「国連専門機関の事務総局長が"勝つ"ための国際交渉術教えます!」内海 善雄
2009/04/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
■ITU(国際電気通信連合)において8年間、
事務総局長として、国際交渉の場にいた著者が、
国際社会の実情を教えてくれる一冊です。
ITUでのエピソードが
国際社会の現実をリアルに教えてくれます。
■エピソード1
2002年、イギリスはITUの選挙に立候補
しました。そして、「イギリスがITUに支払う分担金を増額する」
という公約で、選挙戦を戦ったのです。
しかし、結果は残念ながら落選。
そして、イギリスはどうしたかというと、
公約とは逆に「分担金を引き下げた」のです。
・英国代表は、「ITUに多大な貢献をしている英国を
選ばない国に対して、思い知らすために分担金を
引き下げるのだ」と説明した(p23)
■エピソード2
ITU最高幹部が帰国することになりました。
ところが、国連の規定どおりの手当てをもらったにもかかわらず、
「赴任したときよりも金額が安い」と文句を言い出しました。
さらには、家族ぐるみの付き合いだったにもかかわらず、
「妻は、お前を憎んでいる」と捨て台詞を残して、
それから関係はなくなってしまいました。
■エピソード3
ITU事務総局長になった著者は、
ITU運営についての改善の意見や、
注意点を教えてほしいと職員全員にメールを送りました。
しかし、返信されたメールには、
人事についての個人的苦情ばかり。
さらには、総局長が「密告」を推奨していると
問題になりました・・・。
■こうしたエピソードから見えるのは、
いかに国際社会が、公正と信義のない社会であるのか
ということです。
約束は守らない、法外な要求をする、
自分の利益だけを考える・・・これが現実なのです。
・国際社会は、現日本国憲法が前提としている、
国連を中心とした条理と平和愛好民族で成り立っている
わけではありません。むしろ、皆が倭寇であり、海賊である
と考えたほうがよほど現実に近いのです。(p18)
■著者が提案しているのは、海外の担当者を
人事異動で頻繁に変更しないことです。
海外では組織ではなく個人プレーが基本なので、
長期間、担当者が変わらないことが
国際社会で戦っていく基本になるのです。
■海外で仕事をしている私も
納得の一冊でした。
「K国だけでなく、どこでもそうなんだ・・・」
海外で仕事をする人や、外国人と仕事をする人、
そして、非武装中立がいいなどと思っている人には
最適の一冊ではないでしょうか。
本の評価としては★4つとします。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・あまりに法外なことを要求すれば、国際社会でも無視されますが、
かなりの要求をしても「法外」になりません。「だめもと」で
努力することが重要です。(p64)
・会議を有利に進めるためには、自分自身が顔役にならなければ
なりません。それには、百戦錬磨の経験と顔が必要です。・・・
日本政府の代表は、役所の頻繁な人事異動のため、会議出席の
経験が浅く、まことに惨めな状況に立たされています(p122)
・分からないジョークに愛想笑いをしない!
分からないのは相手の能力がないから。
分からなければ聞けばいい。(p52)
▼引用は、この本からです。
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「日本人は超お人よし」ということが良くわかった
【私の評価】★★★★☆(83点)
■著者経歴・・・内海 善雄(うちうみ よしお)
ITU(国際電気通信連合)事務総局長。
郵政省国際部長、総務審議官、郵務局長などを歴任。
ITU京都全権委員会議長の采配ぶりから、
1998年ITU事務総局長に選出される。
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■関連書評■
a. 「鷲の人、龍の人、桜の人 米中日のビジネス行動原理」キャメル・ヤマモト
【私の評価】★★★★★
b. 「エコノミック・ヒットマン」ジョン・パーキンス
【私の評価】★★★★★
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