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【書評】「なぜ世界は日本化するのか」 佐藤芳直

2026/07/13公開 更新
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「なぜ世界は日本化するのか」 佐藤芳直


【私の評価】★★★★☆(84点)
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要約と感想レビュー


日本らしさの追及という経営

船井総合研究所で、上場企業最年少役員を経て独立した経営コンサルタントが、日本の歴史と文化から企業経営の本質を語る一冊です。


著者はコンサルティングの現場で、経営者が最も大事にすべきことは社員と「志」を共有することだと考えてきました。吉田松陰が「志」を世のため人のためと教えたように、企業の「志」もまた世のため人のためでなければ、組織は長く続かないということです。


日本には百年以上続く「百年企業」が3万3,000社以上あります。いかに100年、200年かけて理想の社風をつくりながら事業承継していくか、それが経営者のロマンだと著者はいうのです。


国際社会においても、日本らしさを追求することこそが生き残りの道だと著者は断言します。日本人としての独自性を放棄すれば、人口の多い中国に呑み込まれ、経済的に強いアメリカに叩かれるだろうという警告しています。


コンサルティングの現場で真っ先に考えることがある。「この会社で働く人は、この会社がどうなれば「誇り」を持って働くことができるのか」、この一点である(p161)

日本人らしさとは何か

では、日本人らしさとはいったい何なのでしょうか。


著者は日本が成功した理由として、「全体善を考える」という特性を挙げています。「私」よりも「公」を優先させる。誰かの幸せのために生きることができる、それが日本人らしさだというのです。


かつて戦争で日本人は特攻をしました。特攻は英語で『自殺攻撃』と言われています。キリスト教の世界では自殺は罪であり、誰かのために死ねるという日本人らしさが、外国人には文字通り理解できなかったのです。


同じように日本人は何のために働くのかといえば、自分だけが儲かればいいという発想ではなく、誰かのために働くという視点からです。


社員旅行や行事に家族も参加できるのは、社員全体の幸せを追求しているからでしょう。著者はこれを、「ライフタイム・コミットメント」と表現しており、日本の企業経営が単なる利益追求ではなく、社員の一生に関わるものであることを示しています。


特攻隊は英語で「自殺攻撃」と言われている。キリスト教の世界では自殺は罪である・・・きっと隊員たちは覚せい剤を打たれて、操縦桿に鎖でくくりつけられて飛んで来たのだと思われていた(p104)

日本文化のすばらしさ

日本の新聞を読んでいると、日本が海外から嫌われているかのような印象を受けることがあると思います。中国、韓国、北朝鮮は日本が嫌いかもしれませんが、それ以外の国はすべて日本が好きだと著者は説明しています。


日本の新幹線は1編成を7分で清掃し、1時間あたり平均3〜4本の電車をプラットフォーム1線で発着させます。これらはすべて、「時間を守る」「公共の場をきれいにする」「譲り合いながら乗り降りする」という日本人の習性が生み出したものであると著者は指摘します。


歴史を遡れば、約1400年前の「十七条憲法」にも1868年の「五箇条の御誓文」にも「広く会議を興し、万機公論に決すべし」と書かれてあり、町人・百姓の子にまで読み、書き、そろばんの教育が施され、それらを読むことができたのです。

日本では「騙すな」「名こそ惜しけれ」と教えていました。名、つまり名誉こそがすべてである。信用を失うことは、最も恐ろしいという価値観が社会の共通理念となり、日本人の行動様式を形作ったというのです。


日本の一部の新聞を読んでいると、いかにも日本が海外から嫌われている国であるかのような印象を受ける・・・日本の近隣の3カ国・・・以外の国々はみんな日本が好きなのだ。アジアの国々が日本を嫌っているというのは大ウソである(p201)

欧米化とグローバリズムの正体

しかし日本人らしさは、国際社会において常に歓迎されたわけではありません。経営者が現場の労働者と一緒に知恵を出し合い、労働者の意見を尊重するというスタイルは、欧米の経営観とは相容れない部分があります。


1998年にムーディーズがトヨタの信用評価をAaaからAa1に引き下げた際の理由が「終身雇用が利益率を押し下げる」というものだったというエピソードは、欧米の短期的利益だけを考える経営の本質を端的に示しているのです。


著者はグローバリズムを、コストの最も安い場所で生産を求め続ける論理であり、最終的には植民地のような国家戦略に行き着くと評価しています。なぜトランプ大統領が支持を集めたのか、なぜイギリスがEUを離脱したのか。格差の拡大に対する国民の怒りがその背景にあり、グローバリズムの時代はすでに終わろうとしているというのが著者の見立てなのです。


かつて「植民地にならんぞ」という明治維新の志士たちの思い、二度の蒙古襲来に立ち向かった鎌倉武士団の選択したように、日本人らしさ、誰かのために生きる、誰かのために働くことができれば、日本は生き残ることができると主張しています。


国家観から企業経営をコンサルティングするという著者のアプローチに、感銘を受けました。
佐藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「恩送り」という言葉がある。「親から受けた恩は、子に返せ」という意味である(p53)


・石田梅岩は元々商人である・・富の主は天下の人々なり(「都鄙問答」)(p195)


・問題なのは、経営者と従業員の給与格差である。中小企業の場合、新入社員の給与と経営者の給与は最大、30倍ぐらいが妥当で、50倍もらっていたらもらいすぎだということを松下幸之助さんから教えてもらったと、船井幸雄先生は話されていた(p199)


▼引用は、この本からです
「なぜ世界は日本化するのか」 佐藤芳直
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佐藤芳直 (著)、扶桑社


【私の評価】★★★★☆(84点)


目次


はじめに―東京五輪で男子400mリレーは日本化する
第1章 世界が憧れる?日本人″という社会資本
第2章 日本人を作った歴史、教育、リーダーのあり方
第3章 世界を席巻した日本的経営
第4章 グローバリズムの波に呑まれた日本
第5章 反グローバリズムに向かう世界
第6章 日本は「日本らしさ」を追求すればいい
おわりに--我々は日本人らしく生きていけばいい


著者経歴


佐藤 芳直(さとう よしなお)・・・S・Yワークス代表取締役。1958年宮城県仙台市出身。早稲田大学商学部卒業後、船井総合研究所に入社。1994年、上場企業最年少役員に就任。2006年同社常務取締役を退任、株式会社S・Yワークスを創業。コンサルティングでは、日本の強さを学ぶことこそ、企業の強さを生み出す根源であると唱えている。また、歴史の中から未来に手渡す種を探し出すことだと語る。


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