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「ライオンのおやつ」小川 糸

2023/08/15公開 更新
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「ライオンのおやつ」小川 糸


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

ホスピス「ライオンの家」

瀬戸内の島に「ライオンの家」というホスピスがあるという。ホスピスとは、余命を宣告された患者さんが人生最後の時間をできるだけ苦しまずに、過ごせるようにしてくれる施設です。主人公は、30代で抗がん剤治療の末に余命を宣告され、「ライオンの家」で残された時間を過ごすことにしたのです。


それまで自分の想いよりも、相手の想いを考えてきた主人公は、「ライオンの家」で自分の死と向き合うことで、目一杯、この人生を味わおうと思うのです。このホスピスでは百獣の王ライオンのように自分の想いで、食べたり、寝たりすることができるのです。


いつかは命が尽きるのだから、それまでは目一杯、この人生を味わおう(p109)

「ライオンのおやつ」とは、ゲストの思い出のおやつ

「ライオンの家」のよいところは、料理がおいしいことです。また、散歩したいときに散歩し、コーヒーが好きならコーヒーを淹れ、ヨガをしたければヨガができます。ゲスト全員で参加するのは、毎週、日曜日の午後三時から「おやつ」の時間です。ゲストは、もう一度食べたい思い出のおやつをリクエストすることができるのです。


コーヒーを淹れてくれるゲストのマスターは、コーヒー屋をはじめるきっかけになったフランス一人旅行で出会ったカヌレというお菓子をリクエストしてくれました。「ライオンのおやつ」とは、ゲストの思い出のおやつと一緒にゲストの人生の思い出をシェアできる時間なのです。


マスターは、海を背にして真剣な眼差しを浮かべ、コーヒー豆にお湯を注いでいる(p49)

死んだ人は光になる

人は自分の死を考えると、人は死ぬとどうなるんだろうと考えるようなのです。お盆で祖先をお迎えしている私たちは、死んだ人たちが、生きている私たちを見守ってくれていると考えています。人は死ぬと、生きている人を見守るということなのでしょうか。


死んだ人は光になる、という人もいます。人生というのは一本のろうそくのようなもので、生きることは、誰かの光になるという人もいます。


自分なら最後に食べたい「おやつ」は何だろうなと想いながら、読み終わりました。小川さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・私、もっと生きて、世界中のいろんな風景を見たかったなぁ(p169)


・何が大事かって、今を生きている、ってことなの。目で見て感動したり、触ったり、匂いを感じたり、舌で味わったり・・体がなければ、できないことがたくさんあるから(p202)


・モルヒネワインって、あるじゃないですか。あれを、島で作ったワインでやりたい、って(p60)


▼引用は、この本からです
「ライオンのおやつ」小川 糸
小川 糸、ポプラ社


【私の評価】★★★★☆(81点)



著者経歴

小川糸(おがわ いと)・・・1973年生まれ。『食堂かたつむり』でデビュー。以降数多くの作品が様々な国で出版されている。『食堂かたつむり』は、イタリアのバンカレッラ賞、フランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞


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