【書評】「日本の食と農 危機の本質」神門 善久
2007/11/07公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
農家の取り分は小売価格の10~40%
学者さんが日本の農業を分析すると、こうなるんだろうな、という一冊でした。まず、農業経営が非常に厳しいものであり、人一倍働かなくては成り立たないことはわかるようです。
現状の農産物の流通では、農家に入るお金は、10%くらいでしかないのですから、農家は流通を含めてコスト削減努力が必要となります。
現在の家庭の食費の大部分は加工や流通などにお金をかけているのであって、農産物そのものにはお金をかけていない。青果物の場合、小売価格の10~40%程度しか 農家の手元には行かない。(p36)
補助金と農地転売
しかし、それでも農家が農家であり続ける理由は、農水省のばらまく補助金と、将来の農地転用による土地の売却期待であるというのが、神門(ごうど)さんの分析結果です。現実は、そうなのでしょう。
また、農協と農水省にしても、現状維持と組織の維持に努力をするのみです。自殺した農水相がいましたが、農水省の利権には、ものすごいものがありそうです。
正直に農地法を改正するのではなく、新たな制度を作って農地行政を複雑にし、外部からわかりにくくするのが農水省の 知恵である。農水省のホンネは零細農家の保護である。(p161)
このままでは暗い農業の未来
「現状はよくない」ということはよくわかりましたが、今後、どうすべきかについては、最後の数ページで、外国人労働者の活用と、海外からの食品輸入の促進をあげています。
サントリー学芸賞を受賞するくらい良い分析とは思いましたが、批判が主で、提案内容が弱かったので、★2つに近い、★3つとしました。
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この本で私が共感した名言
・JAの法令違反は偽装表示だけではない。最近では全農秋田による 自主流通米の架空取引および横領事件が耳目を集めた・・・雪印食品が消滅してしまったのに比べて、相変わらず巨大組織で不祥事を続けるJA(p77)
・生産者との顔が見える関係とかいって宅急便を活用したような流通は 実は流通経費を高め、資源の浪費という環境破壊を招いている可能性がある。(p22)
・BSEであれ、環境ホルモンであれ、どの程度の有害性を持つのか、現在科学が正確に解明したわけではない。・・・日々われわれが"安心"して食べているものに、BESの比ではなく有害性が科学的に検出されているものが多々ある。(p48)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
序章 日本の食と農
第二章 食の議論の忘れもの
第三章 迷宮のJA
第四章 農地と政治 I (農地問題の構造)
第五章 農地と政治 II (農地政策の行き先)
第六章 企業の農業参入?
結章 明日の食と農を見据えて
著者経歴
神門 善久(ごうど よしひさ)・・・1962年 生まれ。1994年 京都大学博士(農学)。現在 明治学院大学経済学部経済学科教授。
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