「ユング心理学入門」山根 久美子
2023/08/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
要約と感想レビュー
出来事には、何らかの意味がある
スイスのユング研究所で学んだ著者に、ユング心理学について教えてもらいましょう。最初に「個性化」についての説明があります。個性化とは、自分におこった出来事が、自分の人生にとってどのような意味を持つのか、自分なりの意味を見つけていくことだという。
つまり、自分に起こった出来事(点)は、何らかの意味があって起こったのではないかと考えてみるのです。そうした「点」の出来事が、「線」としてつながり、自分の物語となったものを、ユングは「個人的神話」と表現しているという。スティーブ・ジョブズの点と点をつなげる話を思い出しました。スティーブ・ジョブズも今、自分が経験していること(点)が将来どう役立つかはわからない。しかし、将来になって振り返ってみると、その「点」と「点」がつながり、役立っていることに気づくのだ、と言っているのです。
短期的には失敗と見えることも、長期的に見れば、成功のためのステップであったと後でわかるということも多いのです。ユング心理学が失敗したとき、落ち込んだときに意義を見出す心理学といわれている理由がわかりました。
・目的論的・・何らかの意味があって起こっていることだ」と考える(p127)
意識できる自我(エゴ)と無意識の自己(セルフ)
ユングは人のこころを、自分の夢や意識を観察することで考察していたようです。自分の中には意識できる自我(エゴ)と意識できない自己(セルフ)がおり、自己(セルフ)は自我(エゴ)を影で見守り導いているという。また、「私=自我」の他に自分の中に住んでいる住人のことを「コンプレックス」と呼び、コンプレックスはその人の判断に影響を与え続けるのです。特にこころの中にある親のイメージは、大きな影響力を持っており、母親コンプレクス(マザコン)は一般的に使われています。
人のこころの分析としては、社会で求められる役割を演じる自分を「ペルソナ」と呼んでおり、特に社会的な建前を重視する日本人には受け入れやすい主張ではないでしょうか。また、ユングは夢の中で、家の最も下に降りたところに古代の洞穴と頭蓋骨があったことから、人のこころの最も基礎的な部分に、人類に共通する古い層があるのではないかと推測しています。動物が遺伝子ではわからないレベルで、習性を伝え続けることへの示唆があるように感じました。
・コンプレックス・・こころの中の親のイメージは生涯にわたり、その人に影響を及ぼす(p96)
人の8つのタイプ
ユングは、人を内向・外向の2つにわけ、さらに思考、感情、感覚、直観タイプに分けることで、8つのタイプにわけています。外向とは、自分の外側の世界へ関心が向く人であり、内向は、心が内側に向かって流れる人であまり社交的ではない人です。そして、思考タイプは論理的で、感情タイプは感情的。感覚タイプは社交的で、直感タイプは発明・革新的なアイデアを出すような人です。このように人をタイプ別にわけるというアイデアは、現代でもエニアグラムや性格診断で活用されており、実用的なものだと思います。
ユング心理学の特徴として、人の潜在意識にも注目し、自己(セルフ)や(コンプレックス)のような形で見える化しようとするものに感じました。心理学については、もう少し調べてみたいと思います。山根さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・シンクロニシティ・・自分の内と外は連動していて、自分がととのうと、待っていればおのずと外的な状況もととのう(p202)
・夢は無意識から意識へ向けたメッセージ(p58)
・「老賢者」は、夢の中で・・権威のある年上の人物の姿をとって現れる(p82)
・日本人一般の意識のあり方は内向‐直観タイプに映る・・調和や協調(p179)
【私の評価】★★★☆☆(74点)
目次
第1章 失敗や負けは変化のチャンス―個性化
第2章 内なる住人の声を聞く―ユング派の夢分析
第3章 人生の理不尽を引き受ける―内なる親
第4章 こころはバランスを求める―心的エネルギーと補償
第5章 自分の意識のあり方を知る―タイプ論
第6章 目に見える世界がすべてではない―シンクロニシティ
第7章 人生には答えよりも大事なものがある―対立概念と第三のもの
第8章 ユング心理学を現実の生活に活かす
第9章 ユング心理学を学ぶには
著者経歴
山根 久美子(やまね くみこ)・・・東京生まれ。臨床心理士。公認心理師。ユング派分析家。慶應義塾大学卒および同大学院修了。Ph. D.( University of Essex, 臨床心理学・分析心理学)。目白ユング派心理療法室Libra主宰。関心のある分野は、ユング心理学における対立概念と日本文化、多様性、女性。
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