「商経」史 源
2005/07/05公開 更新本のソムリエ [PR]
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●どこの国にも成功者のイメージ、悪者のイメージがあると思います。
日本では、イチローや本田宗一郎などはいいイメージであり、水戸黄門に
出てくるような悪代官と悪徳商人は悪いイメージでしょう。
・昔から商売にたずさわっていた中国の経済人が、「あのような人になり
たい」とあこがれてきた人物が二人いる。一人は范蠡(はんれい)、
もう一人は胡雪岩(こせつがん)である。(p3)
●ところが、この本を読んで驚いたのは、本書の中心人物である胡雪岩
(こせつがん)が私には、水戸黄門の悪徳商人に近いものに思えたから
です。
胡雪岩は、若い頃、職場のお金を横領して、小役人にその金を渡します。
・信和銭荘の主人は、掛け倒れとなっていたこの借金を回収するために胡雪岩
を送ったのだが、回収の見込みがほとんどなかったため、不首尾に終わっても
彼を責めるつもりはないと言っていた。それで運よく集金できたこの金を
銭荘には戻さず、大きな商売の話があったら投資しよう、胡雪岩はちょうど
そう考えていたところだった。
●そして横領した金を得た小役人はその金をばらまいて出世します。その結果、
コネを得た胡雪岩は事業を大きくしていくのです。中国では、どのような金
で、それがどのように使われようとも人脈に投資した胡雪岩は賞賛されるべき
人物なのです。
・胡雪岩は見識が高く、金で金を稼ぐのではなく、人で金を稼いでこそ自分
の手腕が発揮されると考えていた。・・・寄らば大樹の陰、後ろ盾があって
こそ自分も出世できる。(p23)
●中国は人との関係を重視するといいます。ですから本当の友人からの依頼は
まず断らないのです。それが社会的に正しくないことだとしても、友人を
大切にすることはより正しいという判断になるのでしょう。
・「家では父母に頼り、外に出ては友人に頼れ」という言葉を座右の銘に
している人は多い。だが、胡雪岩はこれをさらに発展させて、「家でも
友人に頼れ」と言った。(p178)
●この本から判断すると、日本の価値観と中国の価値観はだいぶ違うという
ことになります。
ただ、現実の社会を見てみれば、なんでこんな人がオーナーとして会社を
牛耳っているのか?という事例も多くあります。つまり悪が栄えるという
のも、ある意味では事実なのです。ある意味で、私を含めて日本人は甘い
と言えるのでしょう。
・「地獄の沙汰も金次第」という道理を、胡雪岩はずっと信じていた。
コネをつくるために金を使うことを、彼は決して一般人のように躊躇
したり、途中で断念したりはしなかった。・・・胡雪岩は、世事や
義理人情に精通していたからこそ、そうできたのである。(p336)
●日本人は理解できない国、中国を理解するために参考となる一冊として
星3つとしました。
なお、一部に松下幸之助の事例を載せている部分がありますが、松下幸之助と
胡雪岩を同じレベルで一緒にしてほしくないと思うのは私だけでしょうか。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・「人柄を知りたければ、まずその人の言行が一致しているかどうかを
見極めればいい」というのが胡雪岩の持論である。(p60)
・この世に完璧な人材はいない。その人が人材となり得るかどうかは、
使われ方で決まる。この点、私は巧妙な計略を多数駆使している。
大きな才能は大きく使い、小さな才能は小さく使えばいい。(p68)
・どの企業も効率よく生産を行うには、「欲をもって人を従え」なければ
ならない。・・・蔡万霖(さいまんりん)の座右の銘は次の言葉だ。
「金をばらまけば人が集まり、金を集めれば人が去っていく」(p88)
・経営者が権力の力を借りずに事業を円滑に行うことができるだろうか。
権力が後押ししてくれれば、事業は順風に帆をかけた船になるだろう。
権力が前に立ち塞がれば、いかにすばらしい能力に恵まれていても、
発揮できない。(p128)
・昔から中国の商人の多くは政治的感覚を身に付けており、呂不韋
(りょふい)のように「太子」の地位を買って最大の利潤をあげること
も知っていた。(p131)
・商売を営むには名声が必要である。・・・一般に、書いたものより口で
伝えるほうがよく、自分の口から言うより他人に言わせたほうが良い。
・・・名声を築くという目的を果たすためには、場合によっては計略を
使ってもよいだろう。(p318)
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中国版「商売心得帖」
【私の評価】★★★☆☆(72点)
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