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「散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道」梯 久美子

2009/03/12公開 更新
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散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)

【私の評価】★★★★☆(88点)


■硫黄島については、映画も製作されていますが、
 太平洋戦争末期、日米で激しい戦闘が行われた
 東京南方1250kmの島です。


 日本側は、栗林陸軍中将以下二万の兵。
 米国側は、後方支援十万、重装備の海兵隊六万。


 栗林中将の指揮する日本軍は、
 高温で硫黄ガスが噴出する地面を掘り、
 地下道を作り、ゲリラ戦を戦いました。


 圧倒的な物量に対して、
 日本軍は玉砕。死亡者2万人。
 米国は2万7千人が死傷し、
 うち7000人が死亡したそうです。


■硫黄島の状況から浮かび上がってくるのは、
 当時の日本軍の雰囲気です。


 中央からの命令だからといって、
 水際攻撃に固執する。
 飛行機がないのに、飛行場を整備する。
 全く合理性がない判断が多いように感じました。


 それでも現場で働く兵隊は、
 命令を遂行しようと努力し、頑張っている。
 今の日本のようですね。


・栗林が硫黄島行きを命じられたのは、・・・彼のアメリカ的な合理主義が嫌われ、生きて還れぬ戦場に送られたとする見方もある(p74)


■当時は、
 「そんなアホな命令、聞いとれんわ」
 という対応はできなかったのでしょう。


 私たちの日本を守るために
 命をかけて戦った人がいたこと、
 現実を直視しないと、
 とんでもないことになるということ、
 正しくとも組織では否定されることがあることなど、
 勉強になる一冊でした。


 やはり歴史は学ぶべきものだと思います。
 本の評価としては★4つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・ぼくは米国に五年ほどいたが平和産業が発達していて、戦争ともなれば一本の電報で数時間を要せず軍需産業に切り替えられる・・・こんな大切なことを日本の戦争計画者たちは一つも頭においていない。・・・この戦争はどんな慾目で見ても勝目は絶対にない。(栗林)(p72)


・ご存じ?硫黄島には、十六歳の兵隊さんもいたんですよ」・・・思えば遠し 故郷の空 ああ わが父母 いかにおわす(p123)


・予が諸君よりも先に、戦陣に散ることがあっても、諸君の今日まで捧げた偉功は決して消えるものではない。いま日本は戦に敗れたりといえども、日本国民が諸君の忠君愛国の精神に燃え、諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対して涙して黙とうを捧げる日が、いつか来るであろう。安んじて諸君は国に殉ずべし(栗林)(p274)


・1994(平成6)年二月、初めて硫黄島の土を踏んだ天皇はこう詠った。 精根を込め戦いし人 未だ地下に眠りて島は悲しき(p282)


▼引用は、この本からです。


【私の評価】★★★★☆(88点)



■著者経歴・・・梯 久美子(かけはし くみこ)

 1961年。編集者を経て文筆業に。本書で「大宅壮一ノンフィクション賞」を受賞。著書多数。


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