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「水族館のアシカはいくらで買える?:3ステップでわかる 教養としての地方財政」野崎敏彦

2022/10/22公開 更新
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水族館のアシカはいくらで買える?:3ステップでわかる 教養としての地方財政


【私の評価】★★★☆☆(74点)


要約と感想レビュー

 動物園コンサルタントの本かと思ったら、地方財政コンサルタントの本でした。ちょっと騙されたと思いましたが、ネーミングがうまい!答えは、この本の中でご確認ください。読み勧めていくと、「道路工事が3月に集中する理由は?」という問いもあります。


 その答えは、皆さんもご承知のとおり年度内に工事完成させないといけないことと、国からの補助金が入っている工事が多く、補助金決定プロセスに時間がかかり、工事の開始が遅くなってしまうためです。年度内予算ですので、予算が決まってから手続きを始めて、年度内に終わらせるので精一杯なのです。ただ、国の予算には制約は多いものの予算の繰越制度があり、無理に3月末に検収しようとする案件は減ってきているようです。


・予算の繰越制度・・・使い切らなかった予算を次年度に繰り越して使用するのを認めること(p45)


 さて、地方財政コンサルタントが存在するということは地方財政が崖っぷちにあるということです。読んでいって驚いたのは、日本の官公庁が単式簿記・現金主義会計を使っていることです。借金がどれだけあって、資産がどれだけあるのか、その傾向はどうなっているのかが簡単に理解できなければ、その組織の経営は難しいでしょう。


 普通の複式簿記・発生主義会計は常識であり、さらに組織を細かく分割して、事業部制、アメーバ会計などにして、細かく採算を見ていくのが民間の経営と比べれば、悲しいくらいの低レベルといえます。よく指摘されるのは、借金(地方債)を収入(歳入)としていることで、どれだけ累積債務があるのか見えにくいということでしょう。それとも、あえて見えにくくしているのかもしれません。


 もちろん官公庁は税金を払う必要がありません。固定資産税もなければ、減価償却費分だけ節税になるわけでもないので、そこまで厳格に会計整理する必要性がないことは理解できます。それにしても、どんぶり勘定ここに極まれり、ということなのでしょう。


・国(総務省)は自治体に対し、2017年度末までに固定資産台帳を整備することを要請しました(p34)


 後半には、具体的な自治体でのリストラの事例が説明されています。少子高齢化と人口減少が進むなかで自治体がそれに合わせてリストラしていかなくてはならないのは当然です。ただリストラの中味は縮小均衡になりますので、どうしても自治体の財政がにっちもさっちも行かなくなってから、残された人たちが苦しみながら対応しているのが実情なのではないでしょうか。


 例えば鳥取県の日野市の例では、固定資産税、下水道使用料、こみ袋代の引き上げ、議員定数、議員報酬、職員定数、職員給与の削減、医療助成の廃止、清掃・文書配布は職員が行う、適材適所の人員配置などを行っています。民間から見れば、普段からこうした改善を行っていればとも思ってしまいます。


 野崎さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・官公庁で採用されていた単式簿記、現金主義会計・・・収支がはっきりわかりません・・資産や負債の状況がわからず・・借金(地方債)も収入(歳入)としています(p117)


・道路工事が3月に集中する理由・・単一年度内に完成させないといけないから・・国からの補助金が決定するプロセスは長く、時間がかかるため(p43)


・税外収入・・・受益者負担金、広告収入、ネーミンライツ、公有財産(土地、建物)の活用による収益(p66)


・日本の自治体の人事異動・・・平均3~4年という短い期間で異動する・・・専門家不在・・業者のいいなりになってしまう(p156)


▼引用は、この本からです
「水族館のアシカはいくらで買える?:3ステップでわかる 教養としての地方財政」野崎敏彦
野崎敏彦、合同フォレスト


【私の評価】★★★☆☆(74点)


目次

第1章 知ってびっくり! まちのお金の7不思議
第2章 なぜ、まちにはお金がないの!?
第3章 まちに「新しい家計簿」がやってきた!
第4章 借金「メタボ」なまちが「健康」になるためには?
第5章 お金とまちの課題が一気に解決!



著者経歴

 野崎敏彦(のざき としひこ)・・・地方財政コンサルタント。一般社団法人日本行政マネジメントセンター 代表理事。1955年名古屋市生まれ。北海道大学理学部数学科卒業後、通信機器大手の沖電気工業に入社。その後、印刷会社、ベンチャーキャピタル、コンサルティングファームなど、異業種6社の企業勤務を経て、2012年、57歳で新地方公会計制度の普及を目指し起業。2015年、公認会計士、税理士、ITのプロ、合意形成コンサルタントなどの専門家を構成員とする一般社団法人日本行政マネジメントセンターを設立、代表理事に就任。自治体やその外郭団体(一部事務組合、広域連合等)など、約50団体と業務契約を結んでいる。新地方公会計制度を応用した公共施設マネジメント、行政評価を多数手がけている。


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