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「日本を想い、イラクを翔けた」松瀬 学

2006/10/13公開 更新
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日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯

【私の評価】★★★☆☆(77点)


●2003年、英国参事官である奥克彦は、
 イラクにいました。


 3月にアメリカは国連を無視してイラク進攻を開始。
 日本は、このイラク進攻を支持することになります。


 そして、イラク復興支援の現場で先頭に立ったのが、
 奥克彦です。


 そして、イラク大使館の井ノ上正盛書記官が奥克彦を
 サポートします。


●5月にはアメリカの戦闘終結宣言が出され、
 奥克彦と井ノ上正盛は、アメリカの占領政策を行う
 復興人道支援局(ORHA)と行動を共にします。

 
 日本は、どのような復興支援をすればよいのか?
 奥克彦は、イラク国内を情報収集のために
 奔走します。


 ・おそらく奥は戦後の半年間、
  一番イラクを走った
  外国人じゃないかと思います。(p183)


●在イラク大使館がまとめたイラク支援は
 次のようなものがあります。


 ・ダウン症障害児センター支援
 ・緊急医療物資支援計画
 ・イラク初等教育再生計画(学校に帰ろうキャンペーン)
 ・学校整備計画
 ・下水処理施設建設計画
 ・上水施設整備計画
 ・『おしん』の放映


●しかし、夏になると自爆テロ、国連爆破テロなどが起り、
 治安は悪化。在イラク大使館は職員を退避させました。


 それでも、在イラク臨時代理大使の
 上村司、奥克彦、井ノ上正盛は、
 イラク国内での活動を続けていたのです。


●代理大使の上村司は、疲れていました。


 そして、奥克彦、井ノ上正盛も
 疲れていたのです。


 しかし、外務省には、要員を増員して、
 交代で業務を執行しようという組織的なサポートをするという
 動きはありませんでした。


 ・欧米の国でCPA(イラクの連合暫定施政当局)に派遣されている
  スタッフはみな長くても半年で交代している。
  でも奥克彦は・・・。だれの責任でもないけど、
  奥も井ノ上も僕も疲れていたんです(p222)


●2003年11月29日、奥克彦、井ノ上正盛は
 イラク国内を移動中に銃撃され、
 帰らぬ人となりました。


●奥克彦さんは、非常に有能な人であったようです。


 しかし、その有能さがゆえに、
 外務省はその人の有能さにすべてを
 任せていたのではないでしょうか。


 日本には有能な人材がいる。
 しかし、それをサポートする組織はない。


 日本の組織的な無能さを理解するのに大切な一冊であると
 感じました。★3つとします。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・アフガン戦争の緊急医療援助にいったとき、
  日本の在外公館は冷たかった欧米だと、
  政府機関だろうが、民間団体だろうが、
  個人のボランティアだろうが、
  その国の人々をサポートする。
  激励するでも日本はゼロだった(p147)


 ・奥克彦は、現地(コソボ)にいた外務省の同僚に言った。
  「おれたちは、こういう仕事をしたくて
  外務省に入ったんだ」(p154)


 ・戦争の話はほとんどしなかった。
  ただ、「近代戦争がいかに悲惨なものか」をこぼした。・・・
  「つまり敵を見て戦争しているわけじゃないと。
  いきなり、知らないところからミサイルが飛んで
  くるわけです。誤射もある。庶民や子供たちが死ぬ(p195)


▼引用は、この本からです。
日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯
松瀬 学
新潮社
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【私の評価】★★★☆☆(77点)


■著者経歴・・・松瀬 学

 1960年生まれ。共同通信社入社。
 2002年退社後、ノンフィクションライター。


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