していることです。本当のことを言うと左遷されるという。
だから、頭のよい官僚は、他人の言動として伝えるわけです。これはマスコミと同じように、官僚の自己保身のための、文化のようなものなのでしょう。
イラン大使が本国へ、「米国の軍事攻撃はありえます」などという電報を送ると、「なんだ、あいつは。原子力開発をやめろというのか。本国の方針に逆らうつもりか」となって、最悪の場合、解任されてしまうこともあります。だから自分ではいえない。しかし「イラク大使が軍事攻撃はあるといっています。ひょっとすると正しい判断かもしれません」という形で警告するのはセーフです。(p105)
官僚の作法
米国政府は北方領土について、ソ連の主張を否定することで、日本とソ連の対立をかきたてようとしたと著者は書いています。確かに、英国は植民地から撤退するとき、植民地が団結して反英勢力にならないよう紛争の種を残していくと言われています。
各国が日本国内で諜報、謀略を行っているのは、事実だと思います。そうした事実を理解したうで、日本の方向を示していく必要があると感じました。孫崎さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・占領時代を象徴するのは、日本政府が負担した米軍駐留経費です・・・六年間で約5000億円、国家予算の二割から三割を米軍の経費にあてているのです(p63)
・講和条約はサンフランシスコのオペラ・ハウス、日米安保条約は米国陸軍第六軍の基地のなかの下士官クラブで調印されました(p116)
・米軍はドイツやイタリアでは、基本的に相手国の法律を守って行動することになっています。それに対し日本の行政協定では、米軍は日本の法律を守る必要がなく、基地の運営上必要であれば、なにをしてもいいことになっています(p153)
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
序章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
第一章 「終戦」から占領へ
第二章 冷戦の始まり
第三章 講和条約と日米安保条約
第四章 保守合同と安保改定
第五章 自民党と経済成長の時代
第六章 冷戦終結と米国の変容
第七章 9・11とイラク戦争後の世界
著者経歴
孫崎享(まごさき うける)・・・1943年生まれ。1966年、東京大学法学部中退、外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使をへて、2009年まで防衛大学校教授。ツイッターアカウント(@magosaki_ukeru)は9万人以上のフォロワーを持つ。
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