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「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」矢野 和男

2023/06/17公開 更新
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「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」矢野 和男


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

職場の雰囲気が成績に影響する

ウエアラブルセンサから得られたビッグデータから、人間の特性を分析することができた!という一冊です。まずいきなりびっくりするのは、「幸せな人の身体はよく動く」という主張です。ウエアラブルセンサから得られた活動量が多いほど、アンケートから得られた幸福度が高いという相関があったのです。


さらに驚くのは、電話営業をしているコールセンターの受注額が、休憩所での会話の「活発度」と強い相関があるということです。個人プレーの電話営業でも、職場の雰囲気が成績に影響するのです。実際に電話営業の職場で、チーム4人で同時に休憩をとるようにしたら、受注が10%以上向上したという。


・同世代の4人のチームで休憩を同時にとるようにした。その結果、休憩中の活発度が10%以上向上し、さらにその結果、受注率が13%向上した(p87)


ビッグデータで販売単価を上げる

二つ目にびっくりしたのは、ホームセンターで顧客や従業員の動きを計測し、売り上げとの相関を分析しているところです。名刺型のセンサーを首にぶらさげる方法でデータを取っていて技術的には洗練されていませんが、データ分析から相関が見えてきたのです。具体的には、ある特定の場所(高感度スポット)に従業員がいるときに販売単価が上がるという相関が見られたという。


そして、実際に高感度スポットに従業員がいる時間を2倍にしたら客単価が15%増加したという。ただ、なぜ従業員が高感度スポットにいるだけで、別の場所に置いてある単価の高い商品が売れるのかは謎だというのですから、ビッグデータあるあるです。10年前の本ですが、ビッグデータ、AIはこの頃から見えている人には見えていたのだとわかります。


・高感度スポットに、従業員になるべく多くの時間いてもらうよう依頼したことにより、従業員の滞在時間が1.7倍に増加した。そしてその結果、店全体の顧客単価が15%も向上した(p188)


誰と会話しているかデータ採取

さらに二つの部署を統合した会社で、ウエアラブルセンサで、誰と会話しているかデータ採取することで、組織の統合度合を計測したという事例も興味深いところです。


つまり、統合した職場では、組織上は統合されているけれども誰と誰がどのくらい会話をしているか測定してみると、はっきり二つにわかれているのです。その後、三カ月の間に4回の4~5人で対話を行うワークショップを行うことで、組織の融合が進んだことがウエアラブルセンサのデータで見える化できたという。


組織の人間関係を見える化できる時代にあるということがわかりました。著者のすべての事象をデータで証明しようとする姿勢が気持ちいい一冊でした。矢野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・部下の仕事に、互いに共有できるより挑戦的な目標を設定して関わるようにした。結果は、すぐに表れた。この部下との会話の「双方向率」は、急上昇した(p171)


・電子メールを受けてから返信するまでの時間が長くなるほど、返信する確率が下がってくる(p114)


・行動が続けるほど止められなくなる(p116)


▼引用は、この本からです
「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」矢野 和男
矢野 和男、早川書房


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

第1章 時間は自由に使えるか
第2章 ハピネスを測る
第3章 「人間行動の方程式」を求めて
第4章 運とまじめに向き合う
第5章 経済を動かす新しい「見えざる手」
第6章 社会と人生の科学がもたらすもの



著者経歴

矢野和男(やの かずお)・・・株式会社日立製作所・中央研究所、主管研究長。1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。2004年頃から先行してウエアラブルデバイス技術とビッグデータ収集・活用で世界を牽引。論文被引用件数は2500件超。特許出願350件超。「ハーバードビジネスレビュー」誌に、開発を主導した「Business Microscope(日本語名:ビジネス顕微鏡)」が「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介されるなど、世界的注目を集める。日立返仁会総務理事。東京工業大学大学院連携教授。文科省情報科学技術委員。2007年Erice Prize、2012年Social Informatics国際学会最優秀論文など国際的な賞を多数受賞。


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