「日本の戦争力」小川 和久
2007/01/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
軍事関係ならテレビでおなじみの小川 和久さんの一冊です。いつも論理的に破綻のない分かりやすい主張をされる小川 和久さんですが、この本も分かりやすい一冊になっています。
この本では、どの程度自衛隊が他国を侵略する能力がないのか、具体的に説明されています。自衛隊というものは、アメリカ軍をサポートするためにあるものであり、逆に言うとアメリカ軍とセットで最強の軍隊となるわけです。
・自衛隊にはパワー・プロジェクション(戦力投射)能力がまったく欠落している。数十万の陸軍を海を越えて上陸させ、戦争目的を達成できるような構造を、もともと持っていない軍隊なのだ。(p55)
また、防衛庁が防衛省になりましたが、安全保障の観点では、情報収集を行う危機管理庁の必要性を主張しています。昔から「情報」を重要視しない日本の弱点を危惧されているようです。スパイ防止法さえない日本は、情報音痴であるというのはある程度事実なのでしょう。
・まず国の安全を図るための組織を以下のように作り上げてほしい。・・・基本的に防衛庁(自衛隊)と危機管理庁の二本柱で構成されると考えてほしい。そして、両者にまたがる情報活動やテロ対策のような重要案件は、首相直属の国家安全保障会議が統括する。(p16)
防衛庁が防衛省になり、北朝鮮のミサイルが飛んでくるご時勢で、日本の防衛はどうなっているのだろう?と疑問に思う人にお勧めの一冊です。
専守防衛の範囲でも長距離ミサイルや無人飛行機などやれることは、まだたくさんあるはずです。アメリカ抜きでは語れない日本の防衛がわかる一冊でした。★4つとします。
この本で私が共感した名言
・新聞であれ、テレビであれ、官僚であれ、学者であれ、北朝鮮の脅威をいたずらに騒ぎ立てる者は、北朝鮮の軍事的な脅威を軽減させるか抑止するための具体的な議論をともなわない限り、「北朝鮮の手先」同然だということです。(p230)
・日本は島国・・・敵がどこから上陸するかを問わず、上陸した敵の裏をかいて味方を逆上陸させる能力が必要です。・・・全輸送艦艇がフル稼働しても1度に約1万2000人しか運べず、島嶼国家としての作戦能力はないに等しい・・・海上自衛隊は、アメリカと組んで始めて完全な能力を発揮するわけです。(p49)
・米海軍が日本に置いている燃料は、アメリカ本土以外では世界最大規模だ。米陸海空軍と海兵隊が日本に置いている弾薬も、アメリカ本土以外では世界最大だ。日本にある通信傍受施設も世界最大級なのだ。(p101)
・日本で米軍が事件や事故を起こすと、アメリカはただちに最高の顔ぶれで謝罪する。ほかの同盟国ではありえないことだ。日本に代わる同盟国が存在しないからで、アメリカの謝罪は、彼らから見た日米同盟の重要性を象徴している。(p123)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★☆(83点)
著者経歴
小川 和久(おがわ かずひさ)・・・1945年生まれ。中学卒業後、陸上自衛隊生徒教育隊に入隊、同航空学校を修了。同志社大学神学部を中退後、「日本海新聞」「週刊現代」の記者を経て、1984年に軍事アナリストとして独立。危機管理総合研究所を主宰。著書多数。
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