「エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」」河邑 厚徳
2009/07/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
要約と感想レビュー
この本は、現代の貨幣経済に疑問を投げかける一冊です。この本は、一つの物語からはじまります。ある物々交換で生活している小さな村がありました。そこには10人の村人がいて、ある人は野菜、ある人は魚を取ってお互い助け合いながら暮らしていたのです。
そこに、ある老人が紙の束を持ってやってきました。そして、「この貨幣というものを導入すると、物々交換より便利ですよ」と言うのです。村人が試しに貨幣を使ってみると、確かにこれは便利です。村人は貨幣を使うことにしました。老人は、「ただ、この貨幣は手数料として1年に1割をいただきます」と言うのですが、貨幣を使いだした村人はそれを拒むことができませんでした。その後、その村はどうなったでしょうか・・・。
村人は、貨幣を集めることに没頭しました。そして、ある人は大量の貨幣を集め、ある人は貨幣が足りなくなりました。貨幣がない人は、家を担保に借金をしましたが、結局、破産してすべてを失いました。そして老人だけは、苦労せず、毎年1割の収入を貰い続けていたのです。
この本では、こうしたお金を持っている人が有利な状況は、貨幣が劣化しないことが一つの要因だとしています。モノは劣化する、貨幣は劣化しない、ということです。したがって、その状況を打破する方策として、モノと同じように減るお金を提案しています。(私はインフレが貨幣の劣化だと思うのですが・・・)
・モノにはそれぞれに特有な減価率がある・・・時の経過のなかで傷んでいくわけです・・・しかしお金が介在してくると・・お金はいつまでもっていても減りはしません。(p117)
貨幣とは、人が作り出したものであることに気付きました。そして、松下幸之助の逸話を思い出しました。松下幸之助が紙に何かを書いていました。覗いて見ると、そこには、「金、金、金、金・・・・」と「金」という字が書かれてあったのです。「金」とは何なのか、と思案していたのでしょう。
「金」とは何なのか。私たちもよく考える必要があるように感じました。ある人は資本が人を支配していることが問題であると考え、共産主義を考え出しました。その結果、共産主義国家を作ったら、資本主義よりさらに悪い形で人を支配するのが共産主義であったのです。
物事には良い面と悪い面の両方がありますので、トータルでよりよい方法を作っていくべきなのでしょう。考えさせられる本として、評価は★3つとしました。
この本で私が共感した名言
・その湖畔の人々は紙幣がその地方に導入されるまではよい生活を送っていたというのです。・・・ある日、紙幣が導入されたのです。・・・漁師たちは、むろんローンでもっと大きな船を買い、・・・そのため、今日では湖に魚がいなくなりました(p27)
・老化するお金のシステム・・・このお金はもっていても増えないばかりか、減るので、皆がそれをすぐに使いました(p33)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
目次
プロローグ 『エンデの遺言』―その深い衝撃
第1章 エンデが考えてきたこと
第2章 エンデの蔵書から見た思索のあと
第3章 忘れられた思想家シルビオ・ゲゼル
第4章 貨幣の未来が始まった
第5章 お金の常識を疑う
エピローグ 日本でも「お金」を問い直す機運高まる
著者経歴
河邑厚徳(かわむら あつのり)・・・1948年生まれ。映像ジャーナリスト。女子美術大学教授。1971年、東京大学法学部卒業後、NHK入局。主に文化教養番組で芸術、歴史、宗教関係のドキュメンタリー担当。数々のドキュメンタリー番組を手がけ、内外の受賞多数。映画の脚本監督、プロデューサーを務める
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