「ブラック・スワン上―不確実性とリスクの本質」ナシーム・ニコラス・タレブ
2009/12/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
■非常に評価の高い本のようなので
読んでみました。
著者は、金融工学を使って投資する
デリバティブ・トレーダー。
その実務的な確率の知識から見た世の中
というものが面白いようです。
■たとえば、ある集団から標本を採取して
統計を取ったとします。
普通の統計の知識では100個くらいの
データがあれば母集団の様子はわかります。
ところが、たった一つの特異なデータが
存在するとすれば、そうした100個の
データは意味をなさない場合があるのです。
サンプルデータだけを信頼するな、
ということなのでしょう。
・火星人が地球にやってきて、この幸せな惑星の住人の身長を測ることにしたとする。100人ぐらい測れば平均身長はまあまあわかるだろう・・・競技場に集めた1000人を、今度は財産の額の順に並ばせる。それに、地球上で一番お金持ちの人を加える。マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツあたりだ(p78)
■また、リスクヘッジに対する考察も
秀逸でした。
つまり、最悪を考えて準備する人には
最悪は起こらないので、
その人が評価されないということも
あるというのです。
経営者というものは常に最悪を考えて
行動しますので、その貢献度はなかなか
見えないということなのでしょう。
・あるところに・・政治家がいて、2001年9月10日に法律を作り、・・・飛行機の操縦席には防弾ドアをつけて、ずっと鍵をかけて・・・9・11は防げただろう・・・彼は失意のままで引退し、自分は負け犬だと思い込んでしまう。(p13)
■確率論から見た世の中の
「へーっ」を集めたような一冊でした。
やや読みにくいところもありましたが、
新たな視点もありましたので、
★3つとしました。
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・彼は(三万冊にも及ぶ)膨大な蔵書を使って、やってくるお客を二種類に分類している。「おお!・・大変な蔵書ですね!いったい何冊お読みになったんですか?」という反応を示す人たちと、一握りのそうでない人たち、つまり、個人の蔵書は自尊心を膨張させる添加物ではなく、調査の道具だとわかっている人たちだ(p26)
・世界貿易センターの二つのビルで、2500人ほどの人がビン・ラディンの一味に殺された。・・・あの年、その後の三か月で1000人近いテロの物言わぬ犠牲者が亡くなった。なぜ?みんな飛行機に乗るのが怖くなって車で移動するようになり、死ぬ危険性が高まったのだ。この期間に交通事故の被害者の数が増えたという証拠がある。(p205)
・私はリスクをとること自体を否定しているのではない。だいたい私自身、リスクをとってきた人間だ。私が言っているのは、ろくに知りもしないでリスクをとっちゃいけないということ(p213)
・1000万ドル稼いでそのうち900万ドルを吹き飛ばすほうが、最初から何も稼がないより気分は悪いのだ!(p172)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★☆☆(71点)
著者経歴
ナシーム・ニコラス・タレブ・・・デリバティブ・トレーダー。レバノンで生まれる。ウォートン・スクールMBA修了。トレーディングを行いながら、7年間ニューヨーク大学で確率論のリスク管理を教る。現在は、マサチューセッツ大学で不確実性科学を研究。
読んでいただきありがとうございました!
いつも応援ありがとうございます。
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「経済学者は詐欺師」
というフレーズを繰り返し使いつつ、
現代の経済や金融がなぜうまく機能していないかを
斬新な視点から説明しています。
「経済学」という科目を
学校でしっかり学んだことがない私は、
一般市民向けの経済の本を読んでも
「えっそれは違うんじゃ・・・?」
と腑に落ちないことだらけだったのですが、
この本だけは
「なるほど、そのとおりだ!こう考えればよいのか!」
と何度も膝を打ちながら読みました。
今の日本の状況にそのまま当てはまる点も多々あり、
日本人にこそおススメの本なんじゃないかと
思っています。