「騎士の掟」イーサン・ホーク
2022/10/06公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
映画でおなじみのイーサン・ホークの著作ということで手にした一冊です。ホークの曾祖母(そうそぼ)の葬儀の後、牧場の地下室で古い手紙が発見されたという。その手紙は、戦いを前に死を意識した騎士が、大爺様(おおじいさま)から伝えられた騎士の「掟」を息子たちに伝えようとした内容だったのです。
イーサン・ホークの推測は、ホークの祖先は英国の貴族ホーク家であり、手紙の著者は1483年スローターブリッジの戦いで亡くなった騎士サー・トマス・レミュエル・ホークだというのです。当時も今も、はやり人間が悩むのは「どう生きればよいのか」「死とは何なのか」ということであることがわかります。だから私たちは学びながら、生きていくのでしょう。
・死ぬと自分はどうなるのか?どうしてこの掟に従わなければならないのか?難題を問うといい。先人たちが同じ問いにどういう答えを出してきたのか、書を読むといい(p131)
興味深かったのは、大爺様がヘンリー五世陛下からたまわった言葉でしょう。それは『そなたはほどほどの成功をするがよい』というものです。この本にはその意味するところは説明されていませんが、中盤に大爺様の口癖として「厭(いと)うに値するものが二つだけある。楽な生き方と、行き過ぎた成功だ」と紹介しているのがヒントだと思いました。
これらを考えあわせると、楽な道と過度な成功を求めるのではなく中庸で十分ではないか、ということを伝えていると感じました。楽な道は自分を堕落させ、過度な成功を求める気持ちは嫉妬や失敗を引き寄せるのです。
・「おのれの居場所にあること、わが幸せなり」と師はわたしに打ち明けた。」友がおる。事がなせるくらいには健康。それで過不足なし(p107)
騎士道というものがあるとすれば、謙虚、誇り、鍛錬などと武士道にも通じるものがあると思いました。つまり戦場で力を出すためには鍛錬が必要であり、誇りをもって武具を整備、整理整頓し、威張り散らさず謙虚にチームワークを維持するのです。
なお、読んでいくと、「アレ?この話は塞翁が馬の話と似ているなぁ~?、英国にも同じ逸話があったのだろうか?」と感じた逸話がありました。訳者あとがきで、実は逸話が挿入されるなど大幅にアレンジされていると知りちょっと興ざめしてしまいました。できればオリジナルをできるだけ忠実に再現してもらいたかったものです。
ホークさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・真の戦いとはわれらみなの内に棲まう二匹のオオカミの争いなのだ・・・一匹のオオカミは悪・・もう一匹は悪・・おのれの餌づけしたほうが勝つのだ(p23)
・鍛錬・・戦場では、何事とも通じることだが、訓練した分の動きしかできない(p109)
・騎士は自分の書く字に誇りがある。自分の鞍から靴や武具に至るまで状態をたえず点検する(p40)
・忍耐・・・騎士は時をも味方にする。動くには期があり、凪(な)いだ心を持てばその時もわかる(p91)
・赦し・・峰があれば谷もある。失望して自分を腹立たしく思うかもしれないが、そうした感情は過ぎ去るのを待つことだ(p60)
▼引用は、この本からです
イーサン・ホーク 、パンローリング株式会社
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
1 孤高
2 謙虚
3 感謝
4 誇り
5 協調
6 友情
7 赦し
8 誠実
9 勇気
10 寛容
11 忍耐
12 正義
13 気前
14 鍛錬
15 専心
16 言辞
17 信心
18 平等
19 愛情
20 辞世
著者経歴
イーサン・ホーク(Ethan Hawke)・・・アメリカの俳優・作家・小説家・映画監督。これまでに4度アカデミー賞にノミネートされている(助演男優賞2回・脚色賞2回)。映画『いまを生きる』『リアリティ・バイツ』『ガタカ』『トレーニングデイ』、リチャード・リンクレイター監督の『恋人までの距離(ディスタンス)』の三部作と『6才のボクが、大人になるまで。』で主演をつとめ、近年では是枝裕和監督の『真実』にも出演している。また、小説『痛いほどきみが好きなのに』『いま、この瞬間も愛してる』(ソニーマガジンズ)の著者でもある。4人の子どもたちと、本書のイラストレーターで妻のライアン・ホークとともに、ニューヨークのブルックリンに在住。
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