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「意識はなぜ生まれたか―その起源から人工意識まで」マイケル・グラツィアーノ

2023/01/07公開 更新
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「意識はなぜ生まれたか―その起源から人工意識まで」マイケル・グラツィアーノ


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

 この本のテーマは、「意識はいったい脳のどこにあるのだろう?」「意識をもつ機械を作ることはできるのか?」ということです。その答えは、著者が「意識をもつ機械を作ることは、私には錬金術を連想させる」というように、いまだ答えは出ていません。


 理論もあるし、試験データもありますが、意識を作るのは難しいのです。そもそも、意識があるのかどうかどうやって確認するのかについても、課題であり、研究されているのです。ただ、錬金術の研究が、多くの知見を人類にもたらしたように、「意識」の研究が自動運転や顔認識といった革新を作り出しているのです。


・機械が意識をもっていることはどうすればわかるのか?(p181)


 面白かったのは、脳を損傷した人を研究することで、脳の仕組みの一端がわかってきたということです。例えば、脳の片側を損傷すると、その脳と反対側にあるものや反対側で起こる出来事を認識できなくなってしまうという半側空間無視。本当に空間の左半分が存在していることすらわからなってしまう場合があるというのです。


 さらに面白いのは、片側の一次視覚野を損傷することによる「盲視」です。視覚は一つの目で左右にわかれており、左側の画像は右脳へ、右側の画像は左脳へ送られるので、右脳が損傷すると左半分の領域が見えなくなるのです。ただ、見えないはずのドットの位置を指差すことはできるのだという。見えないものの位置がわかるということは、視覚データの処理で「見る」という処理と、「注意を向ける」という処理が別々の場所で行われているということを示しているのでしょう。目の視神経が左右別々の系統にわかれている、ということも初めて知ってびっくりしました。


・半側空間無視の患者は・・皿を180回してあげないかぎり、まだ食べていないものがあることに気づけない。(p127)


 デカルトは「我思う、故に我在り」と喝破しましたが、「思う」ということがいかなるものなのか、私達がいまだ理解していないことを理解しました。よく考えれば、識があるかどうかは別にして、小さな昆虫からカエルや魚が自律的に判断して行動し、子孫を残していること自体、奇跡的なことのように思えてきました。


 遺伝子情報しか伝えられていないはずなのに、どうやって生きていけばいいのか、どうすれば子孫を残せるのか、すべての生物はなぜか知っているのです。実は生物こそが、神に近い最後の領域なのだと思いました。グラツィアーノさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・タコは並外れた神経システムを進化させた・・・ガラス瓶に入ったごちそうをとるために、蓋を回して瓶を開けることもできる(p26)


・注意は制御できなければ意味がない・・・注意スキーマとは、注意をモニターする一連の情報、いわゆる内的モデルのことだ(p38)


・ミツバチは小さな脳をもつ昆虫である。しかし彼らの脳も複雑な計算をしており、その複雑さはある意味ペットのイヌにも匹敵する(p59)


・腕や脚を失うと、なくなったはずのそれがまだあるように感じられることがある。いわゆる「幻肢」の体験だ(p148)


▼引用は、この本からです
「意識はなぜ生まれたか―その起源から人工意識まで」マイケル・グラツィアーノ
マイケル・グラツィアーノ、白揚社


【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次

1 会話するぬいぐるみ
2 カブトガニとタコ
3 カエルの視蓋
4 大脳皮質と意識
5 社会的意識
6 意識はどこにあるのか?――ヨーダとダース・ヴェイダー
7 さまざまな意識理論と注意スキーマ理論
8 意識をもつ機械
9 心のアップロード
付録 視覚的意識の作り方



著者経歴

 マイケル・グラツィアーノ(Micheal Graziano)・・・プリンストン大学神経科学・心理学教授。同大学の神経科学ラボを率いる。神経科学に関する本を執筆するほか、ニューヨーク・タイムズ紙、アトランティック誌などに寄稿する。プリンストン在住。趣味は執筆、作曲、腹話術


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