思ったより体育会系「キャバ嬢の社会学」北条 かや
2022/05/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(73点)
要約と感想レビュー
キャバクラ嬢として潜入
テレビのニュースで時間外営業をしていたキャバクラのオーナーが逮捕されたと聞いて、手にした一冊です。本のソムリエはキャバクラにほとんど行ったことがないので、その仕組みに興味を持ったのです。なんと著者は、同志社大学の修士論文を書くために、キャバクラ嬢として潜入、働きはじめたという。冗談かと思って読み進めたら本当でした。
クラブのホステスが会話のプロとすれば、キャバクラは「普通の女の子」とのコミュニケーションを売りにしているお店です。在籍する女の子も、30歳以下が中心でプロが1割、セミプロが4割、素人アルバイトが5割で、入れ替わりが激しいという。キャバクラの市場規模は、1兆円程度です。日本人一人当たり年1万円。男性だけが顧客であり、老人・高校生以下はキャバクラに行かないでしょうから、仮に1千万人が顧客とすれば、一人当たり年10万円、月1万円使っている勘定となります。
1983年、現在のキャバクラの原型となる「キャンパスパブ」が誕生する(p37)
指名でキャバ嬢にポイントが入る
キャバクラのお店では、二人掛けのソファーで、一人のキャストが一人の客の相手をする形となっています。団体客も一人ずつバラバラにしての接客となります。指名なしで来店した客には、一時間に4名くらいのキャバ嬢が入れ替わりで接客し、15分間で場を盛り上げながら、指名をもらえないか交渉します。仮に指名がもらえれば、客は2000円をプラスで支払うことになり、キャバ嬢にはポイントが入る仕組みです。
指名本数やドリンク杯数は毎日、ポイント成績ランキングが作成され、携帯に送信されます。多くのポイントを獲得したキャストの時給が上がるという仕組みになっています。ここからは想像になりますが、お客が素人ばかりのキャバクラに行くのは、素人さんと仲良くなれるのではないか、という幻想を持って行くのではないでしょうか。
「〇〇さん、キャッシャー」は、「〇〇さん、指名交渉や連絡先交換をしましょうという合図・・・あ、今呼ばれたんですけどぉ・・もうちょっとしゃべっててもいいですか・・・指名になるんですけど(p100)
成績の良いキャバ嬢の例
興味深かったのは、お客に好かれながらもお店に来てお金を払ってもらうという関係を維持することが、非常に難しいということ。本当に好かれてしまうと、個人的に店の外でデートしようということになってしまうし、かといって好かれなければ再度会いたいと思ってもらえないからです。
成績の良いキャストの例を示していますが、お金目当てではないと思わせつつ、恋人未満という関係を維持しようとしています。あるキャストは常に「今日はありがとう、楽しい!楽しかった!」と何度も伝えて対等な男女の楽しい関係を強調し、お客に伝えていました。
また、他のキャストはあえて「お店に来て」とは言わず、ありのままの日常生活を「今日はこれからバイトです」などとメールして、友だちのような関係を維持するようにしていたという。このように男性の幻想をエネルギーにしてキャバクラにはお金を払ってくれるお客が今宵もやってくるのです。
私は、どうせお金を使うならセミナーや勉強会に集まってくる人との出会いにお金をつかってはどうかと思ってしまいました。北条さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・キャストは、一人一人が「お友達リスト」と呼ばれるA4のファイルを持っている・・・接客をした客のメールアドレスや携帯番号、簡単な特徴などを記録する(p65)
・2002年から2005年頃にかけて・・・「闇金・オレオレバブル」・・・「闇金」や「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」、さらに「架空請求」で違法に現金を稼いだ若者たちが、歌舞伎町のキャバクラで集中的に豪遊した(p47)
・キャバ嬢のメイク・・・もはやコスプレに近いのかもしれない(p92)
・社長は店の複数のキャストと肉体関係をもつ代わりに客をあてがうといった行為をしていた(p114)
・キャストへのアンケートをもとに作成される、「黒服の評価ランキング」・・・「信頼できる」「悩み事を相談できる」「きちんと叱ってくれる」「適切な接客アドバイスをくれる」(p118)
・キャスト(女優)としての設定を決めましょう・・・客の「個人情報教えて攻撃」から身を守る・・彼氏・・「いるけれど別れようとしている」ことにしておく(p132)
・マニュアル・・「お客様にこう言われたら、こう返しましょう」という一覧表もある(p133)
【私の評価】★★★☆☆(73点)
目次
第1章 キャバ嬢を差別していた女の自分
第2章 まずはキャバクラについて調べまくる
第3章 いざ、キャバクラへ
第4章 キャバ嬢たちの接客戦略
第5章 キャバクラ嬢の深い「病み」―「病んだっていいじゃん」
第6章 すべての女性はキャバクラ嬢になりうる
著者経歴
北条 かや(ほうじょう かや)・・・著述家。1986年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部を出たのち、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。自らキャバクラで働き、調査を行った。同時期に始めたブログ「コスプレで女やってますけど」は、月間10万PVの人気を誇る。
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