「発酵道」寺田 啓佐
2009/07/06公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
■著者は、25歳で老舗の酒屋の婿養子となり、
300年続いた商売を引き継ぐことになりました。
自分の代で潰してはならない。
そうした思いから、利益を追求し、
原材料費を削減し、簡単で儲かる酒を造っていきました。
■しかし、時代の流れは
日本酒から洋酒、ビール、焼酎などに移り、
日本酒の生産量がどんどん減少していきます。
吟醸酒が売れるのであれば吟醸酒、
本醸造が売れれば本醸造と、
いろいろな酒を造りましたが売上は減っていきました。
家庭も職場も雰囲気が悪くなり、
賭け事、タバコ、暴飲暴食に走った寺田さんは、
ついに腸が腐って入院することになってしまったのです。
・かつて日本酒は、「百薬の長」といわれていたのでは
なかったか。それがいつのまにやら「きちがい水」などと
いわれるようになってしまった。(p62)
■どん底の状態で病院で寝ている間、
寺田さんはなぜ腸が腐ったのかと考えました。
同じ菌が増殖するのでも、
一方は腐敗、一方は発酵。
これまでは自分は腐敗していたのではないか、
会社も腐敗していたのかも。
では、腐敗ではなく発酵を選べないのか・・・。
寺田さんは、自分の人生を腐敗させるのではなく
発酵させることに決めたのです。
お金を追い求めるのではなく、
人の役に立つ酒を造ると決心しました。
・「いかに儲けるか」を捨てた。
私利私欲も捨てた。
ただ本物の酒造りを始めよう、それだけだった(p58)
■しかし、現実には勇気と決断が必要です。
無農薬米は3倍の値段がします。
周囲の仲間や専門家は「そんなの無理」と反対します。
それでも、自分を捨て、会社の利益を捨て、
ただ、そのお酒を飲んでよろこんでくれる人のために
酒を造り始めたのです。
・かつて自分の利益、会社の利潤と、お金を追い求めていた私は、
・・・常岡一郎氏との出会いで、「みなさんの役に立つ酒造り」
へと方向転換をしてきた(p132)
■いい酒は造った。しかし、これまでの
取引先は反対し、取引停止となったところもありました。
ところが、3年もすると、
無添加の酒を理解してくれる販売ルートができ、
採算が取れるようになってきたのです。
■寺田さんは、その後も発芽玄米酒、どぶろくを商品化し、
給食委員会などで日本伝統の自然食の大切さを
伝える活動をしています。
「得るは捨つるにあり」と言いますが、
まさに寺田さんは実践されているのです。
感銘しました。
私もまた、自分を捨てることが、
できるのでしょうか。
本の評価としては★5つとしました。
─────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・「自分の利益や欲を捨てたときに、人間は救われる」
これはかつて父に言われたコトバだ。・・・
父に言われたときは意味がわからなかった(p53)
・私たち人間も、微生物のような快い生き方をしていけば
いいんじゃないだろうか・・・
気持ちのいいこと、楽しいこと、心地いいことを選んで進んでいくのが、
いちばんいいのじゃないか(p162)
・私は声を大にして言いたい。「添加物だらけの酒なんか飲むのを
やめて、自分で造ったどぶろくを飲んだほうがぜったい体にいい」と。
それは、酒屋をやってきたからこそわかることなのだ(p212)
▼引用は、この本からです。
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よかった
発酵を通じた人間学
発酵?!腐敗?!あなたはどっち?!
お酒の推薦書ではありません!
【私の評価】★★★★★(94点)
■著者経歴・・・寺田 啓佐(てらだ けいすけ)
1948年生まれ。自然酒蔵元「寺田本家」23代当主。
74年300年続く造り酒屋「寺田本家」に婿入りする。
85年経営の破綻と病気を機に、自然酒造りを始める。
読んでいただきありがとうございました!
いつも応援ありがとうございます。
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