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「住友銀行秘史」國重 惇史

2017/05/26公開 更新
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住友銀行秘史


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

イトマン事件で5000億円が消えた

イトマン事件の内実を記した一冊です。イトマン事件とは、商社であるイトマンから絵画や不動産や融資の形で政治家、ヤクザ、不動産業者に資金が流出したものです。少なくとも5000億円が消えたという。


カネを引き出す手口としては、自分の再開発の見込みのない土地をイトマンに買い取らせる。イトマンから自分の会社に融資させ、その一部を手数料としてイトマンにキックバックする。イトマンに絵画を異常に高い金額で購入させるなどの方法がありました。


例えば、許永中氏がイトマンに絵を売り、そこで得たカネでイトマン株を買い占めていたという。イトマンは自分のカネで乗っ取られているようなもので、ヤクザと関係を持つ伊藤寿永光がイトマンの常務となり、こうした手口を実行していったのです。


イトマンが伊藤寿永光氏のゴルフ場案件などに融資をする見返りに、その融資金の一部を伊藤氏側から企画料などの名目でイトマンに入金させていた。河村社長はこの仕組みを利用することで決算利益を計上することができ、伊藤氏はイトマンから融資金を引き出せるという意味で両者にとって都合のいいスキームであった(p284)

磯田会長の娘が絵画をイトマンに売る

メインバンクの住友銀行もイトマンの問題は認識していましたが、住友銀行の天皇といわれた磯田会長の娘が関係していることで、動きがとれなくなっていたのです。


例えば、磯田会長の娘の園子氏がイトマンの河村社長に「ロートレックコレクションを、イトマンで購入してくれないか」と依頼し、イトマンが絵画を高値で購入していました。そして園子の夫の黒川洋氏は、ジャパンスコープというアパレル会社を経営しており、イトマン側からジャパンスコープに絵画取引「仲介手数料」として5000万円が支払われていたことも発覚し、問題となっていたのです。


また、住友銀行磯田会長の女のことが週刊誌に出ると大騒ぎになったとき、河村社長、伊藤寿永光、西副頭取がもみ消したことになっていたという。ところが、磯田会長が心配になって、巽頭取にもみ消しに行かせたら、相手は何も知っておらず、まったくのでたらめの騒ぎであったという。でっち上げのスキャンダルを消したふりをして、磯田会長の弱みにつけこんでいたのです。


当時は、総会と言えばヤクザが仕切るのが当たり前になっていた。イトマンの総会は、佐藤茂氏などの関東系の人々が扱っていたという。それが伊藤寿永光氏が介入してきたことで東京から別の総会屋に移った・・伊藤氏の裏にもヤクザがおり、面倒になるのは避けたいということで、N氏は手を引いたというのだ(p441)

住友銀行の専務たちは動かない

磯田会長が伊藤寿永光や野村(許)永中たちと会っていることを、住友銀行の専務たちわかっているのに、動かないのだという。銀行とは「守り」の組織で、徹底した減点主義。1回でもバツがつくともうおしまいだから誰も動かないのです。


住友銀行の幹部だった著者は、マスコミへ情報をリークし、イトマン事件の早期解決を目指しました。


政治家、ヤクザについては詳しく書いてありませんので、事件の全体像は、よくわかりません。絵画や不動産や融資や手数料によって賄賂や利益の水増しができることはわかりました。著者が言いたかったことは、上司に言いたいことが言えない大企業サラリーマンの行動様式だったのではないでしょうか。國重さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・「注射を打たれた」というのは、「次の頭取は君かも・・」などと、含みを持たせて一派に取り込まれていたということである(p140)


・佐藤正忠氏は、雑誌『経済界』を創刊、主幹を務めていた。のちに、河村社長から2億円もらってイトマンのちょうちん記事を書いたと自ら明らかにしている(p133)


住友銀行秘史
住友銀行秘史
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國重 惇史
講談社
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【私の評価】★★★★★(95点)


目次

第1章 問題のスタート
第2章 なすすべもなく
第3章 行内の暗闘
第4章 共犯あるいは運命共同体
第5章 焦燥
第6章 攻勢
第7章 惨憺
第8章 兆し
第9章 9合目
第10章 停滞
第11章 磯田退任
第12章 追及か救済か
第13章 苛立ち
第14章 Zデー
第15章 解任!
第16章 虚脱
第17章 幕切れ



著者経歴

國重惇史(くにしげ あつし)・・・1945年、山口県生まれ。68年、東京大学経済学部を卒業。同年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。渋谷東口支店長、業務渉外部部付部長、本店営業第一部長、丸の内支店長を歴任。94年に同期トップで取締役就任。日本橋支店長、本店支配人東京駐在を経て、97年、住友キャピタル証券副社長。銀行員時代はMOF担を10年務めた。その後、99年にDLJディレクトSFG証券社長になり、同社を楽天が買収したことから、2005年に楽天副社長に。楽天証券会長、イーバンク銀行(現楽天銀行)社長、同行会長を経て、14年に楽天副会長就任。同年、辞任。現在はリミックスポイント会長兼社長。


許永中関連書籍

「許永中 日本の闇を背負い続けた男」森 功
「住友銀行秘史」國重 惇史
「悪漢(ワル)の流儀」許 永中


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