「散るぞ悲しき」梯 久美子

散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)

【私の評価】★★★★☆(88点)


■硫黄島については、映画も製作されていますが、
 太平洋戦争末期、日米で激しい戦闘が行われた
 東京南方1250kmの島です。

 日本側は、栗林陸軍中将以下二万の兵。
 米国側は、後方支援十万、重装備の海兵隊六万。


■栗林中将の指揮する日本軍は、
 高温で硫黄ガスが噴出する地面を掘り、
 地下道を作り、ゲリラ戦を戦いました。

 圧倒的な物量に対して、
 日本軍は玉砕。死亡者2万人。
 米国は2万7千人が死傷し、
 うち7000人が死亡したそうです。


■硫黄島の状況から浮かび上がってくるのは、
 当時の日本軍の雰囲気です。

 中央からの命令だからといって、水際攻撃に固執する。
 飛行機がないのに、飛行場を整備する。
 全く合理性がない判断が多いように感じました。

 それでも現場で働く兵隊は、
 命令を遂行しようと努力し、頑張っている。
 今の日本のようですね。


  ・栗林が硫黄島行きを命じられたのは、・・・
   彼のアメリカ的な合理主義が嫌われ、
   生きて還れぬ戦場に送られたとする見方もある(p74)


■当時は、
 「そんなアホな命令、聞いとれんわ」
 という対応はできなかったのでしょう。

 私たちの日本を守るために命をかけて戦った人がいたこと、
 現実を直視しないと、とんでもないことになるということ、
 正しくとも組織では否定されることがあることなど、
 勉強になる一冊でした。

 やはり歴史は学ぶべきものだと思います。
 本の評価としては★4つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・ぼくは米国に五年ほどいたが平和産業が発達していて、
   戦争ともなれば一本の電報で数時間を要せず軍需産業に
   切り替えられる・・・こんな大切なことを日本の戦争
   計画者たちは一つも頭においていない。・・・この戦争は
   どんな慾目で見ても勝目は絶対にない。(栗林)(p72)


  ・ご存じ?硫黄島には、十六歳の兵隊さんもいたんですよ」・・・

     思えば遠し 故郷の空
     ああ わが父母 いかにおわす(p123)


  ・予が諸君よりも先に、戦陣に散ることがあっても、諸君の
   今日まで捧げた偉功は決して消えるものではない。いま日本は
   戦に敗れたりといえども、日本国民が諸君の忠君愛国の精神に燃え、
   諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対して涙して黙とうを捧げる日が、
   いつか来るであろう。安んじて諸君は国に殉ずべし(栗林)(p274)


  ・1994(平成6)年二月、
   初めて硫黄島の土を踏んだ天皇はこう詠った。

    精根を込め戦いし人未だ地下に眠りて島は悲しき(p282)


▼引用は、この本からです。

散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)
梯 久美子
新潮社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 名著に巡り合え感謝
5 最高のビジネス書
5 僕はすきま風を心配できるだろうか。
5 悲しき戦いの中から
5 硫黄島に散った名指揮官・無名の兵士達への鎮魂の賦。

【私の評価】★★★★☆(88点)


■著者紹介・・・梯 久美子(かけはし くみこ)

 1961年。編集者を経て文筆業に。
 本書で「大宅壮一ノンフィクション賞」を受賞。
 著書多数。


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■関連書評■
a. 「おじいちゃん戦争のことを教えて」中条 高徳
【私の評価】★★★★☆

b. 「日本人はなぜ戦争をしたか」猪瀬 直樹
【私の評価】★★★☆☆


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